ビル・クリントン絶賛、レスター・ブラウン最新刊「PLAN B 3.0」人類文明を救うために発売開始 News Release 『地球白書-2001』
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私たちは21世紀を迎えたのだが、そのときまさに地球環境は危機的局面を迎えた。ハーグの地球温暖化防止会議(COP �)が成果を得ぬまま、決裂状態のうちに終わってしまったが、この様に環境への国際的な取り組みへの政治姿勢が冷めてきたことは、環境が破局へ向かうことを加速するだろう。COP�の失敗は私たちに大きな懸念をもたらした。つまり、世界の生産活動が不可逆的なダメージを受ける前に、現在の悪しき動向を良き動向へと、果たして転換できるのだろうかという懸念である。 『地球白書 2001』の共著者でありワールドウォッチ研究所の所長であるクリストファー・フレイヴィンは次のように述べている。「各国政府はおおよそ好況期にあった1990年代の歴史的にも、おそらくまたとない環境的な好機を、むざむざと逃がしてしまった。加速する環境劣化を良い方向へと転じる好機だつたのである。今日の政治動向あるいは経済の先行き不安などの中で、政治的リーダーたちが環境関連法を後退させたり、重要な国際条約に関する十分な合意の形成に失敗するならば、ここ数十年にわたって人類が成し遂げてきた、さまざな面での進歩が無に帰していくだろう」。 最近の科学的データは、地球の生態系が多くの面で極めて危機的な水準にまで劣化していることを示している。こうした状況がもたらす現象には、政策担当者も強い関心を持たざるを得ない。たとえば、主要な生態系の指標である北極の氷厚はすでに42%ほど薄くなっているし、世界のサンゴ礁の27%ほどはすでに失われている。さらには自然災害の大規模化がもたらされ、この10年間の被害総額は6080億ドルに達した。この金額はそれに先立つ40年間の被害額の累計にほぼ等しい。 今日、政治的リーダーが直面している選択は人類の生存環境にとって、誠に重要な意味を持っている。私たちは持続可能な経済社会システムへ急転回していくのか、それとも従来通りに人口増加、温室効果ガスの排出増加、生態系の破壊を続けるようなリスクを背負っていくのだろうか。 化石燃料の使用量を直ちに抑制に転じなければ、最新の気候モデルによれば、地球の温度は2100年には、1990年レベルより3度強ほど高くなる。こうした気温の上昇は深刻な水不足をもたらし、食料生産量を減少させ、生命にかかわるマラリアやデング熱を蔓延させるだろう。2001年の『地球白書』の第4章では、カエルをはじめとする世界の両生類十数種が絶滅の危機にあると述べられている。この背景にある環境劣化としては、森林伐採やオゾン層破壊がある。この章を執筆したアシュレイ・マトーンによれば「両生類は環境の変化に対して他の生物種よりも敏感であり、そうした意味で地球環境の状態を示すにふさわしい生物指標の1つ」なのである。 地球環境の劣化は野生生物へのそうした影響のみならず、人間にとっても日々の生活に制約をもたらす。たとえば、今後の十年間にわたって、いくつもの国で貧困が解消へ向かったとしても、12億の人々にとっては、清浄な水を得ることが大変に困難であろうし、数億の人々は汚染された大気の中で暮らさねばならない。一方、フィリピンやメキシコの貧しい人々は、いくばくかでも生活水準を高めようと、あがくような努力をするだろう。つまり、森林を伐採したり、漁のためサンゴ礁を破壊したりすることになる。 さて、「環境の劣化は自然災害をより恐ろしいものにしている」と述べているのは、第7章を執筆したジャネット・エイブラモヴィッツで、「1998年から1999年の間だけでも、死者は12万人を超え、さらに数百万人が災害で住んでいた家を失つた。それも、インドや中南米の貧しい人々がそうした犠牲の中心」である。 人口の増大によって、洪水常襲地である川沿いの地や不安定な傾斜地といった、従来は人が住んでいなかったような土地に、新たに居を構えざるを得ない状況が生み出されている。こうした土地は、森林伐採や気候変動の悪影響をまともに受ける。たとえば、1998年のハリケーン・ミッチによる中米の経済的被害は85億ドルに達したが、これはホンジュラスとニカラグアのGNPを合わせた額に相当する。 「破局的な方向にある環境劣化の動向を制御可能にするために不可欠な世界的取り組みを立ち上げていくのは、いささか圧倒されるような困難を伴う課題ではある。しかしながら、19世紀の奴隷解放から20世紀初めの婦人参政権の実現まで、人類は大きな挑戦にすでに成功してきたのである。およそ物事を変えていくことは、当初は不可能と見えても、早々にむしろ『変える』ことが不可避的なものになっていく」と述べているのは、第10章を執筆したゲーリー・ガードナーである。 たとえば、次のような事例があげられよう。 2000年12月、122カ国の交渉代表が残留性有機汚染物質(POPs)を厳しく規制する、法的拘束力のある国際条約に合意した。 アイスランドは地熱と水力に恵まれているが、これを活用して水素を生産するという画期的なプロジェクトを発進させた。プロジェクトではアイスランドの自動車と漁船の燃料に水素を利用することになるだろうが、世界的な石油メジャーと自動車メーカーがこれに企業的関心を強く示し、資金を投じることになった。 化学合成による肥料と農薬を使用しない有機農業が急速に展開され、その世界市場は220億ドル規模に達した。12月にアメリカではより厳しい有機農業の認定基準が設定され、この有機ブームはさらに大きなものになるだろう。 環境問題の改善にとっては、企業の取り組み姿勢も重要な影響力を持つ。昨年、フォード自動車のウィリアム・フォード会長は内燃エンジンと乗用車の将来見通しについての見直しをした。というのも、同社は新世代の運輸技術の開発をいっそう強力に展開しているからだ。一方、世界の3大石油メジャーは脱石油に向けて動き出し、有望なさまざまなエネルギー源の開発に投資することを表明した。昨年は石油・天然ガス・電力とも一斉に値上がりした。これにより、中東に偏在する化石燃料に過大に依存していることが、世界経済の不安定につながることが、世界的に広く再認識された。いくつもの地域で、再生可能エネルギーは価格的にも最も安く、かつインフレに左右されることが少ないエネルギー源となっている。 第9章を共同執筆した副所長のヒラリー・フレンチとリサ・マストニーは、現在の環境関連の国際条約の履行と強化を実現できなければ、環境問題はさまざまな領域において、新たな前進をみることが難しくなると見ている。『地球白書2001』は、次のような事柄の必要性を強く訴えている。環境関連の国際条約の強化、そして南北協力の強化、とりわけ環境と経済の双方において世界的影響力の大きい9カ国−中国・インド・欧州連合(EU)・アメリカ・インドネシア・ブラジル・ロシア・日本・南アフリカ〔訳注:環境のEと経済のEからE−9諸国と呼んでいる〕の協力強化。さらに「グローバリゼーションは単なる貿易振興にとどまっていてはいけない。いまや、環境に起因する破局は世界共有のリスクともいえるので、それを回避するためには政治及び市民社会レベルにおいて多国間の連帯を強化する方向において、グローバリーションが図られる必要がある」と白書では述べている。 たとえば、上のE−9諸国は温暖化防止に対して、次のような貢献ができるだろう。現在、E−9は、世界の温室効果ガス排出量の3/4近くを占めている。従って、E−9が新エネルギーへの転換を、責任を持って推進すれば今日のエネルギー市場に対して大きな影響を与えるだろうし、また温暖化のテンポを遅らせることが出来るだろう。 「新大統領が今後の10年の地球環境問題において、アメリカを良きリーダー役にしていくのか、あるいは進展の足を引っ張るような役まわりにしていくのかは、不透明なものがある」と、ワールドウォッチ研究所のクリストファー・フレイヴィン所長は述べている。「アメリカの経済は世界最大であり、その環境への影響もいかなる他の国より小さいことはない。それだけに、そのアメリカがいかなる方向へ舵をきるのかは、世界の進路にとって重要な意味を持つ」。 1999年12月、シアトルで開催されたWTO閣僚会議は新ラウンドに抗議する人々によって何らの取り決め合意も成し得なかったし、2000年のハーグの地球温暖化防止会議も利害調整がつかず、実質的に何らの合意も得られぬうちに幕を閉じた。こうした状況をみると、世界は持続可能な経済を構築していく、そのプロセスに関する合意形成に苦労しているのである。アメリカが世界環境の直面している脅威を過小評価して、環境に前向きな姿勢を取らなければ、世界はまさにリーダー・シップ不在になる。国際的な交渉代表たちは、大統領選におけるブッシュ候補の反環境派を思わせるレトリックにはずいぶんと気をもませられたが、新大統領としてホワイトハウス入りをすれば、地球温暖化防止条約をはじめ、その他にかつてのブッシュ政権が手がけた政策を推進するものと期待する向きもある。 「いま問題なのは、リーダーシップといったことだ。20世紀、アメリカは環境危機を招く先頭を走ってきたようなものだが、21世紀は持続可能な社会へ向けて世界をリードしていくだろうか。それとも、そうした先駆的役割は他国に任せるのだろうか」(2001.1.13発表) |
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