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地球白書03−04

地球白書
クリストファー・フレイヴィン編著

日本語版編集監修
エコ・フォーラム21世紀

日本語版編集協力
地球環境財団/環境文化創造研究所

社団法人家の光協会刊

2600円+税
ISBN4-259-54629-5
編著者
クリストファー・フレイヴィン クリストファー・フレイヴィン
1955年、カリフォルニア州に生まれる。ウィリアムズ大学で経済学と生物学を専攻して1977年に卒業。同年、ワールドウォッチ研究所へ。1990年に研究担当副所長に就任、2000年にレスター・ブラウンに次ぐ第2代の所長に就任。『地球白書』『地球環境データブック』とも創刊年次版より、毎年執筆している。

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目 次

はじめに
環境界の一年間の主要動向

第1章  石器革命から環境革命へ、人類の進化を果たす

250万年を要して石器を改良
ピレネー山脈の洞窟に住んだホモ・サピエンスの文化
オーリニャック文化の広がりと人類の変革
気候の不安定な時期の独創力
オーリニャックの移行に見られる特徴
  ◆ 人類が直面する課題
世界の約一二億の人々が一日一ドル以下で暮らす
耕地の不足以上に深刻な水不足
攪乱される地球化学循環
化学肥料と化石燃料の燃焼による攪乱
過剰なリンと固定窒素がもたらす富栄養化         
環境に放出される有害化学物質
目に見えぬところで広がる化学的危害
生物が汚染物質の貯蔵所になっていく
貿易拡大のもたらす外来種の脅威
世界が直面する広範な生態学的衰退
世界の漁場で乱獲が続いている
  ◆ 人類のイノベーション史に学び、果敢に取り組む
人間の適応力がもたらす落とし穴
認識をしても、改革に立ち上がれないホモ・サピエンス
奇跡と思われる改革も、達成すれば平凡なこと
たびたび失敗してきた疾病撲滅キャンペーン
マラリアとの長い闘い         
1977年10月26日に最後の天然痘患者
パブリック・イニシアティヴへの期待
環境にとっての人口増加問題
東アジアの急速な人口転換
先進国の女性が産む子どもの数は約1.6人
人口増加予測の下方修正         
死亡率の上昇と出生率の低下
出生率を大幅に引き下げたバングラデシュとイラン
経済発展や大規模な社会的投資なしに進んだ人口転換
現実的なプログラムがなければ、楽観できない人口増加の勢い
人口転換に希望を見いだす
有機農業も改革への希望
五万年前のイノベーションを再現する


第2章 自然と人間とを結び付ける鳥類を守る

鳥類種の約12%が今後100年で絶滅するであろう
植物の種子を遠くまで運ぶ
人類への脅威の敏感な指標
1800年以降で103種の鳥類が絶滅
鳥類のみならず、は虫類の25%、両生類の21%、魚類の30%に絶滅の脅威
  ◆ 最大の脅威は人間の土地利用による生息地の消失
単一樹種の植林では自然林の代替にはならない          
重要な生息地である草地の世界的消失
外来種も生息環境を変化させる
自然保護区域にも押し寄せる汚染物質
湿地は大陸を横断する数百万羽の渡り鳥の重要な休息場所
アメリカムシクイ科の鳥類の越冬地の森林消失
越冬範囲はきわめて狭く、限られた地域に依存する
  ◆ 生息地が開発によって細分化され、繁殖が困難になっていく
伐採により、森林の周縁部を好む鳥類が優勢になる
森林に切り開かれた林道はハンターを招く
繁殖地が保護されれば、そこから他の地域に分散していく
  ◆ 生態系を破壊するさまざまな外来種
島に持ち込まれたマングース、ネズミ、野生ブタの生態系への脅威
グアムで12種の鳥類を絶滅させたミナミオオガシラヘビがハワイへ
移入されたアリも脅威に
外来種のアブラムシが北アメリカの森林を襲う
船の水樽によってハワイへ持ち込まれた鶏痘と鳥マラリア
北アメリカの鳥類には、西ナイルウイルスに対する免疫がまったくない
土着種が外来種と交雑してしまう
北アメリカの草地に広がる外来種植物
いったん持ち込まれてしまえば、鳥類はその外来種植物の種子を散布する
外来種への対処はさまざまな困難をともなう
  ◆ 狩猟銃弾、鳥かご、釣リ針、そして化学薬品
マルタでは狩猟で300万羽が犠牲になっている
大量の野鳥がスナックにされている
世界の330種のインコのほぼ三分の一の種に絶滅のおそれがある
法律によって守られる野鳥
南アメリカで続く美しい鳥の密猟
はえ縄漁の犠牲になっている海鳥
絶えることのない石油流出事故の脅威
PCBがもたらす繁殖不能性や奇形の発生
DDTの禁止で繁殖が回復
    1995年、アルゼンチンで二万羽が散布後の農薬の犠牲に
保護されている湿地帯のなかでさえ、毎年数千羽の鳥が鉛中毒で死んでいる
  ◆ 人類の快適なライフスタイルが、無意識のうちに気候変動などの脅威を
電線や携帯電話用の電波塔との衝突で、多くの鳥が死んでいる
温暖化がもたらす生態学的変化
温帯での分布範囲がわずかずつ北へ
ツンドラの鳥類も営巣地を失う
気候変動を想定した保護計画を
  ◆ 鳥類のため、人類のために直ちに取り組めること
NGOバードライフの世界的展開
保護活動を自然公園から景域レベルに広げる
生物多様性保護とビジネスを両立させる
貧しさを改善することも保護の大きなポイント
環境にも鳥類にも優しい木陰栽培コーヒー
休耕奨励により保全効果をあげる
オランダでは鳥類保護にあたる酪農生産者に報酬を
カリフォルニアではイネを刈ったあと、田に水を張って水鳥の生息地に
スペインでは有機米生産とエコツーリズムを
鳥類を狩猟対象にしてしまわず、エコツーリズムの資源とする
フロリダ州ではエコロジカルネットワークを
州政府がフロリダ・フォーエヴァー・プログラムに毎年1億500万ドル支出
3000キロに及ぶバーディング・ルート
アメリカでは、6600万人以上が野鳥愛好家で、1300万人は狩猟家
クリスマス・バード・カウントに、5万人以上のボランティアが参加
アジアにおける「水鳥個体数調査」
世界の保護活動:セーシェル、カナダ、アメリカ、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランス、セントビンセント・グレナディーン、セントルシア、ドミニカ、モーリシャス、ブラジルから
持続可能な未来のためにも
自然と人間を結びつけてくれる鳥類からの警鐘


第3章 途上国で生態系と共生する女性のエンパワーメント

マレーシアから海流に乗って、プラスチック・サンダルが
マングローブ林の向こうで進む伐採
子どもは村を出て、豊かになってほしい
移住によって人口が急増して、フロリダでも野生生物にストレス
毎年、7700万が増加している世界人口
ジェンダーと人口増加とのつながり
生物多様性と女性の地位に強い関連性
ノーベル賞の経済学者アマルティア・センもジェンダー・ギャップの解消を支持
  ◆ 人口と生物多様性の相互の関連性を考える
誕生が地球の自然にもたらす影響
ライフスタイルとエコロジカル・フットプリント
最貧国の女性の地位があまりに低い
霊長類も取引されるブッシュミート市場
ホットスポット内の人口が年率約1.8%で増加
生存のためにホットスポットに移住する
毎年5〜6%も増加するマダガスカルの都市人口
農村部に残る女性に重労働
人口が流出しても、農村部の自然への負荷は軽減されない
グローバリゼーションがもたらす脅威
効果的自然保護をもたらす「女性の地位改善」
  ◆ なぜ女性の地位が問題なのか
環境の劣化が直ちに重労働をもたらす
水汲みにその日のカロリーの三分の一を費やす
女性の土地所有がセーフティー・ネットをもたらす
生物多様性と生計を両立させる
男性のみで決定した環境保護策が、女性にプレッシャーを与える
女性は自然資源を上手に利用する
女性環境活動家がネットワークする
「自然保護・ジェンダー連合」の役割
  ◆ 求められる統合的対策
女性の就学率と識字率が改善されている
3億5000万の女性が、避妊サービスにアクセスできない
カイロ会議の約束を守らない先進諸国
リプロダクティブ・ヘルス・ケアを強化する
各国指導者の認識を前進させる
女性の自己決定権の保障を目的とするプログラム
マイクロ・クレジットと収入の機会をプログラム参加者へ
雇用機会の創出とリプロダクティブ・ヘルスを組み合わせる
タンザニアの新たな取り組み
WWFソロモン諸島委員会の取り組み
保健や生活のニーズに対応することが、多様性の保全につながる
国連人口基金のオベイド事務局長の指摘
  ◆ 次の大改革をめざして 自然保護にリプロダクティブ・ヘルス活動を取り入れる
ネパールとタンザニアでは、政府によって女性の資源管理への参加が定められている
バングラデシュの教育改革
WWFアメリカが、少女たちへの奨学金プログラムを支援
横断的な組織に改革する
人口、女性の地位、生物多様性の相互関係に対応する
環境戦略的な協力関係を築く
四つの国連機関と政府と国際自然保護連合とが協力する
消費者をエコ・エコノミーへ誘導する
ターン・ザ・タイド・キャンペーン
ソーラー・クッカーを普及する
プログラムを広域化する政策転換
ネパールの人口環境省への期待
より安全でより公平で生物多様性に富む世界を


第4章 30秒ごとに子どもの命を奪うマラリアを撲滅する

25億人への感染のおそれがあり、年間の死亡者はエイズを上回る
威力を強めてきたマラリア
アフリカに年間30億〜120億の損害をもたらしているが、25億ドルで抑制可能
資金のみならず、世界規模での意思と協調を要する
  ◆ 拡大する現代の脅威―エイズを上回る死亡数
患者と死亡者の約90%はサブサハラ・アフリカの住人
サブサハラ・アフリカでは約60万の子どもが脳マラリアに
感染した妊婦では流産、死産、低体重児出産の危険性が高まる
マラリア汚染国は観光収入などの恩恵を逃がす
死亡率は1970〜97年に世界平均で13%、サブサハラ・アフリカでは54%増加
年間3億〜5億の人々が治療を受けている
あまりにも普及したクロロキンの服用
サルファドキシン・ピリメタミン合剤にも耐性をもつ
灌漑、ダム建設、森林伐採もマラリアを誘発する
可能だが、実際には実施費用がない予防策
  ◆ マラリアの生活史と進化
感染の始まりは蚊に刺されたとき
感染蚊に刺されてから7〜20日で高熱、悪寒、大量発汗など
サブサハラ・アフリカでは、1人の感染者から100人に伝染する可能性
農耕は、いわば蚊が好む人間の血を定住化した
強力な媒介動物であるガンビエハマダラカ
変異型遺伝子による部分免疫
東南アジアでは感染は少ないが、感染すれば命にもかかわる
サブサハラ・アフリカでは、小さな子どもが犠牲になりやすい
  ◆ 撲滅を約束したが、現状はさほど改善されていない
パナマ運河建設に取り組んだルーズベルト大統領の対マラリア作戦
1948年、ノーベル賞に輝いたDDTの発見者
WHOによるマラリア撲滅の世界的プログラムの開始
蚊がDDT耐性を獲得し始める
1962年に『沈黙の春』が出版され、DDTに強い逆風となる
DDTが生み出したマラリア学の空白時代
  ◆ 環境と社会の変化がバランスを変える
ガイアナでは近代化でロバが減り、蚊は血液を人間に求めた
開発プロジェクトが、マラリアをもたらすこともある
エチオピアでは、小さなダムができて子どものマラリアが増えた
アマゾンでは、伐木搬出と金鉱採掘が蚊の好環境を生み出した
アフリカの農村地域では、家の材料の泥レンガも影響
水が汚れている都市地域には一般的には見られなかったが
クロロキンを投与されて患者が無症候になる
  ◆ メキシコの取り組み―DDTを減らしていきついに脱DDT
メキシコは2000年までに、DDTの段階的廃止目標を達成
DDTは屋内の壁に、低残留性殺虫剤を屋外へ
DDTからピレスロイド系へ
1982年以降、国内感染によるマラリアでの死亡例は報告されていない
メキシコの教訓を生かす
  ◆ アフリカの挑戦
1999年、南アフリカ共和国でマラリア感染者が突然に急増
アフリカでのDDT使用は対マラリアよりも農薬として
蚊帳や布にピレスロイド系殺虫剤を塗ったベッドネットを生かす
ベッドネットは個人のみならず、地域にも恩恵をもたらす
普及の妨げになっているベッドネットへの課税
ベッドネット課税とDDT使用
「DDTかマラリアか」という誤った議論ではどちらも残る
貧困撲滅プログラムとマラリア撲滅プログラムとを一体化する
  ◆ 公衆衛生の改善と人々の雇用
マラリア治療はワクチン接種のように確実な効果がある
ベトナムではベッドネットは自費で、塗布剤は政府支給
蚊とマラリアの特性を総合的に観察する
自生植物から防虫効果のある成分を探す
タンザニアでは市場メカニズムを生かし、かつ補助金を出し、ベッドネットを普及
東アフリカ抗マラリア治療モニタリング・ネットワークの活躍
子どもへ最適なアルテミシニン座薬
効果的な早期発見、薬剤併用療法
WHOが再び正面からの取り組みに動いている
マラリアは「感染地域の」ではなく、「地球規模の」課題


第5章 政治の意思として新エネルギー革命を支援する

再生可能エネルギーの大きな現実的可能性
風力利用は10倍、太陽光発電容量は7倍に
毎年1兆5000億ドルが化石燃料消費に使われる
再生可能エネルギーの世界規模での離陸に向けて
  ◆ 再生可能エネルギーへのさまざまなシフト
25年以内に石油の埋蔵量は減り始める
二酸化炭素排出量の八割を占める化石燃料の燃焼
従来型エネルギーによる環境と健康のコスト
経済的および安全のためのコストが大きい従来型エネルギー
従来型エネルギーよりも多くの雇用を創出する
教育、きれいな水、情報へのアクセスを可能にするエネルギー
国内経済に多面的に貢献できる再生可能エネルギー
  ◆ 2003年時点での技術の現状
風力発電のコストは五年間で20%ほど削減された
100万人以上が風力発電産業に雇用される
海上に進出する風力発電タービン
風力発電に対する、いくつかの懸念
太陽光発電は電力需要がピークになる真夏にも電力を追加供給できる
世界でもっとも重要な産業になる可能性をもつ太陽光発電
太陽電池の出荷量は、毎年、33%増えている
遠隔地で、もっとも低コストの選択肢となる太陽光発電
太陽光発電に対する、いくつかの懸念
太陽光と風力が世界の発電容量の一翼を担う
  ◆ 風力でも太陽光発電でも、もっとも先進的なドイツの国家エネルギー政策
再生可能エネルギーのリーダーに変わったドイツ
流れを変えたチェルノブイリ原発事故
市民の大きなプレッシャーで、買い取り義務づけ法(EFL)を制定する
EFL制定に貢献した社会民主党と緑の党
EFL支持勢力と反対勢力の攻防
買電価格を確立した再生可能エネルギー法(REL)
RELに対する業界の反対
再生可能エネルギーの障壁をクリアする
補助金で風力発電の研究開発を促進する
「規模の経済」の実現に貢献したEFLとREL
ドイツではおよそ四万人が風力産業で働く
アメリカを追い抜き、太陽光発電容量で第2位になったドイツ
  ◆ 世界から―成功した政策と失敗した政策
障壁をクリアする政策の五つのカテゴリー
第一のカテゴリー―送電網へのアクセスを保証する規定
スペインは6年間で世界第3位の風力発電容量に
アメリカ全体としては政策効果の少ない強制的な数値目標
イギリスでは入札システムで混乱と低迷を招く
日本やタイで成功したネットメーターリング
買い取り義務づけ法と再生可能エネルギー法が効果的
第二のカテゴリー―財政的インセンティヴ
風力ファームが節税対策に利用される
補助金の支援もあって、成功した日本の太陽光発電のコストダウン
カリフォルニアは奨励金で風力発電容量を増やす
税額控除より有効な補助金と割戻
長期低利融資が中国とインドで効果をもたらす
第三のカテゴリー―新エネルギーを多くの人に理解してもらう情報普及
第四のカテゴリー―風力発電を個人や協同組合が所有して、「新エネルギー供給」に参加する
第五のカテゴリー―技術認証、立地、許認可要件などの工業規格で競争のベースを整理
規格と計画規制が計画をはかどらせる
エネルギー政策に対する認識を、全面的に改めることの重要性
いまなお、世界銀行は化石燃料に資金をつぎこむ
一貫性や継続性が不可欠な政策条件
  ◆ エネルギーの未来の鍵を開ける
再生可能エネルギー開発に投資する石油メジャー
規模の経済が急激なコストダウンをもたらす
再生可能エネルギーへの政治的サポート
依然として信頼性のギャップに直面する
今日のエネルギー需要の1000倍をまかなう太陽光
エネルギー貯蔵問題への答えは「水素燃料」
成功の鍵は、政府の意思とそれに支えられる一貫した政策にある

第6章 環境の21世紀、錬金術は金属リサイクル

金鉱山、ヨハネスブルクの荒涼たる景観
地球の表面を傷つける採鉱業
雇用や経済生産高のシェアは小さい
地下から膨大な鉱石を掘り出す必要はない
  ◆ 世界の鉱物資源
1999年の金属生産量は70年の約2倍
金属生産価額1250億ドルのうち210億ドルは金
一部の金属鉱石はきわめて限定された地域でのみ採掘される
世界人口の15%が世界のアルミニウムの61%を使用している
先進国では建設分野で大量の金属が使用されている
まだまだ活用されていないリサイクル資源
世界の鉱夫の大半は途上国の人々
多国籍企業は規制の緩い途上国へ向かう
  ◆ 鉱山が生態系や地域住民にもたらす大きな影響
自然保護区に脅威となる採掘
金属精錬は毎年1900万トンの二酸化硫黄を排出している
大量のエネルギーを使用し、大量の炭素排出の原因にもなっている
九億トンの金属のために60億トンの廃石
金のために猛毒のシアン化ナトリウムが大量に使用されている
世界で起きている鉱業廃棄物の大量流出事故
収入のために鉱山公害に耐える貧しい人々
危険な職業だが、労働組合も結成できない
先住民の土地へ侵入する採掘業
  ◆ 鉱物資源依存型の国家経済は、なぜ発展しないか
鉱物資源の豊かさは、人々の豊かさにつながっていない
鉱業依存型の国家経済はこの20年間、悪化してきた
地下資源に依存して教育や公衆衛生といった社会サービスへ投資していない
輸送コストが低下すると鉱物資源そのものよりも、技術水準が重要になる
採掘は国家経済にとってはストックの取り崩し
景気の波に大きく左右される
各地の鉱山が閉鎖され、解雇が進んでいる
鉱山を支えてきた政府補助金や減税策
途上国では海外投資優先
閉山後の浄化処理にも公金が投入される
世界銀行なども、途上国の鉱山開発へ融資
  ◆ 将来世代のため、これ以上は掘らずにリサイクルを
金属のリサイクルはエネルギー使用量、廃棄物を大幅に削減する
都市、輸送システムも含めて単位重量の金属を効率的に利用する
確認埋蔵量の3倍もの金が、すでに地上に存在する
アメリカでは、約7000万トンの銅が製品中に使用されている
アメリカ人が10年間に捨てたアルミ缶は、ボーイング737型の31万6000機分
採掘への補助金がリサイクルの妨げになる
オランダでは、新車の購入者がリサイクルのための解体費130ドルを負担
家電の90%が埋立地へ向かっていたEUも、リサイクルへ前進
オランダ政府はアルミ缶を禁止
リサイクルを推進して雇用を創出する
銀鉱のあったアリゾナも風力発電に注目
操業を続けるならば、さまざまな改善を
コスタリカではエコツアー優先で、露天掘鉱山の一時操業停止
閉山後の浄化は汚染者の費用負担で
貧困層と環境を傷つける鉱業への資金供給をチェックする
鉱山会社も改善に取り組み始めた
将来世代に負の遺産を残さない選択

第7章 スラム住民による、スラム住民のための改革

都市は「貧しい人々の町」と「豊かな人々の町」とに分断される―プラトン
スラムは世界の不平等の象徴
主要な環境問題をたどれば「都市」に行き着く
都市は本来的には公共サービスにおいて優れた可能性をもつ
人と自然の双方を重視する都市モデルを創る
膨れあがる発展途上世界の大都市、 たとえばカラチやジャカルタ
開かれつつある政治の舞台で貧困層の声が高まる
  ◆ 都市化の進む世界の貧困と無能な政府
スラムの特徴は、住民が自宅で感じる不安定感
世界で10億人以上がスラムに住む
2000年から30年にかけての、増加人口の大半は途上国の都市に住む
都市住民が絶対的貧困層に占める割合が高まる
農村部より深刻な都市部の貧困
ナイロビではイギリスの建築資材基準を適用
地方自治体でサービス提供のための意欲と予算が不足
  ◆ スラムの矛盾
生き残るためのチャンスをくれる不法居住区
スラム住民は問題解決の法的手段を持たない
スラム住民は公共サービスをほとんど受けられない
スラム住民は水道料金の数十倍もの水料金を払う
割高な水料金を払っていながらコレラに悩む
病気の温床にもなりうるスラム
世界規模の安全保障すら脅かすスラムの存在
恵まれない隣人を訪ねなければ、隣人があなた方を訪ねてくるだろう
  ◆ ブルドーザーによる強制退去から生活環境の改善へ
貧困層の持つ「改善への可能性」を生かす
インドネシアでは、スラム住民の自主建設のためのコンクリート板を提供した
120万人の生活状況が改善されたスラバヤの計画
カイロでは、ゴミ収集人の団体が生活環境の改善に貢献
四万人のザバリーンが3000トンのゴミをリサイクル
スラム住民が専門家と手を組む
コミュニティと政府役人の協力を推進
地方自治体がスラム住民と協力することの成功例
  ◆ 住居と職を保障する
貧しい人々が、自分の住居で安心できるための対策
ペルーでは土地所有権を譲渡するプログラムに着手
所有権でなく居住権でも生活改善に役立つ
よりよい衛生設備へのアクセスと居住権の確実さをめざす
貧困層の雇用へのアクセスを広げる
公共サービスの不備を、スラム住民の雇用にも結びつける
有機廃棄物で都市農業を促進
都市農業に貧困層を呼び込む
貧困層の雇用に貢献する交通体系と土地利用の政策
成果をあげる公共バスシステム
低所得層の融資のニーズに応える
スラム住民による貯蓄団体の設立
  ◆ 自治体行政の開放
「賄賂は貧しい人々に課せられる税金である」
スラム住民の懸念に対応する
市民参加型の予算編成を導入
貧困層の声を拡大させたポルト・アレグレ市の実験
「水道が先か」「道路が先か」―住民が決める
地区全体を回るバスツアーで住民のニーズを把握する
ローカル・アジェンダ21を取り入れる地方自治体
6416自治体によるローカル・アジェンダ21の導入
貧困層のニーズを健全な環境と調和させる
白人地区と黒人居住区のアンバランスの修復に取り組む南アフリカ共和国
国際機関が地方自治体を支援する
ハピタット・アジェンダの実行を担当する国連人間居住センター
ヨハネスブルク・サミットでの困難な戦い
重要な全世界の課題である分断された都市の統合

第8章 大きなチャレンジ―宗教界と環境団体との協働

宗教界最大のテーマ、「公正で環境的に健全な社会を構築する」
宗教と自然・社会科学を和解させる
宗教的関与としての戦闘、抑圧、不寛容、偽善への環境主義者の批判
環境団体に理解されていない宗教界の精神性
  ◆ 宗教界の強大な影響力を動員する
宗教は社会的・個人的変革をもたらす原動力になりうる
一般の人々の倫理を導き出す宗教的宇宙論
さまざまな教義に読み取れる環境志向性
伝統的社会では儀式が環境を管理する
宗教指導者がもつ独特な強い影響力
膨大な数の信者の実践力
一つの宗教が一つの社会の基盤になるメリット
自然界との調和を重んじる先住民の信仰
宗教団体が構築する社会開発推進のネットワーク
企業経営方針に影響を与える「企業責任に関する異宗教間センター」
宗教による信念がコミュニティに方向性をもたらす
社会建設に貢献する宗教団体の奉仕活動
  ◆ 相違点の認識と協力のための寛容さ
宗教界と環境団体、異宗教間での新たな協力へ
ハーバード大学主催の「世界の宗教とエコロジーに関する会議」
科学と精神世界、つまり宗教との亀裂
論争を巻き起こしたユダヤ―キリスト教の教え
課題は、環境団体と宗教界とが理解し合える共通言語
地球と人類を救うための宗教改革―宗教に新たな正当性をもたらす
宗教における女性格差
人工中絶をめぐっての見解の不一致
多くの信者にとって客観的真実は揺るぎない
「自然にとって人間とは」そして「人間にとって自然とは」
科学的根拠と宗教的信念を結んだネットワーク
  ◆ 神聖な命題としての環境
ダライ・ラマが1992年の地球サミットでスピーチ
バーソロミュー総主教が主催した船上シンポジウム
科学者、宗教指導者、ジャーナリストが黒海沿岸7か国を同じ船で訪問
流域に連帯感を生み出したドナウ川のシンポジウム
ヒマラヤからベンガル湾まで2500キロを流れるガンジス川の汚染
ヒンズー教徒にとっての聖なるガンジス川
宗教と非宗教の世界観を共有するクリーン・ガンジス・キャンペーン
  ◆ 暴走する大量消費と宗教および倫理
先進国で失敗してきたコンシューマリズムへの歯止め
スリランカの村落ベースでの「サルボダヤ」運動
サルボダヤの10項目のシンプルライフ
「貧困も富裕もない」、分かち合う社会をめざして
村人たちは月一回、寄り合い、分かち合う
欧米の宗教団体が展開する環境的不買運動
聖公会が始めたエネルギー再生プロジェクト
教会から信者へ、「省エネ」の教え
フェアトレードを支持する異宗教間コーヒー・プログラム
イコール・エクスチェンジ社とルーテル教会ワールド・リリーフの協力
宗教界の「慈善」を超えて「公正」へ
宗教団体は投資パターンへの影響力を行使できる
  ◆ 現実を直視して、積極的に「参加」し始める宗教界
UNEPや世銀も、環境をめぐって主要宗教と意見交換
グローバルな展開が望まれる宗教団体のリーダーシップ
今日的な意味をもつ教義を再発見する―たとえば重債務貧困国へ
宗教は現代の過剰消費社会に警鐘を鳴らす
HIV感染という時代状況のなかでコンドームの使用を再評価
数百年にわたり、「教義」は「時代の現実」に適応してきた
国連人口基金とカトリック教会区との協力―HIV感染予防をめぐって
環境団体に求められる「人間と自然環境とのきずな」意識の創出
非科学界の人々の心を突き動かす科学者のメッセージを
いま期待される、環境団体と宗教界との新たな物語

 原注
 さくいん
 日本語版あとがき
 ワールドウォッチ研究所の動き

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