[全国学校図書館協議会選定図書
日本図書館協会選定図書]
ワールドウォッチ研究所 編著
日本語版編集監修:
エコ・フォーラム21世紀
日本語版編集協力:
環境文化創造研究所
3200円(本体価格)
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ISBN 978-4-948754-508
書名 地球白書2013-14
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State of the World 2013: Is Sustainability Still Possible?
特集の概要
持続可能性は、まだ実現可能なのだろうか
私達は「サステナバブル(sustainababble)」の時代を生きている。「持続可能な車」「持続可能な下着」まで、「持続可能な(sustainable)」という言葉が、メディアにあふれている。
2012年、英国は「史上初の持続可能なオリンピック」を目指したが、この場合の「持続可能な」とは人間や地球に何が起ころうと、4年に1度のイベントのために「永遠に続く未来」のことを指しているのだろう。環境への影響を基準にすれば、古代ギリシャは無論、20世紀の大会の方が、ずっと「持続可能」だった。
本書のテーマは「持続可能性は、まだ実現可能なのだろうか」である。
既に世界各地で危機は訪れている。暴力が日常的に存在する地域では、「持続可能性」は無意味かもしれない。
人間の影響から自然を守ることは、もはや手遅れになっている。あらゆる温室効果ガスの排出を止めたとしても、気温上昇は数十年、海面上昇は数百年にわたり続こう。必要なのは、気候や環境の劇変への適応に集中することであり、同時にこれ以上は悪化しない緩和対策を一段と強化することだ。地球を変えている現況を止められなければ、人間のあらゆる適応努力も、ついには地球が打ちのめすだろう。
こうした考えは、悲観的に聞こえるかもしれない。しかし、楽観主義に固執するあまり、「私達の苦境は、たいしたことはない」と判断することは、悲観主義と同様に避けるべきである。必要なのは現実主義になることで、自然のため、そして人間相互のために為すべきことに取り組み、これ以上に時間を無駄にしないと決意することだ。
地球白書とは?
日本では1993年から翻訳されています。ワールドウォッチ研究所・著者等についてはこちらをご覧ください。
著者・監修者について
「地球白書」記者会見
※ワールドウォッチ研究所について
1974年にレスター・ブラウン氏が米国ワシントンDCに設立。人口・エネルギー・食料・地球温暖化・気候変動・安全保障・水・生態系など様々な環境問題を対象とし、雑誌"World Watch(ワールド・ウォッチ)"、年次報告書の"State of the World (地球白書)"などが多くの国々で読まれています。環境問題がさほど注目されていなかった設立当初から、独立非営利の研究機関として様々な警鐘を鳴らしてきました。
※日本語版監修―エコ・フォーラム21世紀
環境監査研究会代表幹事 後藤敏彦
国連大学上席副学長 武内和彦
地球環境戦略研究機関 理事長 浜中裕徳
東京大学 名誉教授 林 良博
早稲田環境塾 塾長 原 剛
京都大学名誉教授 松下和夫
国連大学名誉副学長 安井 至
(五十音順)
事務局 織田創樹 清水久敬 四條舞美
※日本語版編集協力
環境文化創造研究所
目次
『地球白書 2013-14』
環境界の一年間の主要動向
第1章 「サステナバブル」を超えて
概念の誕生/「持続不可能な開発」は、「開発」といえるのだろうか/窮地と可能性
*コラム1─1 持続可能な人口を目指して
【第一部:持続可能性に関しての測定基準】
第2章 地球の境界に配慮し、 生物圏との関係を再構築する
惑星的観点からの人類の増大/持続可能性のための許容範囲:《気候変動》《生物多様性》《窒素とリン》《成層圏のオゾン》《海洋の酸性化》《地球レベルの淡水使用量》《土地利用形態の変化》《大気中エアロゾル負荷量》《化学汚染》《相互依存的な境界》/地球のレジリアンスのための革新と変革
第3章 『人類にとって、環境的に安全で、かつ基本的人権という視点から社会的に公正な空間領域』の定義
「社会の境界」と「地球の境界」の間で/境界間の動態と分配/新たな経済を導くダッシュボードのための測定基準の創出
*コラム3─1 「GDPを超えて」――新たな測定基準を求めて
第4章 「地球一個分」に適合する生活を実現する
「公正割当面積(公平な地球持ち分)」と「多消費社会」の比較/自然の法則のなかで生きることを学ぶ/今後の課題
*コラム4─1 エコロジカル・フットプリントとは
第5章 持続的な水資源の利用とその信頼性
データから見る水資源/どのようにすれば、今日の水利用を持続できるのか:《全ての人に安全な飲用水を》《生態系保全に必要な水》《地下水の動向》/持続可能性に向けて
*コラム5―1 脱塩処理について/*コラム5―2 河川・湿地・氾濫原など淡水生態系によるサービス
第6章 持続可能な漁業と海洋を目指して:生態系の破壊を防ぐ
海洋の価値/苦しむ海、海洋に対する脅威:《海洋の酸性化》《海洋の温暖化と貧酸素水塊》《海氷の消失》 《予期せぬ海洋の変化》《壊滅的な漁業》《人間活動の影響》/海洋の持続可能性を保全する管理施策
第7章 中枢的資源としてのエネルギー
「エネルギー」と「科学の転換」/経済学:失敗した革命/正味のエネルギー分析とエネルギー収支比/新たな世界展望に向けて
第8章 再生可能エネルギーによる自然資源への影響
各再生可能エネルギーの制約要因 :《太陽》《風力》《小水力》《地熱発電》《波力発電と潮力発電》《バイオマス》 /再生可能エネルギーの間欠性と変動性の緩和への取組:《蓄電池》《揚水発電》《圧縮空気エネルギー貯蔵とバイオガス貯蔵》
《溶融塩熱貯蔵》《水素》《送電と配電》/持続可能な再生可能エネルギー・システムの展望
*コラム8─1 エネルギー効率改善と省エネルギーの貢献/*コラム8─2 土地利用の優先順位と土地の権利への十分な配慮
第9章 非再生可能資源を保全する
非再生可能資源への依存の高まり/資源不足の示唆;《価格の上昇》《鉱石の品位の低下》《環境コスト》 《供給が減少して、価格が相当に上昇する採鉱投入資源》/循環型社会を創生する
*コラム9―1 「不足」とは、どのような事態なのか?/*コラム9―2 「埋立処分場からの資源回収」の可能性
【第二部:真の持続可能性を実現するために】
第10章 文化を再構築して「持続可能な文化」を生み出す
地球を消費する/過去の偉業から学ぶ/「持続可能な文化」を構築する取組 /文化規範への挑戦
*コラム10─1 「持続可能性文化」での日常生活/*コラム10─2 「選択肢の加除」によって、規範を変革する/*コラム10─3 開発・発展と衰退
第11章 持続可能で望ましい経済を社会と自然のなかでつくる
新たな経済の枠組み:《生態学的な境界を尊重する》《人々が潜在的能力を全開できる環境を整備する》《持続可能なマクロ経済を構築する》/持続可能な文明は可能か
*コラム11─1 アメリカの銀行制度の社会的費用
第12章 企業を持続可能性の推進組織に改革する
インセンティブとしての税制改革/「大きすぎて潰せない」企業が多すぎる/企業広告と消費の循環を断つ/外部性を企業会計に内部化する/責任履行能力の強い企業へ移行する
第13章 企業報告と経済における外部
経済における外部性/企業報告における外部性の開示/統合報告/外部性開示の義務化へ向けて
第14章 地下にあるものは地下に:化石燃料時代の終焉
問題は「排出」ではなく「採掘」であって、「炭素」ではなく「化石燃料」である/化石燃料の影響力/緊急な「転換」のための政治/化石燃料を地中に留めるための初期の展開/脱化石燃料時代のビジョンを描く
*コラム14─1 化石燃料の関連数字
第15章 化石燃料を超えて:代替エネルギーの評価
代替と進歩/代替エネルギーの評価:《豊富さ》《普遍性》《間欠性》《商業利用技術の確実性》《電力》《熱》《交通運輸》《社会的受容度》《分散性》《効率性》/代替エネルギー資源の概括的特質:《太陽光発電(PV)》《太陽熱発電》《太陽加熱》《水力発電》《藻類由来のバイオ燃料》《地熱発電》《風力》《人工光合成》《潮力》《従来型核分裂》《ウラン高速増殖炉》《トリウム高速増殖炉》《枯渇の可能性のある地熱利用》《定常状態の地熱利用》《作物由来バイオ燃料》/化石燃料と代替エネルギー資源との根源的差異
第16章 建築環境におけるエネルギー効率
経済的機会としてのエネルギー効率/業務用不動産市場の再構築/効率改善政策
第17章 農業:食料の生産─およびその解決策
全ての人のための食料/持続可能な成長のための食料/健康のための食料/文化を守るための食料/食料システムを改善するために:《農業生態学に基づいた食料システムに投資する》《農業の多面的な貢献を理解する》《生活を守れる農業にする》/地球的諸課題の解決策としての農業の登場
*コラム17─1 村の銀行による、持続可能な農業の推進
第18章 先住民族の伝統的食料の尊厳を守る
アメリカおよび太平洋地域の神聖な食料/伝統的食料の環境的な側面/フード・セキュリティのための新たなパートナーシップ/文化遺産と伝統的な生態学的知識/健康の格差と闘い、先住民の健康を取り戻す/伝統的食料は先住民の自然権である
第19章 先住民族を尊重する
強制される立ち退き/抵抗/先住民族の人々を尊重し地球環境も守る:《先住民族を守る諸政策》《企業の先住民族との関わり》《基金による効果的な資金供与》
第20章 持続可能性を目指す教育 :ビッグ・ヒストリー
ビッグ・ヒストリーを教える/ビッグ・ヒストリーの講座は思考方法を変革できるか/ビッグ・ヒストリーの未来
第21章 環境行動に対する地球規模の道徳的合意へ
行動規準として共有されている道徳的原則:《全ての人は、生命・自由・身体の安全に関する権利を有している》《正義、とりわけ世代間の正義は、受益と負担の公平な分配に基づくべきである》《人は、子供達を害悪から守る絶対的な義務を負っている》《私達は、慈悲によって行動する道徳的な存在である義務がある》《世界を破壊する行為は正しくない》《道徳的誠実は、私達の価値観を体現した決心を必要とする》/気候変動への取組を妨げる対抗的な道徳的価値/道徳的責務から道徳的行動へ:《道徳的権利》《良心的行動》《信仰に基づく行動》《倫理を考え直す》《組織を考え直す》/世界観のパラダイム・シフト
*コラム21─1 世紀末の倫理
第22章 持続可能性への道筋:政治的戦略の構築
持続可能性への道筋と政治:《目標の検討》《市民の活動》《ネットワークの構築》《突発事態の機会としての活用》/変革に向けて
*コラム22─1 乾燥地ケニアにおける農業の多基準マッピング
第23章 個人の変革から社会の変革へ
行動と効果のギャップ/変革の実現──過去、現在、そして未来/一段と広範な変革の実現
【第三部:緊急事態に関して率直に議論する】
第24章 激動の時代に備えた教育
授業と学習のパターン/力を失わせる仮定/危機の本当の顔/激動の時代に備えたカリキュラム/新たな一貫性
*コラム24─1 環境学の欠陥と機会
第25章 危機に効果的に対応できるガバナンスの諸要因
市民的不服従からの教訓/柔軟性を有するガバナンス体制/ガバナンスの転換:《1.相当数の人々の参画》《2.食料・交通運輸、とりわけ通信などの資源》《3.多種多様な部門の人々の参画に支えられた開放性・寛容性・非排他性》《4.闘いのための技術の学習と戦略的洞察力の強化》/危機のなかで/柔軟性を有するガバナンスに向けて
第26章 「長く続く非常事態」における ガバナンス
ガバナンスの問題/強固な民主主義の基礎を築く
*コラム26─1 一段と持続可能な民主主義/*コラム26─2 ボトムアップからのレジリアンス
第27章 永続する環境保護運動を構築する
今日の環境保護団体は成功しているのか/ディープ・エコロジー/布教活動とその可能性/エコロジカル思想の布教活動は興隆するのか/示唆から現実的な適応策を得る
*コラム27─1 ポスト大量消費者時代におけるシェイカー教の意義/*コラム27─2 エコロジカル思想と宗教思想の関係
第28章 抵抗運動:目的は手段を、どこまで正当化するか
前提/抵抗運動の類型/抵抗運動を評価する/生物多様性の衰退への関心を喚起する/「今こそ、抵抗運動の時か」を問う
第29章 地球工学(ジオ・エンジニアリング)の可能性と危険性
地球工学の現状:《太陽放射管理(SRM)》《二酸化炭素除去(CDR)》/地球工学のコスト分析:《物質面での犠牲》《政治面での犠牲》《生存そのものに関わる犠牲》/惑星工学としての地球工学の未来
*コラム29─1 地球工学の定義/*コラム29─2 オクスフォード原則:地球工学分野の研究実施に関する規約/*コラム29─3 「ソフト地球工学」技術の判定基準
第30章 キューバ:経済制裁下での適応
キューバにとっての「平時の非常時」/キューバのエネルギーへの対応/人間開発と生存可能性:《医療ケア》《教育》《農業》《その他の指標》/キューバ・パラダイム
*コラム30─1 キューバが1990年代の一大国難を克服した原動力
第31章 気候変動と強制移動
気候変動のインパクト:《異常気象と居住可能性》《水ストレスとフード・セキュリティ》《海面上昇と陸地の喪失》/移住すべきか、残るべきか/新たな分類と論争/レジリアンスと適応
*コラム31─1 強制移動と避難民の数
第32章 災害が頻発する世界におけるレジリアンスの構築
レジリアンスの定義:《多様性》《冗長性》《モジュール性》《資源保有》《社会関係資本》《エージェンシー(主体的取組)》《非排他性》《緊密なフィードバック》《革新性》/システム内のシステム/レジリアンスの現状を認識して、強化する/レジリアンスの構築における懸念と矛盾/希望の種
*コラム32─1 植物種子を保存し、レジリアンスを守る/*コラム32─2 女性のエンパワーメントとレジリアンスの構築/*コラム32─3 ベトナムの沿岸マングローブとレジリアンスの喪失
第33章 危機的状況に適応できるコミュニティを築く
否定と抵抗/危機的状況下での人間の行動/社会関係資本を構築・強化する/防災・減災、開発援助、そしてレジリアンス
第34章 「時、既に遅し」なのか
索引