カーペット
足元に何か気持ちのよいものを敷こうという衝動に人類が駆られたのは、屋根を作ろうと思ったのとほぼ同時期であったに違いない。少なくとも6000年ものあいだ、カーペットは身近に存在してきた。カーペットは美術品でもあるし、断熱材や防音材のような機能も果たし、また、比喩表現にも用いられている(英語だけでも、rug(じゅうたん、敷物)が「かつら」を意味したり、rolling
out the red carpet「盛大な歓迎をする」、being called on the carpet「叱責される」、carpetbagger「渡り者」、carpet
bombing「無差別爆撃」などがある)。
現在、使い古したカーペットは、たいてい埋め立て処分されている。NPOのグリーンシールによると、アメリカだけでも、毎年200万トン以上のカーペットが埋め立てられている。合成繊維のカーペットは何千年も分解しない。そのうえ、多くの場合、人がよく通る場所が擦り切れたというだけで処分されているのである。
製造業者は、投入資材を減らしたり、製法を改良するなど、この莫大な量の廃棄物にさまざまな方法で対応し始めている。たとえば、カーペット製造業者と産業用乾燥装置メーカーを巻き込んだ最近のプロジェクトでは、エネルギー消費量とそれに関連した温室効果ガス排出量を減少させるため、機械設備を最大限改良した。ほかにも、パイルを超音波で接合することにより、厄介な接着剤の必要性をなくしている。
しかし、将来像はずっと違う方向にある。2002年、アメリカのカーペット製造業者は、2012年までにカーペット廃棄物の40%を埋め立て処分から、再生・販売などに変えるという目標に合意した。再生(中古カーペットを引き取り、再販売のために修復する)は、カーペットの寿命を延ばし、早すぎる埋め立て処分を防ぐための一つの方法である。
さらに一歩進んだ方策は、カーペットのリースである。消費者は、カーペットを購入せずに借りる。そうすればカーペット製造業者が、最初から最後まで責任をもつことになる。
リサイクルのよりよい選択肢も出てきている。パイル繊維を裏地に用いるダウンサイクリング(もとの物質より質を下げた再生利用)などである。何より、新しいカーペットは、完全な分解が可能で、構成材は新しい材料に作り直すことができ、原材料とエネルギーは大幅に減少する。
初期のカーペットは、いぐさを編んで作られた。しかし人類は、羊毛、木綿、絹、サイザル麻、亜麻布、麻、ジュートなど、多くの素材も開発してきた。アメリカインディアンは、犬の毛さえも利用した。模様を入れるための精巧な製織技術や、色やコントラストをつけるための染料の使用もまた、非常に古いものである。天然染料は、動物(甲殻類動物や昆虫)、植物(アカネ、インディゴ、ウルシ、ホソバタイセイ)、鉱物(オーカー;酸化鉄を含んだ黄色土)などから抽出されている。
1700年代後半の機械織りと1800年代半ばの合成染料によって、カーペットの生産は手作業から機械産業へと変貌した。カーペット自体も、数千平方ヤード単位で大量生産され、商品化された敷物となった。カーペットの製造もまた、高い生産量と有害な化学物質の使用により、比較的に害のない生産活動から、環境に影響を及ぼす主要な生産活動の一つへと変わった。
現代のカーペットは、ナイロン、オレフィン、ポリエステルなど、圧倒的に合成繊維を原料にしている。言い換えると、合成繊維は石油由来であり、ひいては石油抽出と精製において環境に影響を及ぼしている。合成繊維は、合成ゴム、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニルを使って、主にポリプロピレンを原料とする裏地につけられる。そして、たいていはコールタール(芳香族炭化水素)から作られた数千もの合成染料を使って染められる。
カーペットの生産は、かなりのエネルギーおよび水を必要とし、大量の汚染を引き起こし、そしてしばしばベンゼンや青酸ガスのような深刻な有毒化学物質の前駆物質や副生成物を発生させる。設置後もカーペットは、接着剤やシーリング材、カーペットパッドから有毒ガスを放出し、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)の永遠の隠れ場所となるのである。
WWマガジン2005年
5/6月号より |