家庭で始めるダイエットで世界的な肥満傾向を改善する
アメリカ人の64%は太り過ぎか肥満状態にあるが、他の国々でもその傾向に拍車がかかっている。「フランス女性は太らない」と謳ったミレイユ・ジュリアーノのベストセラー本とは反対に彼女たちは太り出しており、フランス人の42%は、流行のスリムな体型とはほど遠い。中国でも、女性の20%と男性の15%が太り過ぎである。世界保健機構(WHO)がこの傾向を「世界的肥満(globesity)」と呼ぶのも無理はない。
もっとも警戒すべきは、この流れが子どもたちにも急速に広まっているということだろう。現在アメリカでは、6歳から11歳までの子どもの15%以上が太り過ぎている。ちなみに1960年代は4%だった。フランスでも、太り過ぎや肥満状態にある子どもの数が毎年17%ずつ増えている。大人は同6%である。したがって若者は、心臓血管系の疾病や高コレステロール、高血圧、タイプ2の糖尿病(成人発症型糖尿病)といった、体重と関連のある病気の危険にさらされている。
対策は単純だが、必ずしも簡単ではない。とにかく摂取しただけのカロリーを燃焼する必要があるのだ。エリック・シュロッサーの『ファスト・フード国家(Fast Food Nation)』やグレッグ・クリツァーの『ファットランズ(Fatlands)』に登場する二つの大きな障害は、体をあまり動かさない生活様式と高度に加工された、安くて、手早く口にできる食品である。前者を助長するのが車への依存やテレビ、安全な運動場所の欠如であり、後者には脂肪と精製糖がたっぷり含まれている(後者はさらに、環境を汚染するアグリビジネスの中心的な役割を担っている。たとえば、形の揃ったフライドポテトを欲しがるファスト・フードの需要が、農薬や化学肥料を多用する単一品種のジャガイモの単作をまねき、トリ・ブタ・ウシの工場式飼育場は、糞尿で水路を汚染している)。
しかし、人々が対策を講じ始めているというのはいい知らせである。世界的肥満を改善するには、次のようなものがある。
野菜や果物をたくさん食べる。
秋は収穫の季節なので、直売所に出かけて、新鮮で手頃な価格の野菜や果物をたっぷり買い求める。野菜や果物は低カロリーでビタミンや食物繊維が豊富に含まれており、満腹感が得られると同時に過食を防ぐ。フランス政府の新たな計画では、1日に5〜10品目の摂取を奨励している。環境面の利点:農民を支援し、農地の保全を促すと同時に、地場産の食品は農薬や輸送用燃料の使用を抑えられる。また肥沃な土壌や水系、動植物の生息地を保全するだけでなく、遺伝子組み替え食品を避けるためにも、有機農産物を選びたい。
自然食品を摂取する。
アメリカの栄養指針は、食物繊維の豊富な全粒紛を少なくとも一日85グラム摂取するよう奨励している。食物繊維は精白パンやポテトチップ、精製された炭水化物には一般に含まれていない。加工食品であるケーキやクッキー、揚げ物は、心臓病のリスクを上昇させるトランス脂肪酸が大量に含まれている。炭酸飲料水や甘味飲料の主成分である高果糖のコーンシロップのような添加糖もよく目にするが、血中の中性脂肪値を上昇させるWHOによれば、添加糖は1日の摂取カロリーの10%を超えるべきではない。トランス脂肪については、ニューヨーク大学の栄養学教授マリオン・ネスレによれば、「摂取量をできる限りゼロに近づけるようにすべきである」。
肉を減らし赤身を選ぶ。
牛肉や羊肉、チーズに含まれる飽和脂肪を総カロリーの10%以内に抑える。肉を減らせば、ダイオキシンやPCBといった動物の脂肪に蓄積する有毒な化学物質にさらされるリスクも抑えられる。
無脂肪あるいは低脂肪の乳製品を摂取する。
調査によれば、乳製品の多い食生活は、とくに危険度の高い腹部脂肪を減らし、体重の減少を促す。
外食やテイクアウトの食事を減らす。
レストランの料理は家庭で作るよりも脂肪や糖分を多く含み、1人分の量も多くなりがちである。
表示ラベルを読む。
「半硬化植物油」はトランス脂肪のことである。飽和脂肪や高果糖コーンシロップ、総カロリー、1人前の分量にも注意する。レストランは、脂肪やカロリーを明示しているところを選ぶ。
運動する。
いつもは車で行く用事も徒歩で出かけ、週に11キロメートル歩くようにする。スモッグや187キログラムの二酸化炭素の排出抑制にも貢献できる。
テレビの視聴時間を制限する。
子どもたちには、広告は番組と異なり、売り込みを目的としている点を説明する。
子どもに関わる機関と連携して活動する。
学校や合宿施設に対し、毎日の運動や新鮮な自然食品、水、牛乳の提供と、キャンデーやポテトチップの類、炭酸飲料の排除を働きかける。
ミンディ・ペニーバッカー (Mindy Pennybacker)
*グリーン・ガイド研究所(www.thegreenguide.com)が発行する『グリーン・ガイド』誌の編集者。本欄の内容は同研究所により提供されている。
WWマガジン2005年
9/10月号より |