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 トップ > ブックス > 地球白書12−13 特集 持続可能で心豊かな社会経済を目指して > 第10章

地球白書12−13
 特集 持続可能で心豊かな社会経済を目指して

第10章 見せかけだけのエコから、真に持続可能な建築物へ<概要>

 都会であれ田舎であれ、人は建築環境の中で暮らしている。建設部門は、淡水総使用量の12%をはじめ、世界の資源消費総量の少なくとも3分の1を占める。エネルギー生産量の約25〜40%が建築物の建設や運用で消費され、二酸化炭素の総排出量では約30〜40%を占める。また、固形廃棄物の30〜40%が建設から発生する。経済面では、建設部門は世界総生産の約10%を占め、建築物は公的・私的資産の大きな割合を占める。近年、世界で連鎖的に生じた経済破綻でわかるように、金融市場の安定は、担保となる不動産の長期的価値と関連する。雇用では、建設部門は維持管理も含めると国家レベルで雇用創出の5〜10%を占める。

 世界では、途上国を中心に都市化が進んでいる。現在の趨勢が続けば、2030年には都市人口は約14億人増加し、うち途上国が13億人を占める。増加人口は住宅やサービス、雇用を必要とするようになり、つまりは新たな建築物が必要となる。今後、地球上ではかつてないほどの建設が行われるだろう。これらの建築物全てが、長期的な影響力を有する。
 市場への影響は未だ僅かとはいえ、「環境配慮型の建築物」が流行するようになった。だが、近年あらゆるものが猛烈に「環境配慮型」として売り込まれているために、「真に持続可能な建築物」と、建設業者や資金供給者による、エコに見せかけた「グリーン・ウォッシュ建築物」との判断が、購入者には極めて困難になっている。

 「真に持続可能な建築物」は、単に「環境に配慮している」事ではすまない。屋根にソーラーパネルのある新築家屋は「エコ住宅」に見えるかもしれないが、家族の通勤・通学や買い物のために車が何台必要になるのだろうか? 公共交通機関はあるのだろうか? 壁材にはどのような木が使われて、どのような処理がなされているのだろうか? この家の給湯器や電化製品に、どれだけのエネルギーが必要なのだろうか? そのエネルギーは石炭の燃焼で得るのだろうか? ソーラーパネルはそのエコ住宅に必要なだけの、あるいは余剰電力までも発電できるのだろうか? 建築主は、居住地域外の地目で建築許可を取得するために、地元政治家に金銭を渡しはしなかったのだろうか? 建設労働者のための保険には加入していたのだろうか?――厄介な質問のリストは続く。

著者:Kaarin Taipale is a visiting researcher at the Center for Knowledge and Innovation Research of the Aalto University School of Economics in Finland. She is the former chair of the Marrakech Task Force on Sustainable Buildings and Construction.

 

 

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