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 トップ > ブックス > 地球白書12−13 特集 持続可能で心豊かな社会経済を目指して > 第7章

地球白書12−13
 特集 持続可能で心豊かな社会経済を目指して

第7章 企業を変革する<概要>

 今日、金融・非金融のいずれの企業行動にも、かつてない厳しい目が注がれている。この10年ほどで、金融部門では不安定さと構造的リスクにより、業界対応の欠陥が浮彫りとなった。「銀行の自己資本を適正に規制する事に失敗」、「高リスクのデリバティブ取引の際限なき拡大」、「商業銀行と投資銀行の業態間の相互参入を認めた事による、社会的影響」――いずれも、世界金融市場の不安定化につながった。「金融部門に集中する富と利益は、世界市場で不当に強大な力となっている」との世論が高まり、金融機関や監督官庁の信用は失墜した。金融機関が「大きすぎて、つぶせない」存在にならないように、あるいはそうした存在となる事を禁止するために、金融部門への再編圧力が高まった。

 金融機関が「大きすぎて、つぶせない」と形容されるようになったのは、国内外の経済市場で自ら構造的リスクを生み出したからである。この新たな状況が明らかにしたのは、失敗の最終的リスクは投資家ではなく、企業の受入国の納税者が負わされるという事で、しかもEUにあっては、全地域でそれが当てはまるという事実である。
 実体経済と呼ばれる製造業や非金融サービスを扱う企業も、市民の信頼を失いつつある。欧米の多くの国、そして日本では深刻な不況が長引き、製造業が徐々に空洞化し、社会のセーフティー・ネットが脅かされて、企業への不信感が高まっている。

 多国籍企業は肥大化を続け、市場と政治への影響力は増大している。金融、自動車、医薬品、メディア、食品業界等は、少数の世界的大企業に統合されつつある。企業の成長は株価や1株当たりの収益等で判断され、社会的価値からは疑わしい決定が行われている。例えば「短期的な利益のための強引な企業買収」、「当面の利益確保優先、研究開発費の先送り」、「従業員平均賃金に比べ極めて巨額な役員報酬」、「ストックオプションに過度に依存し、長期的利益よりも目先の株価に執着」等である。結果、多国籍企業は労働者やコミュニティや環境に、果たすべき長期的貢献をしていない。本来、企業が目指すべきは、人間及び生態系のウェルビーイングの双方が尊重される、公正で持続可能な未来であるはずだ。

著者:Allen L. White is vice president and senior fellow at the Tellus Institute. Monica Baraldi of the University of Bologna in Italy is a fellow at the Institute.

 

 

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