内容と背景
このシンポジウムでは、レスター・ブラウン氏による基調講演「バイオ燃料が食卓を脅かす」に続き、氏と日本の専門家によるパネルディスカッションを行います。
バイオ燃料は、化石燃料の枯渇を補い、地球温暖化対策に有効なエネルギー源として注目されています。とくにバイオエタノールはガソリンと混合して使用できるため、自動車用の代替燃料として大きな期待が寄せられています。2007年1月には、米国ブッシュ大統領が、10年間にガソリンの国内消費量を20%削減し、エタノールなどの代替燃料の使用量を引き上げるという政策を発表しています。また、わが国も、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大を打ち出しています。
その一方、穀物を原料とするバイオエタノール生産の増加によって、食料・飼料とエネルギーとの間で穀物を奪い合う構図が鮮明になってきました。中国やインドなどの経済発展による急激な需要の増加で穀物の需給がひっ迫している状況下では、バイオ燃料の急激な生産増が重大な食料危機の引き金を引くことも考えられます。食料とエネルギーとの競合が生じる中で、安い穀物の輸入に依存してきた日本の今後の食料確保はどうなるのでしょうか。
このシンポジウムでは、バイオ燃料という「新たな胃袋」の登場のもとでのフード・セキュリティーについて広く議論するとともに、日本におけるバイオエネルギー利用について考えます。