ビル・クリントン絶賛、レスター・ブラウン最新刊「PLAN B 3.0」人類文明を救うために発売開始 サミットへの提言 都市のガバナンス
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サミット政策要綱シリーズの第11回目は「リオプラステン:都市のガバナンス――地球規模で考え、足元から行動する」。今回の提言者のモリー・オミーラ・シーハンはワールドウォッチ研究所にあって都市・交通政策を中心に研究を続けている。『地球白書2001−02』『地球環境データブック2002−03』の執筆者。 「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)の目標は人間のニーズと地球の健全な環境のバランスを取ることだ。ヨハネスブルグ・サミットの参加各国代表は、地球のサポートシステムを破壊することなく数十億人の福利を向上させる、という難問への取り組みをの基礎となる合意主文について議論する。しかしながら、現実の最終的な取り組みは、世界の人々の大半が生活の場であり、近い将来の資源利用の大部分を占める世界の都市を舞台に行われる。 都市は、地球を破壊することなく人々に恩恵をもたらす新しい取り組み方の有力なインキュベーターとなり得ることをすでに示している。一方、政府は都市が先導するイニチアチブの妨げとなることが多い。地方自治体と組織された市民にとって、WSSDにさきだつ展開での味わった経験は10年前のリオ地球サミットの際に受けた対応と似ていた。リオでは地方自治体、地域グループ、NGOが討議に参加したこと自体大きな一歩だった。しかし、都市の優れたガバナンスの提唱者は、国家のリーダーの目を持続可能な開発の将来に関する都市の重要性に向けさせることの困難さに直面した。最貧層の人々と地球の限られた能力を考慮した開発の見通しを示す上で都市が担える、そして担うべき重要な役割を示す文書の合意を得るために、厳しい取り組みをしなければならなかった。 都市:大多数の人間と膨大な地球資源が集まる 人類の半分近くが都市圏で生活している。増加の一途をたどる途上国都市部の人口は現代の最も劇的な人口動態を示している。 人口統計学者は2000年から2030年の間に世界人口が20億近く増え、その大半がアフリカ、アジア、南米の都市部におけるものと予測している。 北に集中する「先進国」の都市が注目を集めたのは歴史的にはごく短い間のことだ。下に示すように、1900年時点の世界の10大都市すべてが北側の都市だったが、2000年時点でトップ10のリストに残ったのは東京とニューヨーク、ロサンゼルスだけであり、人口統計学者は2015年までにはラゴスやダッカ、カラチ、ジャカルタの人口が急速に増加し、ロサンゼルスがリストから外れるだろうと予測している。 世界10大都市(単位:100万人)
注:東京は隣接諸県の一部地域を含む。 出典:1000年〜1900年のデータ -- テルティウス・チャンドラー著「4000年の都市の成長 - 歴史的人口調査(Four Thousand Years of Urban Growth: An Historical Census)」(ニューヨーク州ルイストン、エドウィン・ミレン・プレス、1987年刊);2000年のデータ -- 国連「世界都市化予測 - 1999年改訂(World Urbanization Prospects: 1999 Revision)」(ニューヨーク、2001年版)。 参考:大気を温暖化する車の排気ガスや、森林を裸地化し生物多様性を脅かす木材に対する都市部の需要、水をめぐる緊張を高める地方自治体の水不足にいたるまで、重要な地球環境問題が都市に起因している。都市は世界の資源の多くが最終的に消費される場所だ。世界の化石燃料の燃焼およびセメント製造により発生する炭素排出量のおよそ78パーセント、産業用途に使用される木材の76パーセントが都市部によるものである。地球上では人類が使用する水の60パーセントが様々な形で都市で消費されている。(この約半分が都市部生活者の食料生産のための灌漑に使われ、約3分の1は都市の産業に、残りは飲料用水または衛生設備に使われている。) 都市:社会・環境の向上に対する多大な可能性
社会面では、理論上は、人々がひとつの場所に集中すると学校や医療などをはじめとする重要なサービスとのアクセスがより円滑になる。歴史を通して、高度な医療と教育は都市化に続いて実現している。複雑にして巨大な政府に比べて地方自治体は小さく人々に身近な存在であることから、組織された市民にとって現状を変えやすいことになる。 環境面では、水、金属や木材などの資材、食料、燃料は都市に流入し、消費されて廃棄物と化し、廃棄物処理場に山をなし、また土壌・空気・水の中の汚染物質となっている。しかし、このワンウエー流れは循環型の流れに変えられる。必ずしも現状を反映した仮説ではないが、人口が分散しているケースに比べると、人口がある程度集中することで消費資材の削減やリサイクルが容易になる。コンパクトな都市圏は交通に必要なエネルギーや各種インフラに必要な資材の削減につながる。 都市計画とサービス設備に関して以下の修正を加えることにより、人々の生活の質の向上と地球環境の健全度が高まり得る。 *水と廃棄物それぞれの流れを開放系ではなく、閉鎖系の環状にする。節水・コンポスト・リサイクルへのインセンテイヴ、あるいは廃棄物とされていた物質を原材料として活用する企業システムへのインセンテイヴを創設することによって、で都市は原材料の重要な供給源になり得る。 *食料とエネルギーの自給を促す。有機都市農業、あるいは現在のような集中型ではなく地域分散型で生産されたクリーンなエネルギーは都市のグリーン化を進めるだけでなく、都市生活者の収入と安全保障を高める。 *交通と土地利用を関連づける。車中心ではなくて、さまざまな交通手段で容易に移動できる立地開発に取り組むことによって、都市はスプロール現象に歯止めをかけ、人間のための空間および自然のための空間を最大限に確保できる。 都市:持続可能な開発に向けてのイニシアテイヴ
*ローカルアジェンダ21。1992年に開催された地球サミットの成果のひとつに環境と開発政策の詳細な青写真を示したアジェンダ21と呼ばれる文書がある。2001年までに63カ国、4000以上の都市がアジェンダ21のローカル版を策定した。 *ウガンダ、ジンジャの「廃棄物の資源転換(Turning Waste into Resource)」プロジェクト。ジンジャは首都カンパラに次ぐ都市で、廃棄物の60パーセントが道路に山のように放置されており、ネズミやノミといった病原体媒介動物の好む状況となっていた。ジンジャ市では1995年から市民と共に「ローカルアジェンダ21」に取り組み、他のテーマに加えてこうした都市の廃棄物を資源に転換させることを項目に含めた。ジンジャはあるコミュニティでは、そこで一般的なきわめて源始的な便所からの汚水にバイオガス発生装置を設置し、そこから得られるメタンを近隣の家庭の照明や調理用のエネルギーとして利用できるようにした。バクテリアの分解作用で脱臭された汚泥は回収、乾燥されて堆肥として利用されている。 *コロンビア、ボゴタの「人と地球に役立つ交通(Making Transportation Benefit People and the Planet )」プロジェクト。1998年から市長エンリク・ペニャローサが200km近い自転車道の建設とバス専用車線の建設に取り組み、ボゴタの交通システムを大きく変えた。かつては数千ものバス業者が公害を撒き散らす旧式のバスを運行して、一般道路で自家用車とスペース獲得の争いをしていた。ボゴタ市はよりクリーンで効率的なバスを発注し、バス業者に入札させてバス専用車線を走らせることで渋滞を免れた。このシステムの管理は市が行い、バス業者はバスへの投資から収益を上げている。 民主主義を人々に近づける(Bringing Democracy Closer to the People)プロジェクト。都市の最貧層の生活者は、都市全体の健康・環境・安全へのニーズが強いにも関わらず、一般的には政治力をほとんど持っていない。しかし1990年代に、都市部の貧しい人々が協力し合い、地方、全国、世界レベルでの変化を促すために政治的な力を使い始めた。2000年の国連ミレニアム・サミットの首脳会議は、2020年までに衛生施設へのアクセスと土地保有権を確立することにより、スラム街に住む1億人の生活を向上させると誓った。ブラジルのポルトアレーグレ他の都市は「参加型予算編成」、つまり市民が参加して公共事業優先順位を決定することと明確な予算配分を市民に公表することを、選出された公務員に義務付ける方法を先駆けて採用した。 *エクアドル、コタカチの「経済のグリーン化(Greening the Economy)」プロジェクト。コタカチ郡はエクアドル北部の農村が広がるインバブラ州にあり、アンデス山脈西斜面と太平洋の間に位置している。市民と自治体は1997年から2000年にかけて、水資源近くでの採鉱や木の伐採、遺伝子組み換え作物の作付の禁止を掲げた新環境条例を案出した。また、ごみの分別、リサイクルをはじめ、持続可能な管理のためコタカチ固有の森林の所有者に対する奨励金、有機農業促進など、建設的な変革のための対策も提示している。環境への影響が少ない産業活動を行うために、コタカチ郡は花卉産業の研究、あるいは皮革産業のためのよりクリーンな技術の研究に取り組み、また、日陰栽培(コーヒー園の植物をできるだけ残す栽培方法)の有機コーヒーをはじめとする「グリーン製品」の市場を探している。 *数百の都市で炭素排出量を削減:地方自治体のネットワーク、国際環境自治体協議会(International Council for Environmental Initiatives; ICLEI)は世界各地の地方自治体による温室ガス排出量削減への取り組みを支援した。2001年10月の時点で500都市が参加し、世界の炭素排出量の8パーセントにあたる温室ガスの削減を目指した。政府が定める目標値以上の削減に取り組んでいる都市もある。 |
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