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サミットへの提言

「リオプラステン:
人間と農作物と生態系に安全な水を」

サンドラ・ポステル

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提言をまとめたサンドラ・ポステルはマサチューセッツ州アムハーストにある世界水政策プロジェクト(Global Water Policy Project)の責任者で、ワールドウォッチ研究所の特別研究員。


 1992年にブラジルのリオデジャネイロで国連環境開発会議が開催されてから10年が経った。その間、水に対する意識は着実に向上したが、水をとりまく世界環境は著しく悪化した。リオサミットでの水問題の扱いは、気候変動、生物多様性の危機、森林破壊などの緊急課題に比べて地味だったが、1990年以降関心が高まっている。世界各地で発足した委員会や会議、ネットワークの活動を通して、食糧生産、保健、貧困緩和、生態系の保全、地域の平和と安定を支える水の大切さがより広く認識されるようになった。

 しかしながら実際的な水問題の解決は、問題意識の向上よりはるかに遅れている。南アフリカのヨハネスブルグで開催される「持続可能な開発のための世界サミット」(World Summit on Sustainable Development :WSSD)は、各国政府と一般社会が公正で効率的、持続可能な水資源の利用を最優先に考える画期的な会議であり、水問題の今後に与える影響はきわめて大きい。国連のアナン事務総長も、水はエネルギー、保健、農業、生物多様性と並んでWSSDでの具体的成果が「不可欠であり、なおかつそれが可能な」分野とみている。

 海洋生物以外のあらゆる生物は生きるために水(淡水)を必要とする。沿岸部に生息する海洋生物の多くも、海に注ぐ河川の水によって栄養を摂取し、体内の塩分濃度を調節する。このように、水は石油や銅のような生活必需品としてだけではなく、もっと根本的なところで生命を支えている。河川、湖沼、湿地などの淡水生態系は水の供給源であり、さまざまな動植物の生息地でもある。人間もまた、洪水・干ばつの緩和効果、水の浄化、漁場などの貴重な恩恵をこれらの生態系から授かっている。人間の活動に必要な資源のなかで、水ほど代用のきかないものはない。農業、工業、そして生活全般に水は不可欠である。

 20世紀の水管理は灌漑用水、都市部の生活用水と工業用水、洪水対策、水力発電に対する右肩上がりの需要を満たすことが中心であり、そのための大ダム、堤防、河川分水施設、地下水井戸が次々と建設された。1950年以降、高さ15m以上の大ダムは5000基から4万5000基に増加している。これは1日平均2基の大ダムが50年間建設され続けた計算になる。

 水の需要増とその結果もたらされた生態系の改変により供給可能水量は減少し、生態系が損なわれて多くの淡水生物が絶滅の危機に瀕している。中国の大半の地域、インド、イラン、メキシコ、中東、北アフリカ、サウジアラビア、アメリカでは、地下水の過剰汲み上げで地下水位が低下しつづけている。コロラド川、ガンジス川、インダス川、リオグランデ川、黄河などの大河川は季節によって涸れることが多くなり、世界の淡水湿地面積はほぼ半減した。また、国内外で激化する水争奪戦が社会的・政治的安定を脅かしている。最近では、農繁期に十分な灌漑用水が得られない黄河下流域やパキスタンのインダス川下流域の農業者が激しい抗議運動を起こした。

 21世紀は水と経済開発に対する取り組みを一新し、80〜100億人の水需要を満たす一方で人間の活動と地球上のすべての生命を支える生態系を保全していく必要がある。
そのための重要な政策を以下に挙げる。

1 貴重なサービス機能を無償で果たしている生態系を保全する。

 河川や氾濫原、湿地をはじめとする陸水生態系の重要な機能は普段あまり意識されていないが、金額に換算すると年間数千億ドル相当の価値がある。自然の恵みに直接依存して暮らすことが多い貧困者はとくにその恩恵を受けている。現在は行政の手で生態系を保全する取り組みが行われるようになってきた。南アフリカでは、水を多く必要とする外来種の植物を西ケープ地方の河川流域から除去している。その結果、地域固有の植物の豊かな多様性は保全され、供給可能水量を増やすためのコストも節約できる。ニューヨーク市は、60〜80億ドルをかけて新しい浄水場を建設するかわりに、市の「水がめ」であるキャッツキル水系の保全におよそ15億ドルを投じる方針だ。これらの例が示すように、自然資本の保全によって経済的利益を得る可能性はおおきい。

優先的に取り組むべき政策

・ 水系、氾濫原、湿地その他の自然資本を保全する。
・ オーストラリアの多くの州と南アフリカで実施されている環境的視点での河川流量管理を確立する。
・ 河川の自然流量を保全し、季節的な高水位に対応したダム操作を義務づける水管理関連法を整備、施行する。
・ 河川流域管理の主眼を生態系の保全に置く。

2世界のすべての人が安全な水と上下水道をはじめとする適切な衛生設備を利用できるようにする。

 途上国では、安全な水の欠如が現在も病気や死亡の大きな原因となっている。汚染された水による下痢などで、子供を中心に年間300万人以上が死亡している。安全な水を利用できる人の数は1990年から2000年にかけて8億1600万人増加したが、人口もこれと同じくらい増加したため、利用できない人の数は約11億人から変化していない。適切な衛生設備がない人の数は同期間でわずかに増加し、24億人となった。

優先的に取り組むべき政策

・ 公共機関による給水サービス支援を拡大する。安全な水を利用できない人の8割以上が集中する農村部を中心に、地域社会が主体となって資金面および技術面の援助、訓練を行う。
・ 本来、給水サービスは民間まかせではなく国と地域社会が自らの責任で行うべきである。民営サービスを適切に機能させるためには、貧困者の基礎的な水需要を満たし、水源そのものを保全していくためのしっかりした枠組みが不可欠だが、そうした体制づくりはほとんどおざなりにされている。
・ 効率性と生態系の保全に配慮した給水・衛生インフラ施設を整備する。
・ 都市部の水道管からの漏水(給水量の3割以上が失われることもある)を防ぐ。

3小規模灌漑用水を供給する。

 1日2ドル未満で暮らしている人は約28億人、そのうちの8億人が慢性的な栄養不足状態にある。世界でもっとも貧しくて栄養状態が悪い人々は南アジアとサブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)の農村部に集中しており、これらの人々は食糧を自給自足でまかなうことも買うこともできない。貧困緩和のいちばんの近道になりうるのは、灌漑農業用水の供給である。小規模灌漑によって土地生産性が向上し、収入が増えれば、各世帯レベルの食糧安全保障は強化される。

優先的に取り組むべき政策

・ 貧農地帯に安価な小規模灌漑設備を普及させる。バングラデシュでは、貧しい農業者層に120万台以上の人力ペダル式ポンプ(1台35ドル)を導入したところ、最初の1年で1台当たり平均100ドルの増収となった。
・ 河川流域の保全修復や雨水利用を目的とした地域社会主導型のプロジェクトに投資する。プロジェクトによって地下水の涵養を促進し、乾期の灌漑用に流出水を貯蔵できるようになれば、灌漑農業の発展につながる。
・ 小自作農業者に低コストのドリップ(点滴)灌漑システムおよびマイクロスプリンクラーを普及する。

4水の生産性を倍増する。(自然環境から得られた1?の水から今までの2倍の利益を引き出す。)

 少ない水でより多くの仕事をするには、世界の水消費量の7割を占める灌漑用水の効率的利用、廃水リサイクルの実践、工業システムの見直し、水をあまり必要としない食習慣や景域(生態系を含む景観・地域)、ライフスタイルの確立が必要である。

優先的に取り組むべき政策

・ 灌漑関連の補助金を削減する。
・ 技術開発によって天水農業の生産性を高める。
・ 帯水層の枯渇を緩和するため、地下水の過剰汲み上げに対する規制強化または課税措置を実施する。
・ 生態系保全のためのインセンテイヴを策定し、都市部の生活用水、工業用水、農業用水について節水的な 目標値を定める。
・ 乾期の過剰な水使用などに対する課徴金を盛り込んだ価格構造を導入する。
・ 税法改正――労働と投資は減税し、資源消費と汚染行為については増税する。

5水管理体制の強化

 毎日の生活に欠かせない水はいわば公益信託であり、監督および報告責任、共同利用、持続可能性、説明責任の原則に基づいた管理体制が必要とされる。

優先的に取り組むべき政策

・ 公益信託的な概念を法的・倫理的指針の柱とした水管理体制を整備する。WSSDの開催国である南アフリカ は、すべての人々と生態系の基礎的な水需要が二次的需要に優先することを定めた新しい水法を1998年に 可決した。こうした法律は今後広く採用されていくだろう。
・ 水争いが懸念される地域で予防外交を推進する。水紛争回避のために、より強力な機関の介入を必要とする国際河川流域は20以上ある。
・ 世界ダム委員会(World Commission on Dams)が2000年に発表した提言を各国政府、世界銀行をはじめとす る水関連大型プロジェクトの融資機関が受け入れる。
・ 河川流域の市民グループを結成し、その活動を支援する。

 


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