ビル・クリントン絶賛、レスター・ブラウン最新刊「PLAN B 3.0」人類文明を救うために発売開始 サミットへの提言 「リオプラステン:
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今回の提言者であるパヤル・サンパットはワールドウォッチ研究所の研究員。 南アフリカのヨハネスブルグが「ゴールドラッシュの町」になったのは、採石場からたまたま金が見つかった1886年のことだ。金はおよそ地下1600メートル以上の深さに埋まっている鉱石に、きわめて少量(1%の1000分の1にも遠く及ばない)しか含まれていない。そのため微量の金を得るために大量の岩石を掘削することになる。ゴールドラッシュ以来、数十年間続いた金や石炭などの採掘で、かつての農村地帯はおおきな変貌を遂げた。町の南側には不要な鉱石が捨てられてできた「ずり山」がいくつもある。 サミットに出席する各国代表は、ヨハネスブルグの上空から、これらのずり山をいやでも目にするだろう。破壊された鉱業都市ヨハネスブルグで世界サミットが開催される今年は、鉱業の生産活動の再点検が重要課題となる。今日、鉱業は世界の経済生産の1%未満を占めているのにすぎないのだが、世界のエネルギーの10%近くを使用している。また、アメリカなどでは有害産業廃棄物全体の約半分を鉱業関連産業が占めている。 鉱業は、環境汚染の大きな原因である。鉱石から金属を取り出すために、鉱山ではシアン化物や水銀などきわめて毒性の強い化学物質が大量に使われる。近年は鉱山廃液の流出事故が魚の大量死、土壌汚染、水質汚染、人間の健康被害を引き起こしている。2000年には、ルーマニアのバヤ・マレ鉱山で尾鉱ダム(テーリングダム)が決壊し、10万トンの廃液とシアン化物、銅、重金属で汚染された2万トンの採掘汚泥がドナウ川に合流するティサ川に流出した。この結果1240トンの魚が死に、250万人の飲料用水源が汚染された。 最近は、世界でもっとも環境が破壊されやすい地域で鉱山開発が行われている。希少なキツネザルや鳥類が生息し、固有の植物が自生するマダガスカルの森林地帯にはチタン鉱山があり、ペルーの熱帯雲霧林では金が探査されている。コンゴ民主共和国でも、絶滅のおそれがあるマウンテンゴリラが生息するオカピ野生動物保護区でタンタル鉱石(コロンバイト・タンタライト;携帯電話やコンピュータ等の電子機器の生産に使用されている金属であるタンタルの原鉱石)が採掘されている。採掘に伴う環境的損失を過分に被ってきたのは先住民族だが、その状況は今も変わらない。ある推計では、1995〜2015年に生産される金の半分は先住民族の土地から採掘される。 長期的に見た場合、鉱業は地域社会の経済や国家経済に必ずしも貢献していない。一般的に、鉱業に依存している国は経済成長率が低く、貧困率がきわめて高い場合もある。世界鉱物市場の価格が不安定なために、鉱業地域の経済は常に景気の波に左右される。1990年代に入って鉱物価格が急落すると、オーストラリア、アメリカ、中国、フィリピンなどの鉱山会社は多くの労働者を一時解雇した。南アフリカの鉱山では、1990〜2000年にかけて全体の約半数にあたる40万人近くが一時解雇された。 鉱山の安全性が大きく向上したとはいえ、鉱業は未だに世界でもっとも危険な職業のひとつである。国際労働機関(ILO)によると、鉱業就労者数は世界全体の1%未満であるにもかかわらず、就労中の死亡件数では全体の5%を占めている。 世界各国の代表が協議している「持続可能な開発に関する世界首脳会議のための実施計画案」には鉱業に関する記述が少なく、取り組みのための指針も示されていない。世界サミットだけでなく、現在世界銀行で進められている「採取産業概観」等でもいっそう積極的なアプローチが必要とされる。各国政府、金融機関、企業、納税者、地域社会は、重大な環境的・人的損失を出さずに鉱物を利用する枠組みをこれから確立していかなければならない。その際に考慮すべき要素を以下に挙げる。 1.再生資源の利用に向けた環境づくり ・ 鉱業関連の補助金を段階的に撤廃する ・ 持続可能な方法で資源を利用する ・ 操業開始から閉山まで「汚染者負担の原則」を適用する 2.生態系の保全と地域社会・労働者の保護 ・ 自然保護区など生態系の破壊されやすい地域で鉱山を操業しない。 ・ 有害化学物質から地域社会と生態系を守る ・ 操業の受け入れについて、地域住民の意思決定を尊重する ・ 労働者と地域社会のための脱鉱業移行計画を策定する。 |
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