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1984年創刊、世界で読まれている地球環境問題のロングセラー本『地球白書』、最新版発売!

サミットへの提言

「リオプラステン:
持続可能な世界のために鉱業を転換する」

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今回の提言者であるパヤル・サンパットはワールドウォッチ研究所の研究員。

 南アフリカのヨハネスブルグが「ゴールドラッシュの町」になったのは、採石場からたまたま金が見つかった1886年のことだ。金はおよそ地下1600メートル以上の深さに埋まっている鉱石に、きわめて少量(1%の1000分の1にも遠く及ばない)しか含まれていない。そのため微量の金を得るために大量の岩石を掘削することになる。ゴールドラッシュ以来、数十年間続いた金や石炭などの採掘で、かつての農村地帯はおおきな変貌を遂げた。町の南側には不要な鉱石が捨てられてできた「ずり山」がいくつもある。

 サミットに出席する各国代表は、ヨハネスブルグの上空から、これらのずり山をいやでも目にするだろう。破壊された鉱業都市ヨハネスブルグで世界サミットが開催される今年は、鉱業の生産活動の再点検が重要課題となる。今日、鉱業は世界の経済生産の1%未満を占めているのにすぎないのだが、世界のエネルギーの10%近くを使用している。また、アメリカなどでは有害産業廃棄物全体の約半分を鉱業関連産業が占めている。

 鉱業は、環境汚染の大きな原因である。鉱石から金属を取り出すために、鉱山ではシアン化物や水銀などきわめて毒性の強い化学物質が大量に使われる。近年は鉱山廃液の流出事故が魚の大量死、土壌汚染、水質汚染、人間の健康被害を引き起こしている。2000年には、ルーマニアのバヤ・マレ鉱山で尾鉱ダム(テーリングダム)が決壊し、10万トンの廃液とシアン化物、銅、重金属で汚染された2万トンの採掘汚泥がドナウ川に合流するティサ川に流出した。この結果1240トンの魚が死に、250万人の飲料用水源が汚染された。

 最近は、世界でもっとも環境が破壊されやすい地域で鉱山開発が行われている。希少なキツネザルや鳥類が生息し、固有の植物が自生するマダガスカルの森林地帯にはチタン鉱山があり、ペルーの熱帯雲霧林では金が探査されている。コンゴ民主共和国でも、絶滅のおそれがあるマウンテンゴリラが生息するオカピ野生動物保護区でタンタル鉱石(コロンバイト・タンタライト;携帯電話やコンピュータ等の電子機器の生産に使用されている金属であるタンタルの原鉱石)が採掘されている。採掘に伴う環境的損失を過分に被ってきたのは先住民族だが、その状況は今も変わらない。ある推計では、1995〜2015年に生産される金の半分は先住民族の土地から採掘される。

 長期的に見た場合、鉱業は地域社会の経済や国家経済に必ずしも貢献していない。一般的に、鉱業に依存している国は経済成長率が低く、貧困率がきわめて高い場合もある。世界鉱物市場の価格が不安定なために、鉱業地域の経済は常に景気の波に左右される。1990年代に入って鉱物価格が急落すると、オーストラリア、アメリカ、中国、フィリピンなどの鉱山会社は多くの労働者を一時解雇した。南アフリカの鉱山では、1990〜2000年にかけて全体の約半数にあたる40万人近くが一時解雇された。

 鉱山の安全性が大きく向上したとはいえ、鉱業は未だに世界でもっとも危険な職業のひとつである。国際労働機関(ILO)によると、鉱業就労者数は世界全体の1%未満であるにもかかわらず、就労中の死亡件数では全体の5%を占めている。

 世界各国の代表が協議している「持続可能な開発に関する世界首脳会議のための実施計画案」には鉱業に関する記述が少なく、取り組みのための指針も示されていない。世界サミットだけでなく、現在世界銀行で進められている「採取産業概観」等でもいっそう積極的なアプローチが必要とされる。各国政府、金融機関、企業、納税者、地域社会は、重大な環境的・人的損失を出さずに鉱物を利用する枠組みをこれから確立していかなければならない。その際に考慮すべき要素を以下に挙げる。

1.再生資源の利用に向けた環境づくり

・ 鉱業関連の補助金を段階的に撤廃する
 アメリカ、オーストラリア、カナダでは採掘権が法外に安い。たとえばアメリカでは1ha当たりの鉱区使用料は12ドルである。ブラジル、エクアドル、パプア・ニューギニアなどの国は、鉱区使用料の免除といったインセンテイヴや収益への非課税措置といった優遇政策で外資系企業を誘致している。これらの優遇策を撤廃し採掘権に適正な価格を設定すれば、環境破壊が軽減され、国庫収入は増加する。その結果、資源のより持続可能な開発や教育、保健などの社会サービスの強化が可能になる。

・ 持続可能な方法で資源を利用する
 原鉱石から加工処理して精製するよりも、使用済み製品を再生するほうがエネルギーの消費量ははるかに少なくてすむ。例えば、再生処理でアルミニウムを生産(二次生産)する場合のエネルギーは、ボーキサイトから生産(一次生産)する場合の5%程度である。銅なら7分の1、鉄鋼は3.5分の1のエネルギーで再生できる。しかしながら、たとえば銅に関していえば二次生産は世界の使用量のわずか13%を供給しているにすぎない。原鉱石の採掘に対する補助金は、すでに精製された資源を再使用するより、新たに採掘された鉱石から生産するほうがコスト的に有利であるという歪みをもたらし、こうした非効率的な資源利用の最たる原因となっている。

・ 操業開始から閉山まで「汚染者負担の原則」を適用する
 鉱山会社が破産したり、採算の取れない鉱山が閉山したりした場合、廃鉱の浄化などにかかる多額の事後処理費用は納税者と政府が負担してきた。例えばコロラド州サミットビル鉱山で発生したシアン化物流出事故の処理については、破産した鉱山会社に代わって1992年からアメリカ環境保護庁が巨額の費用を負担している。アメリカ国内だけでも膨大な数の廃鉱があり、その浄化作業にかかるコストは350億〜700億ドル(117円換算にして約4兆〜8兆円)と推定される。インド、中国、南アフリカ、東ヨーロッパ諸国も同じく莫大な事後処理コストを引き受けている。これらのコストを納税者ではなく汚染者に負担させる体制づくりが必要である。

2.生態系の保全と地域社会・労働者の保護

・ 自然保護区など生態系の破壊されやすい地域で鉱山を操業しない。
 鉱業では大量の土が掘られる。地球規模でみれば鉱業による年間の地表侵食は概して河川による自然侵食を上回っている。採掘された資源のほとんどは実質上利用されない。ちなみに、約220トンの土を掘って得られる銅は平均わずか1トンである。生態系と環境を破壊する鉱山は、オーストラリアのカカドゥ国立公園、スペインのドニャーナ国立公園、ベネズエラのシエラ・イマタカ森林保護区等の国立公園や世界遺産でも操業を許可されている。生態系が破壊されやすい地域での新規操業を凍結し、自然保護区内で操業している鉱山についても許可を取り消すべきである。

・ 有害化学物質から地域社会と生態系を守る
 シアン化物や水銀をはじめとする鉱業用有害化学物質の継続使用に対しては、多くの国が強硬な措置をとっている。2000年にルーマニアのバヤ・マレ鉱山で発生した有害物質流出事故を契機に、チェコは金の精錬にシアン化物を使用することを禁止した。ドイツでは議会が翌2001年に同様の禁止措置を採択した。コスタ・リカでも大統領が2002年6月に同様の一時禁止措置を布告した。アメリカでは、コロラド州とウィスコンシン州の団体がシアン化物を使った精錬の禁止を訴えている。

・ 操業の受け入れについて、地域住民の意思決定を尊重する
 鉱山の操業については、地域住民にできるだけ詳細な情報を提供し、賛否を問うべきである。2002年6月、カナダ企業の露天掘り金鉱山があるペルー北部タンボグランデの住民は、94%という圧倒的多数で鉱山の操業継続に反対した。

・ 労働者と地域社会のための脱鉱業移行計画を策定する。
 各国政府、企業、労働組合はより安全で有意義にして、環境的に持続可能な雇用を広範に創出し、世界の鉱山労働者の再雇用を支援する必要がある。1990年代に大量の一時解雇があった南アフリカでは、職業紹介所と全国鉱山労働者組合が再訓練、再就職を目的とする移行計画を策定した。この結果、元鉱山労働者が鉄鋼や紙のリサイクル事業などに転職し、南アフリカ経済の持続可能性は向上した。

 


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