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2002-10
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Eco-Economy-Update 2002-10
環境保護のための税制改革
バーニー・フィシュロウィッツ=ロバーツ
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多くの国々が所得税を減らす一方で、環境に有害な製品や生産・消費への課税、つまり環境税を導入し始めている。これまでのところ、こうした課税シフトの規模は比較的小さく、世界の税収のわずか3%を占めるにすぎない。しかしながら環境的な目標に到達するには税制改革が大きな力を発揮することに、多くの国々が気づいていることは明らかである。
たとえばガソリンの市場価格には、石油の掘削、抽出、精製と輸送の費用が反映されている。だが、ガソリンの燃焼によって生ずる大気汚染や酸性雨は計上されていないし、気温上昇や海面上昇、暴風雨の被害の増大などで明らかな気候変動の一因になっていることも考慮されていない。環境税は、それらによる実際の被害や損失額をより厳密に市場価格に加えようとするものである。
課税シフトが進んでいるドイツでは、所得税の引き下げとエネルギー税の引き上げによる環境税改革を数段階に分けて実施している。1999年にはガソリン・灯油・天然ガスの税金を引き上げ、新たに電気税を導入した。この税収は雇用者と被雇用者の年金基金負担を減らすために使われた。しかし多くのエネルギー集約型産業に対しては、国際競争力の低下を懸念する声を反映して、エネルギー税の増税は実質的に低く抑えられた。
2000年にドイツはさらに賃金税を引き下げ、内燃機関用燃料と電気の税金を引き上げた。その結果、2001年上半期の内燃機関用燃料の売り上げは、前年同期を5%下回った。一方、カープール〔自動車の相乗り〕取扱業は2000年上半期に25%の成長を報告した。これまでにドイツでは税負担の2%を、所得税から環境に有害な生産・消費への課税に転換した。
イギリスの環境税改革の一つに、燃料税を一定のペースで引き上げていく燃料税エスカレーター制度というものがあり、1993年から99年にかけて実施された。その一つの結果として道路輸送分野における燃料消費が減り、33トン以上のトラックの平均燃料効率は1993年から98年の間に13%改善された。超低硫黄ディーゼルの税率は通常のディーゼルより低かったため、1998年7月に5%だった同車種の国内売り上げシェアは、99年2月には43%に急増し、同年末までに国内のディーゼルはすべて超低硫黄ディーゼルに代わった。
オランダも環境に有害な生産・消費への課税にシフトしている。1988年に導入された一般燃料税が92年に修正され、現在では化石燃料に課税されている。税率は燃料の炭素含有分とエネルギー量に基づいて決められる。1996年から98年にかけてエネルギー消費税(Regulatory
Energy Tax = RET)が実施され、天然ガス、電気、重油、灯油に課税された。燃料税は主として税収を得るためのものだが、燃料規制税の目標はそれとは異なり、エネルギー効率改善の動機を与えることによって消費者の選好を変えることだった。競争力を維持するためにエネルギーの大口使用者は税金を免除されたので、この税金は主として個人を対象としたものだった。
オランダではこれらの税収の60%を一般家庭が負担していたため、それと引き換えに所得税が軽減された。企業が負担していた40%分は、3つの目的に振り替えられた。雇用者の社会保障負担の軽減、法所得税の軽減、自営業者に対する税控除の拡大の3つである。この税シフトによって一般家庭のエネルギー費用は増大し、その結果として消費電力は15%減り、燃料使用は5〜10%減った。
フィンランドは1990年に二酸化炭素(CO2)税を導入した。1998年までに同国のCO2排出量は、ほぼ7%減った。フィンランドの環境税も大多数の国々の環境税と同様で均等課税とはかなり様相が違う。一般家庭とサービス部門の電気税率は産業界と比べてずっと高い。
スウェーデンにおける課税シフトの試験的導入は1991年に始まった。炭素と硫黄の排出に対する課税を導入し、所得税を引き下げたのである。製造業は環境税の多くについて免除や払い戻しを認められ、税率は一般家庭が支払う税率の半分に抑えられた。同国政府は2001年にディーゼル燃料、灯油、電力への税率を引き上げ、所得税と社会保障費用の負担を軽減した。現在スウェーデンの政府歳入に占める税シフトの割合は6%になっている。このためもあってスウェーデンの温室効果ガス排出削減は予想より速く進んでいる。政府と野党の政党間合意で2012年までに1990年レベルの4%削減が課されていたが、2000年には排出量は既に1990年レベルを3.9%下回っており、その大部分がエネルギー税によって実現したものだった。
現行の課税シフト・プログラムでは、競争力に影響を与えるのではないかというもっともな理由からエネルギー集約型産業に無数ともいえる免税措置が認められており、そのためにより効率的な税制の創出が遅れている。国境税の調整を利用して、輸出品については企業に環境税を払い戻し、輸入品には国内の環境税をかければ、免税措置がなくても国際競争力を確保できる。
環境に有害な産業への補助金の廃止も、市場が正しい信号を送るのに役立つだろう。世界中で環境を害する補助金は年間5000億ドルを超える。課税によって妨害しようとしている行為を政府補助金が奨励している限り、税シフトの効力には限界があるだろう。
適切に構成された課税シフトであれば、商品やサービスの社会的費用の多くが価格に組み込まれ、それによって消費者と生産者の選好が変わるから、市場がより効果的に機能するのに役立つだろう。たとえばデンマークに世界トップレベルの風力タービン産業が出現したのは、同国が化石燃料と電力に世界でも最高水準の税率で課税した結果である。これらの措置によってエネギー効率のよい家電製品の売り上げが著しく伸び、それ以外にも省エネルギーの取組みが生まれた。
環境に有害な影響を与える多くの製品やサービスに課税対象を広げれば、税シフトの効果は大いに高まるだろう。たとえば地球温暖化の3.5%は航空機の排気が原因だが、航空燃料は現在、世界中で非課税である。しかし最近ヨーロッパではジェット燃料への課税が論議されており、これは期待できる動きである。こうした課税は世界の飛行機利用者の予測増加数は下げるかもしれないし、機体関連製造業者にジェット燃料消費を低く抑える効率改善を促すかもしれない。
税制改革の目標は、市場に環境の真実を語らせることである。これまでのところ税シフトは適用範囲が限られているが、ささやかながらも確かな結果を生み出している。エコ・エコノミーの創出には、もっと広範囲の大規模な課税シフトが必要である――価格に環境的費用を組み込み、その価格によって個人と組織の行動規範に必要な変化をもたらすためである。
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