トッププライバシーリーガルサイトマップRSSアイコン My Yahoo!に追加エキサイトリーダーに登録
WorldWatch-Japan

WWJ地球環境メールマガジンEpsilon
メールアドレス
 

Yahoo!検索

  • ウェブ全体検索
  • サイト内検索

トップ | レポート | WWマガジン | ブックス | メールマガジン | リンク | 各種ご案内

 トップ > レポート  > Eco-Economy-Update

amazon.co.jpで注文する。 →書店で注文する。

ビル・クリントン絶賛、レスター・ブラウン最新刊「PLAN B 3.0」人類文明を救うために発売開始

1984年創刊、世界で読まれている地球環境問題のロングセラー本『地球白書』、最新版発売!

Eco-Economy-Update

水不足は食糧不足に直結する

レスター・R・ブラウン

メールマガジン登録はこちらから

* * *

メールマガジン登録はこちらから

 世界で大規模な水不足が広がっている。歴史的見地からすれば近年の現象なのだが、人々に事の重大さが認識されないままに勢いを増しながら進行している。帯水層からの過剰な汲み上げが主な原因のため、地下水位の低下は我々の目に見えないのである。森林の焼き払いや風が吹き寄せる砂による砂漠化とは異なり、地下水位の低下は簡単に写真に収められるものではない。井戸が枯れて判明するというケースが多い。
 この半世紀に3倍に増加した水の需要や、強力な揚水能力をもたらすディーゼルポンプと電動ポンプの世界的普及が地球規模の水不足をもたらした。数百万もの井戸が掘られ、世界の各地で涵養できる以上の水を帯水層から汲み上げることになった。各国政府は地下水を持続して利用するための揚水規制を怠り、今日多くの国々で地下水位が低下しつつある。
 我々は将来の世代に帰属すべき水まで使用している。国によっては地下水位の低下は非常に深刻な問題だ。人口190万人のイエメンでは国土のほぼ全体で地下水位が年に2メートル低下している。持続可能なレベル以上の地下水が使われているためだ。
 世界銀行のクリストファー・ワードは「地域経済を一世代で消滅させてしまう速さで地下水がくみ上げられている」という。
 イエメンの首都サヌアがある盆地では、地下水位の低下は年に6メートルにおよび、2010年までに帯水層が枯れるであろう。イエメン政府は水を求めて同盆地に深さ2000メートルの試験井戸を掘った。井戸というよりは石油業界の掘削を思わせるこの深さだが、それだけ掘っても水は見つからなかった。イエメンは海岸に立地する淡水化処理プラントからサヌアへの水を調達するか、あるいは首都を移転するかという決断に迫られている。
 人口7000万のイランもまた深刻な水不足に直面している。イラン北東部に位置する、農業が盛んなチェナラン平原では1990年代終わりには既に年に2.8メートルもの地下水位低下が見られた。しかし2001年には、3年間続いた干ばつをはじめチェナラン平原の灌漑や隣接するコラーサン州の州都マシュハドへの水の供給のために井戸を新たに掘ったため、地下水位の低下は8メートルにも達した。イラン東部では井戸が枯れたために住民が放棄した村々がある。結果として、水難民の数は増加の一途をたどっている。(その他の例はhttp://www.earth-policy.org/Updates/Update15.htmを参照)
 エジプトはナイル川を唯一の水源としており、同国の水不足はよく知られている。現在では地中海に面したナイル川河口の流れは細々としたものだ。ナイル川流域の主要3国、エジプト、エチオピア、スーダンはいずれも他の2カ国の取水量を犠牲にすることなくナイル川からの取水量を増やすことができない。これら3国の人口は合わせて1億6700万人だが、2025年には2億6400万人に達すると予測されている。3国とも水不足に起因する穀物不足に直面しているのだ。
 メキシコは人口1億400万、1年に200万人の割合で人口が増加しており、水の需要が供給をはるかに上回る州が多い。たとえば農業が主産業のグアナフアト州では地下水位が年に1.8〜3.3メートルの割合で低下している。メキシコシティの水不足は既に周知の事実だ。リオグランデ川の水をめぐる問題はアメリカとメキシコの関係における争点のひとつとなっている。
 中国の華北平原の水収支に関する世界銀行の調査は年間370億トンもの水が不足していることを明らかにした。穀物1トンの生産に必要な水は約1000トンとされており、370億トンの水は3700万トンの穀物、すなわち現在の穀物消費に換算すると1億1100万人の中国人を養うだけの農業用水量に相当する。つまりは1億1100万人の中国人が子供たちに帰属すべき水によって生産された穀物を消費していることになる。数多くの国々で地域的な水不足が急速に広まっている。中央アジア、中東、北アフリカではほとんどすべての国が、また、インド、パキスタン、アメリカでも水不足は進行している。
 かつては局地的な問題と捉えられていた水不足であるが、世界経済の統合が進む中、穀物貿易を通して国境を越える問題となった。水不足に悩む国々では灌漑用水を都市部の生活用水や工業用水に転用して増加する需要に対応し、用水不足による穀物生産の減少分は輸入で補っている。穀物1トンが水1000トンに相当することを考えると、穀物の輸入はすなわち最も効率的な水の輸入ということになる。「世界の穀物の将来」はまもなく「世界の水の将来」ということになるだろう。
 水をめぐる武力紛争もありうる。しかし、水をめぐる争いは将来的には世界の穀物市場で起こるとみるのが妥当だろう。イランやエジプトの穀物輸入量が、従来からの主要輸入国である日本のそれを上回っているという例もある。イランとエジプトでは、小麦、コメ、飼料用穀類などの穀物消費量全体の4割が輸入でまかなわれている。両国以外にも実に多くの国々が水不足に悩み、穀物の多くを輸入に頼っている。モロッコでは穀物の半分を輸入し、アルジェリアとサウジアラビアでは穀物の7割以上を輸入している。イエメンでは穀物の8割近く、イスラエルでは9割以上が輸入されたものだ。
 河川や地下から取水される世界の水の使用内訳は、およそ7割が灌漑用水、2割が工業用水、1割が生活用水だ。つまり、「世界が水不足に直面すること」は「食糧不足に直面すること」にほかならない。水不足は穀物を輸入に依存する数多くの小さな国々で高まりつつある問題だが、中国やインドなど大きな国々でも近い将来同じ状況が展開しうる。
 世界最大の国、中国では帯水層の過剰揚水による穀物不足が進行している。1998年に記録的な生産高である3億9200万トンを達成した後、2000年から2002年にかけて穀物の生産高は3億5000万トンを下回った。約4000万トンの年間損失は国家の食糧備蓄で補われている。しかし、この状況が続けば中国が世界の穀物市場に輸入国として参入することは必至だ。
 中国が世界の穀物市場にそうした立場で参入するようになると、穀物価格は上昇するだろう。1972年、ソ連は穀物の不作に見舞われたのだが、その後消費を抑制することなく穀物輸入を続けた。世界の穀物市場における小麦の価格は72年にブッシェル当たり1.9ドルだったのが74年には4.89ドルに上昇した。
 帯水層を安定させる鍵はふたつ、水の価格の引き上げと人口の安定化だ。最初のステップとして、非常に多くの国々で普及している政策的に水の価格を引き下げるシステム、つまり政府の補助制度を撤廃しなければならない。次に、水の生産性を高めながら社会のすべての部門が節水に取り組み、水の揚水量が持続可能なレベルに低下するまで水の価格を引き上げる。都市部の低所得消費者に対しては特別な「ライフラインレート」を設け、支払能力の範囲におさまる価格で生活する上での基本的なニーズが満たされるようにする。地下水の価格を管理するには、メキシコが行ったように揚水ポンプにメーターを取り付けて課金する方法や、井戸を管理運営する許可証をオークションにかける方法もある。いずれの手法でも水の価格は上昇する。
 ふたつ目の鍵は水不足に悩む国の人口を速やかに安定させることだ。21世紀半ばまでに増加する30億人の大半が既に水不足に直面している国々で生まれると予測されている。女性の識字率を高め家族計画サービスに十分な投資を行うことによって、人口の増加速度が急速に低下しない限り、世界の水不足に対する人道的な解決法はないかもしれない。

【地球環境問題の書籍をオンラインで購入(ad)】

 


翻訳提供/禁無断転載
WorldWatch-Japan.org


広告について

RSSで、あなたのホームページやブログに地球環境問題レポートを載せませんか?

My Yahoo!に追加エキサイトリーダーに登録はてなRSSに追加Subscribe with livedoor Reader

ページトップへ
Mail
Copyright (C) 2000-2010WorldWatch Japan, All rights reserved.  <禁無断転載

地球白書 2009-10特集地球温暖化抑制 /地球白書英語版State of the World 2009: Into a Warming World / レスターブラウン プランB4.0

ワールドウォッチジャパンクラブ会員募集中 / 地球環境問題メールマガジン(メルマガ)配信中 / 地球環境総合誌(雑誌) / 地球環境問題RSS配信中 /
中国・世界の地球環境問題レポート/ニュース / 環境教育 / 地球白書.jp / 地球環境問題の書籍、関連本

EarthPolicyInstitute WorldWatchInstitute