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Eco-Economy-Update 2002-12

気温の上昇と地下水位の低下が穀物価格を引き上げる

レスター・R・ブラウン

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 8月12日付の米国農務省(USDA)の最新情報によると、2002年の世界の穀物生産量は、18億2100万tと推定される。7月の推定値18億7800万tは下方修正された訳である。今年の世界の穀物消費量は19億400万tと見込まれており、消費に対する生産の不足量は8300万tとなる。
 生産量の推定値が毎月下がり続けているため、世界市場では小麦、トウモロコシの価格がますます上昇している。12月受渡しの小麦の先物価格はここ数か月で1ブッシェル2.83ドルから3.70ドルまで上昇し、上昇率は31%となった。トウモロコシの価格も同様の上昇を示した。穀物価格の高騰はパン、シリアル、パスタをはじめとする穀物製品や、肉、牛乳、卵などの畜産物の価格上昇にもつながる。
 世界の穀物生産量は3年連続で消費量を下回っている。2000年と2001年の不足量はそれぞれ3500万tと3100万tであり、2002年の推定8300万tを合わせた3年間の不足量は合計1億4900万tとなる。このため、繰越在庫量は過去30年の最低水準にまで落ち込んだ。
 本穀物年度末における世界の小麦の繰越在庫量(新しい収穫が始まる時点で貯蔵されている量)は、年間消費量の23%と推定され、過去28年で最低となる。コメの繰越在庫量は過去18年で最低の28%、トウモロコシにいたっては40年の統計史上最低の15%弱となる。
 2002年の穀物減収には、作付け時の価格低迷、高温被害、地下水位の低下という3つの要因がある。近年の穀物価格の低迷で土地改良など生産強化に対する農業者の投資意欲は失われ、生産性のきわめて低い土地での作付けも行われなくなった。
 また、世界の主要な農業地帯では記録的な高温で作物が弱り、生産量が減少している。2001年の世界の平均気温を月別でみると、9月と11月は134年の統計史上最高、12月、1月、2月、4月、5月は同じく史上2番目の高温を記録した。また、2002年の7月は過去4番目の猛暑となった。高温と少雨のため、多くの国が渇水状態に陥っている。
 世界の3大農業国であるアメリカ、インド、中国では農作物の高温被害が相次いでいる。過剰な水分蒸発と高温によるストレスは灌漑作物にも及ぶ。気温が摂氏32度を超えると、農作物の生産に影響がでる可能性がある。
 アメリカの穀物生産の7割を占めるトウモロコシは、生産性は高いが熱には特に弱い。高温にさらされると水分の蒸発を防ぐため葉が丸まり、光合成が減退する。この状態では植物は生命維持に重点を置き、生長が鈍る。その結果、生産量は減少する。
 インドの農作物も高温被害を受けている。5月には摂氏45度(華氏113度)の熱波に見舞われ、1000以上の死者を出した。加えて、今年のモンスーンは例年より発生が遅く、勢力も弱い。インドのコメ生産量は少雨の影響で推定9000万tから8000万tに下方修正された。
 世界の食糧需要の拡大に伴って農業用水の需要も増加した結果、過剰揚水により地下水が減少している。地下水位の低下は中国、インド、アメリカの主要農業地帯でもみられるようになってきた。中国では穀物の7割が灌漑で生産されている。この割合はインドでは5割、アメリカでは約2割である。
 米国農務省の報告によると、テキサス、オクラホマ、カンザスの各州には地下水位が30m以上低下した地域もある。この結果、グレートプレーンズ南部の州では地下水が汲み上げられなくなったところもでている。また、今年はネブラスカ、コロラドなど主として灌漑でトウモロコシを生産している州でも凶作が予測されている。
 地下水位の低下は各国の穀物生産に直接的な影響を及ぼす。中国の小麦生産量は、1997年の1億2300万tをピークにその後4年連続で減収となっている。ちなみに今年の推定生産量は9200万tである。小麦の主産地である中国北部では雨水の不足を灌漑で補っており、帯水層の枯渇や都市部への分水で灌漑用水の供給が圧迫されれば生産量は減少する。北京近郊では、急増する都市部の水需要が貯水池の供給限界に近づいているため、農業用水の取水が禁止されている。
 8300万tの不足を克服し、目減りした在庫を回復させながら、年間8000万人のペースで増加する世界人口を養っていくことは果たして可能だろうか。これまでのところ、穀物価格の上昇はおおむね作付面積の拡大と生産量の増加をもたらしてきたが、今後どれだけ作付面積を拡大できるかは不明である。世界の穀物作付面積は、1981年の7億3200万haをピークに現在は6億6000万haまで減少している。1980年代後半、アメリカは土壌保全留保計画(CRP)を実施し、耕地のおよそ1割で作付けを取りやめた。この計画では、きわめて浸食されやすい農地を休耕した農業者には給付金が支払われた。中国は、砂漠化を食い止める試みとして10年前から穀物畑の1割に植樹を行っている。
 耕地面積拡大の可能性が残っている地域としては、ブラジルのセラード(サバンナのような広大な半乾燥地帯でアマゾン川流域の南部及び西部に位置する)が挙げられる。ただし、土壌は侵食されていて地力も中位程度なので、石灰を混ぜて酸性度を低下させ、大量の肥料で生産性を維持しなければならない。
 耕地の生産性を高めることは、以前よりはるかに難しくなった。世界各地で帯水層が枯渇している原状では、今までのように穀物価格が上昇すれば灌漑面積も拡大するという期待はできない。穀物価格の上昇とともに肥料の使用量も増え、現在は発展途上国でもかなりの量を投入している。このため、今後さらに投入量を増加させたとしてもコストに見合うだけの利益は得られなくなってきている。
 世界は今、厳しい状況に直面している。かつての2000万t、3000万t、4000万tといった穀物不足は比較的楽に乗り越えられたが、8300万tの不足から立ち直るのは容易ではない。今後数年間で気温はさらに高くなるという予測が現実になれば、これだけの不足を克服し、落ち込んだ繰越在庫を回復させ、一方で2050年までに推定30億人増加する人口を支えていくのは難しいかもしれない。これを機に本腰を入れて、人口増加と気候変動の問題に取り組むべきではないだろうか。

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