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　2002年１月から11月の気温データは、2002年が1998年に次ぐ史上２番目に暖かな年になることを示している。データはゴダート宇宙科学研究所のもので、11ヶ月の平均気温は14.65℃と、1998年の14.69℃という記録をやや下回るものの、1951年から1980年にかけての平均14℃に比べるとかなり高い。
　このような年間気温データを調べていると気温上昇が紛れもない事実であり、しかも勢いを得ながら進行していることがよくわかる。我々は1年前、記録を開始した1867年以降の暖かな年上位15がいずれも1980年以降であることを指摘した。今年12月に劇的な気温低下が起こらなければ、暖かな年トップ3がこの5年間に集中することになる。
　年間気温の長期的傾向に加えて、最近の月間データも気温上昇が加速していることを示している。季節による変化が顕著な局所的気温に比べて、地球の平均気温は南半球と北半球の季節の違いで均衡が保たれるためにきわめて安定している。今年1月の14.72℃は1月の平均気温では最高記録で、3月の14.91℃もまた記録開始以来の最高値だった。続く４月から11月の8ヶ月のうち７ヶ月は各月の2番目または3番目に高い気温を記録した。10月の平均気温は過去の同月のデータでは4番目に高い結果だった。
　1980年以来10年単位の平均気温は、1951年から1980年にかけての平均気温で標準値とされる14℃をゆうに越えている。世界の平均気温は、1980年代は14.26℃、1990年代は14.38℃だった。次の10年区切りの最初の3年間、つまり2000年から2002年の平均気温は14.52℃だった。
（データについてはwww.earth-policy.org参照。）
　代表的温室効果ガス、二酸化炭素の大気中濃度が気候に及ぼす影響を分析している大気科学者は、気温上昇を予期せぬ驚きとは捉えていない。1959年に詳細な記録が始まって以来、毎年大気中の二酸化炭素濃度は記録を塗り替えてきており、世界の環境動向の中でも特に予測しやすい指標となっている。
　大気中の二酸化炭素濃度の上昇は、化石燃料の大量燃焼により自然の吸収能力を超える二酸化炭素が発生したために起きている。この20年間に観察された気温上昇は、二酸化炭素の濃度上昇が地球の気候に及ぼす影響を予測するためのコンピュータを駆使した世界気候モデルに基づく研究の結果と合致するものだ。
　世界中のトップクラスの気象学者1500人以上を擁する「気候変動に関する政府間パネル（IPCC）」は、大気中の二酸化炭素濃度が予測通りに高まると地球の平均気温は今世紀中に1.4℃から5.8℃上昇すると発表した。予測の下限、1.4℃の場合、21世紀の気温は10年ごとに0.14℃上昇することになり、これは20世紀に観測された20年ごとの気温上昇にほぼ匹敵する。一方、5.8℃という予測上限の場合は10年ごとに約0.6℃の上昇となり、地球の生態系と生態系が支える経済に甚大な影響を及ぼしかねない。
　気温の上昇は温度計に数値として示されるだけでなく、厳しい猛暑や熱にやられた作物（日照りで枯れた作物）、融氷をはじめさまざまな形で表れる。2002年5月のインド南部で発生した記録的酷暑では気温が45.6℃に達し、アンドラ・プラデシュ州だけでも少なくとも1000人の命を奪った。エアコンのない社会では危険な熱から即座に逃れる方法がない。インドの北方にあるパキスタンの首都イスラマバードの気温は6月に47℃を記録した。
　今日の農民は1万1千年前に農業が始まって以来どの世代の農民よりも高い気温に直面していると言えるかもしれない。アメリカやインドなど主な食糧生産国で気温が上昇するにつれ収穫高は減少している。この夏北半球で見られた史上最高または記録に次ぐ何週間にもおよぶ高温は、降雨量の少なさとあいまって多くの国々で不作をもたらし、2002年の世界穀物生産高は、予測消費高18億9500万トンを大きく下回る18億1300万トンにとどまるにいたった。
　フィリピンにある国際稲研究所の農作物生態学者は最近、気温と米の受精について、34℃で100％見られる受精が40℃でゼロに下がると発表した。米国農務省の科学者たちは他の穀物についても同様な気温と受精の関係を見出している。最適温度から1℃上昇すると穀物の収穫高が10%低下するというのが科学的な目安とされる。気温上昇を示すものの中でも特に注意を要するのは氷が溶けているという事実だ。科学者はロッキー山脈、アンデス、アルプス、ヒマラヤなど世界の全主要山脈で氷が溶けていると報告している。標準よりも５℃から10℃も気温が上昇した地域もあるアラスカでは当初の報告よりもかなり早い速度で融氷が進んでいる。
　雪に覆われたアフリカの山、キリマンジャロでは、雪と氷に覆われている面積が1900年から80％も減少した。オハイオ州立大学の氷河学者、ロニー・トンプソンはキリマンジャロの雪と氷が2020年までにすべて消えてしまうかもしれないと報告している。アメリカでは、ランドマークのひとつであるグレーシャー国立公園が「グレーシャー（氷河）」という名前の変更を余儀なくされるかもしれない。同公園の氷河はすでに半分以上消えてしまっているが、米国地理学調査は残りの氷河も30年以内に消えるだろうと予測している。
　科学者は、過去23年間に平均240万平方マイルあった北極海の氷面積がこの夏に200万平方マイルに減ったと発表した。氷の層が薄くなる現象はさらに急速に進んでいる。氷はすでに水中にあるために溶けたとしても海面上昇にはつながらない。しかし、地球に降り注ぐ太陽光線が雪や氷に当たると80％が反射して宇宙空間に戻されて残りの20％が熱に変換されるのに対し、太陽光線が水面に差し込んだ場合、20％が戻され80％が熱に変換され、その地域を暖めることになる。科学者たちはグリーンランドの大部分が北極海にあるため、水面から太陽の熱を吸収して起こる温暖化を懸念している。この夏グリーンランドでは、これまでの最高を9％も上回る67万8400平方キロメートルを超える氷原が溶けた。グリーンランドの氷床の厚さは場所によっては2.4キロメートルにも及ぶが、それがすべて溶けると海面は7メートル上昇する。北極海の氷に何が起こるか、また、北極海地方の気候にどのような影響が出るかは世界中が注目すべき懸念事項だ。
　すでに対応を始めた業界もある。山岳地方での雪の消失を心配し、気候の安定化に進展が見られないことに不満を募らせたアメリカのスキー場団体、全国スキー場協会は「キープ・ウィンター・クール（寒い冬を維持しよう）」というキャンペーンの実施を近々発表する予定だ。スキー場業界は、炭素排出を削減するためにリフトと人工降雪機の運転用に風力発電を採用する計画だ。農業や保険など他の業界でも気候の安定化が達成できない場合のコストが許容範囲を超えると炭素排出の迅速な削減に着手するかもしれない。
　地球の気候変動は深刻な事態であり、軽々しく扱われてはならない。気候変動が近い将来「手におえない」状況に陥る危険性があり、未来の世代は急激に上昇する気温、不作、酷暑、融氷、海面上昇に直面することになる。我々が気候の安定化に向けてすばやく行動を起こさなければ、子孫たちは我々を許しはしないだろう。

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