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Eco-Economy-Update 2002-2

出畜産物への需要増大で劣化する世界の草地

レスター・R・ブラウン

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 1月下旬、中国北西部で発生した砂塵嵐がチベット自治区の都、ラサを覆いつくした。ラサの空港は3日間閉鎖され、観光に影響が出た。このような砂塵嵐は今や珍しい現象ではない。中央アジアで発生する砂塵嵐や、アフリカのサハラ砂漠地帯で発生してしばしばカリブ海まで達する砂塵嵐は、世界の放牧地の砂漠化が進んでいることを示している。
 過放牧による損害が広がっているにも関わらず、人口増加を追うように世界の家畜頭数は増加の一途をたどっている。1950年に25億だった世界人口は2001年に61億に達し、同期間に世界のウシの頭数は7億2千万から15億3千万へと増加した。ヒツジとヤギの頭数は10億4千万から17億5千万へと増えている。
 ウシ、ヒツジ、ヤギの放牧で生計を立てている牧畜民は世界で1億8千万人。家畜頭数はおよそ33億に達する。草地にかかるプレッシャーは大きい。アフリカの大部分をはじめ中東、中央アジア、インド亜大陸北部、モンゴル、中国北部では、家畜の過剰放牧による草地の劣化が進んでいる。過放牧は放牧地の生産力を低下させ、やがて草地を破壊して砂漠化へとつながる。劣化した放牧地は世界で6億8千万ヘクタール、これはアメリカの耕地面積の5倍に及ぶ。
 放牧地の大半は乾燥や急勾配で耕作には適さない土地であり、世界の陸地面積の5分の1、耕作面積の2倍以上を占めている。このように広大な放牧地で生産力の鍵を握るのはウシやヒツジ、ヤギといった反芻動物だ。複雑な反芻消化機能が繊維質の草から肉、乳などの食品や、皮や羊毛などの素材を生産することを可能にしている。
 世界で生産される牛肉と羊肉の5分の4に相当する5200万トンは、放牧地で草を食むウシとヒツジによるものである。穀物の乏しいアフリカでは、ウシを2億3千万頭、ヒツジ 2 億4600万頭、ヤギ 1億7500万頭が放牧されている。アフリカ各国の経済の要とされることが多い家畜の頭数だが、現在の飼育頭数は牧養力を少なくとも半分以上も上回っている。アフリカ南部の9か国の草地について高まるプレッシャーを分析した調査は、土地の牧養力が減退していることを明らかにした。
 発展途上国の多くでは、牧草やその他の飼料作物などへの需要が持続可能な供給を上回っている。世界で最も多くのウシを擁するインドでは2000年の飼料推定需要は7億トン。一方、持続可能な供給量は5億4千万トンだった。ニューデリー発のレポートによると、ラジャスタンやカルナタカなど極めて深刻な土壌劣化がみられる州では、供給できる飼料は需要量の50〜80%前後にすぎず、ウシの多くは衰弱している。
 中国でも同じく困難な状況がみられる。土地の所有権や境界の柵がない中国北西部は広大な共同の放牧地となっている。1978年の経済改革以後、ヒツジやウシの頭数を制限する家族に奨励金を出すシステムが機能しておらず、家畜の頭数が急激に膨れ上がった。中国の擁するウシの頭数は1億3千万であり、同程度の牧養力を持つアメリカのウシの頭数は9800万だ。しかし、これ以上に大きな差はヒツジとヤギを合わせた頭数にある。アメリカの900万に対して、中国は2億9千万に達する。
 例えば、青海省東部、共和県の草地にはヒツジ 370万頭の牧養力があると推定されている。しかし、1998年末までに実際にはこの数をはるかに超える550万頭に達し、結果として急速に草地が劣化して、砂丘を多くひかえた砂漠が出現するに至った。
 中東では人口7100万のイランで、放牧地に対するプレッシャーの高まりがうかがえる。イランではウシ800万頭、ヒツジとヤギを合わせて810万頭が放牧されており、乳肉の他に特産の絨毯用の羊毛を産出している。人間の数よりもヒツジとヤギの数が多い土地、特に放牧地が牧養力の限度に近い土地では、現在の家畜の頭数は持続可能な数字ではないといえるだろう。
 過放牧が引き起こす土地の劣化は家畜の生産力の喪失という大きな経済的損失をもたらす。過放牧の影響は初めに土地の生産力低下というコストとして表れる。過放牧が続くと、植生が破壊され、土壌浸食につながり、いずれは不毛の荒地を後に残すことになる。1991年に実施した世界の乾燥地帯アセスメントで、国連は放牧地の劣化による家畜生産の損失は23億ドルを上回るものと推定している。
 アフリカにおける放牧地の生産力の年間損失は推定70億ドルで、これはエチオピアの国内総生産を超える数字である。アジアでは、この数字は80億ドルを超えている(こちらの表を参照)。この両地域の損失を合わせると、全世界の損失の3分の2を占める。
 世界の放牧地の劣化を阻止するのは容易ではない。家畜頭数の増加を抑える鍵は人口の増加を食い止めることだ。イランは過放牧や15年前に直面した人口に関連した問題の脅威をふまえ、年率4%であった人口増加率を2001年にはわずか1%まで低下させた。明確な意識を持つリーダーシップの可能性が明白に示された事例である。
 放牧地にかかるプレッシャーを軽減するもうひとつの鍵は、飼料としての作物残渣(わら、茎、葉など)利用の普及にある。利用されない作物残渣は燃料として、あるいは二毛作のために残渣破棄の必要から燃やされるにすぎない。インドでは作物残渣を利用して乳生産に取り組み、ウシに穀物を与えることなく1961年の2000万トンであった生産量を2001年には8000万トンへと向上させた。インドの農民が手作業で切り集めた草と作物残渣を牛舎で与えて達成した成功例だ。
 中国の作物残渣利用の可能性も大きい。ウシやヒツジにトウモロコシの茎や小麦、稲のわらを与える、というものだ。コメと小麦の世界最大の生産国として、また、トウモロコシの世界第2の生産国として、中国は年間5億トンのわら、トウモロコシの茎その他の作物残渣を作物と共に収穫していると推定されている。中国東中央の河北、山東、湖南、安徽など作物の主要生産地では家畜に作物残渣を与え、「ビーフベルト」が誕生した。これらの地域の牛肉の生産高は、内モンゴル自治区、青海、新彊など中国北西部の放牧地帯の牛肉生産高をはるかに上回っている。
 放牧地の改良は成功例が少ないが、シリアの国際乾地農業研究センター(ICARDA)で、過放牧が行われやせ衰えた放牧地の改良を目的とした低コストの有望な技術が開発されている。同研究所の科学者が開発したのは20センチ間隔で2列に土を軽く押圧する単純な装置で、土地の高低に沿って2列に押圧した溝に草の種をまき、雨水を貯留して植生を復元するというものだ。
 持続可能なレベルに家畜の頭数を安定させ、世界の劣化した放牧地を修復するには多大な努力を要する。これには多額のコストがかかるが、放牧地の砂漠化を止められなければ、いずれはウシやヒツジの頭数が減少し、結果としてもたらされる貧困が大規模な移住を余儀なくし、より大きなコストが生じるだろう。

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