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Eco-Economy-Update 2002-3

類人猿やサルが消えていく

レスター・R・ブラウン

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 類人猿、サル、キツネザルなどの霊長目に分類される動物種の絶滅はこの一世紀以上も特定されていなかったが、最近、複数の科学者が西アフリカサルの亜種の消滅を確認した。オナガザルの一種であるこのアカコロバスの消滅は、進化上の分類から我々に最も近い動物の消滅の前触れかもしれない。
 霊長目のおよそ240種のなかの19種は絶滅危惧1A類とされている。1996年には13種であった。この指定はいわば絶滅寸前で個体群および生息場所が急速に危機的状況を迎えている状態を示す。生存する個体数は数百、多くて数千という範囲にある。現在の消失が続くならば、この10年の間に数種は絶滅してしまうだろう。国際自然保護連合(IUCN)の2000年のレッドリストによれば、この19種は次のような内訳である。97%が消失してしまったブラジルの雨林に生息するサルが8種、インドネシアの類人猿2種とサル1種、ベトナムのサル3種、ケニアのサル1種、ペルーのサル1種、マダガスカルのキツネザル3種である。
 レッドリストで絶滅の脅威度がこれに次ぐのが絶滅危惧TB類であり、霊長目は46種がリストアップされている。1996年には29種であった。この46種も絶滅の可能性がかなり高く、数種は今後の20年で絶滅してしまうであろう。さらに51種は次のランクである絶滅危惧U類にリストアップされている。これらの51種にあっては個体群は先の46種より大きいが、今世紀中には消失してしまうであろう。これらの3つのランクを合わせると116種に達し、およそ240種の霊長目の半数に近い。
 最後の氷河期が1万年前に終わったとき、ヒヒはヒトの少なくとも2倍の個体数であった。小型で数の多い種も含めて、霊長目のヒト以外の種を全て合わせたら、その数はヒトの数を圧倒したであろう。しかし、農業はヒトが急速に増大する支えとなり、およそ2000年前にヒトは3億を数えるまでになり、霊長目にあって最大の種となった。1930年にヒトは20億になり、霊長目の他の種をすべて合計した数を上回ったようだ。
 今日、61億に達しなおも増加する人類は、自らと祖先を同じくする霊長目の種の生存を脅かしている。しかも、その脅威は、ゲノムが98%まで同じであるチンパンジーやボノボにまで及んでいる。その他の類人猿もゲノムのみならず行動も人類に近いものが観察される。しかしながら人類の新生児は毎日30万人に達し、これは大型類人猿の個体数の合計を上回っているのだが、類人猿たちは人類のこうした行動を阻止することはないだろう。
 人類はいまや地球上のあらゆる所に生存しているが、霊長目の他の種の生息地域は極めて限られている。ブラジル、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、インドネシア、マダガスカルである。生息地の消失は、絶滅の危惧されされている霊長目の90%にとって脅威となっており、数カ国に集中してしまうことは脆弱さをいっそう強めることになる。インドネシアでは、森林と野生動物が、汚職と政情不安によって加速される伐採の強い影響を被っている。この10年間、森林伐採による森林消失の速さは2倍になり、その面積は毎年200万ヘクタール近くになる。こうした2倍という変化に伴い、オランウータンの数は2分の1に減ってしまった。2005年までに、スマトラの低地林は全て消失し、もっとも危機的状況にあるスマトラ・オランウータンの絶滅に直面することになるだろう。ボルネオ・オランウータンも伐採、密猟、1997年の大火災の大きな影響を被っており、現在の傾向が続くなら2010年以降も生存している可能性は少ない。
 コンゴは外国軍と暴徒による内戦及び占領という事態に見舞われた。人類に最も近いボノボはこのコンゴに固有の種である。この地域の他の霊長目と同様に繁殖が遅く、ボノボは急速に減っている。1980年には10万頭近くを数えていたが、今日では1万頭を下回っている。
 内戦は数百万という難民を生み出すものだが、それは野生動物の肉(ブッシュミート)への需要を増大させる。コンゴの経済開発は遅々として進まなかったので、森林伐採のテンポも遅かった。そのためアフリカに残された熱帯雨林の半分をこの国が擁している。政情が安定すれば、森林伐採のテンポはたちまち数倍の速さになり、大型の類人猿の最初の絶滅のケースにつながるかもしれない。
 ゴリラの個体数は危険な水準にまで減っているが、その原因の大半は肉を目的とする密猟にある。ルワンダ、コンゴ民主共和国、ウガンダにまたがる地域に325頭のマウンテン・ゴリラが生息している。もっとも少ないのはクロスリバー・ゴリラでカメルーンとナイジェリアの国境沿いに150〜200頭が散らばるように生息している。
 西アフリカおよび中央アフリカの複数の地域でブッシュミートの取引きが行われており、森林に生息するアンテロ−プ、ブタ、霊長目の動物を中心にした取引額は年間10億ドルに相当し、森林消失よりも大きな脅威となっている。社会的混乱が従来の経済活動を荒廃させてしまった地域にあっては、平均的世帯収入は年間100ドル以下であるが、密猟は300〜1000ドルの収入をもたらしている。伐採や採鉱のために企業が森林を分断するかたちで道路を開いてしまい、それが狩猟を容易にし、またこうした企業活動に従事する労働省がブッシュミートへの需要を拡大している。
 野生生物、とりわけ繁殖のおそい大型の類人猿にとって狩猟は絶滅への脅威であり、乱獲は密猟者にも長期的にみれば無益なものである。コンゴ盆地では野生動物の肉の消費量は年間100万トンを上回っている。こうした狩猟は森林に生息する動物をまさに根絶やしにしている。
 地方の人々は長らく、野生動物と森林の生産物に頼って生きてきた。タンパク質の60%はブッシュミートによるものであった。しかし、それが都市へ流れるようになってしまって、そこで消費される構造になってしまった。都市住民は中央アフリカの森林地域の3000万という住民のほぼ半数だが、その彼らが消滅しつつある野生生物に依存しつつある。都市が大きくなるにしたがいブッシュミートへの需要が拡大しており、20年もたたぬうちにアフリカの野生の類人猿を絶滅させてしまうのではないだろうか。
 ヒト以外の霊長目を絶滅から守るためには、不法な伐採や密猟に歯止めをかける必要がある。こうした伐採は生息地を広範にわたって破壊する。ブッシュミートは野生生物保護区域での密猟によるものであり、国際取引はワシントン条約に違反している。しかしながら、規制力が現実には弱いため違法行為は続く。
 野生生物が良い状態で広範に保たれている区域は、新たなタイプの自然保護区にすることができる。そこでは野生生物のためにも原住民のためにもなる運営方法が実地される。エコツーリズムはヒト以外の霊長目の保全にも役立てることができるし、猟をしていた人々も殺してしまった野生生物よりも生きている野生生物の方が価値が高いことがわかる。こうした保護区での仕事に従事することで収入を得ることができる。
 生物学、心理学、社会といった側面から我々自身をより良く理解することは、ヒトに最も近い霊長目の動物たちを理解することにかかっている。もし、我々がこうした動物を絶滅に追いこんでしまうなら、ヒトは自分自身を完全に理解する術を失ってしまうことになる。

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