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Eco-Economy-Update 2002-6

ニューヨークは世界のゴミの首都?

レスター・R・ブラウン

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 ニューヨーク市で1日に1万1000トン発生しているゴミの処理問題が、ブルームバーグ市長の予算案によって再浮上した。予算案には、経費削減に伴う金属、ガラス、プラスチックのリサイクル凍結が盛り込まれている。実施されれば、本来減らすべきゴミの量はむしろ増加することになりそうだ。
 ニューヨーク市のゴミ問題には3つの側面がある。経済的問題、環境への取り組み、そして広報活動に及ぶ潜在的悪影響だ。地元のゴミ処分場であるフレッシュキル埋立地が2001年3月に閉鎖されて以来、市のゴミは遠くニュー・ジャージー州やペンシルヴェニア州、ヴァージニア州の複数の埋立地で処分されているが、なかには480キロメートル以上離れた廃棄場もある。
 ニューヨークのゴミを遠い埋立地まで運搬するには、20トントレーラーにして1日550台が必要となる。トレーラーはおよそ14.5キロメートルに達するほどの長い列をなして交通を渋滞させ、大気を汚染し、炭素排出量を増加させる。フレッシュキル埋立地の閉鎖の責任者であったロタ副市長は毎日繰り返されるこの光景を見て、市のゴミ処理業務は今や「日常的な軍事作戦のよう」だと述べた。
 フレッシュキル埋立地にスペースがなくなってくると、速やかにゴミを減らすのではなく単に捨て場を変えるという方向で対策が進められた。財政難に苦しむ他州の地方自治体はニューヨークのゴミを「有料」で引き取るのにやぶさかではない。それを思いもかけぬ好機と考える向きもある。しかし、州政府にとってはあまり魅力的な措置ではない。増大する道路維持管理コストの負担に加え、交通渋滞、騒音、大気汚染の深刻化、近隣の自治体からの苦情にも対応しなければならないからだ。
 ニューヨークのゴミ捨て場と化していたヴァージニア州のギルモア知事は、2001年に当時のジュリアーニ市長に宛てて次のような苦情を書き送っている。「ニューヨークが直面している問題は理解していますが、ワシントン、ジェファソン、そしてマディソンを生んだヴァージニア州は、ニューヨークのゴミ捨て場になるつもりはありません。」
 2002年の4月初めには、ワーナー新州知事がヴァージニア州で処理されるすべての固形廃棄物に対して1トン当たり5ドルの課税を提案した。ヴァージニア州ではこれにより年間7600万ドルのキャッシュフローが生み出される見込みだが、一方のニューヨークの財政赤字は縮小しないだろう。
 ペンシルヴェニア州議会は、他州のゴミの引き取りを規制する法案を審議している。近隣の州では埋立地の容量が不足してきており、今後ニューヨークのゴミの受け入れ先は徐々に減少するだろう。その結果、ゴミ処理のコストは現在よりはるかに高くなる。
 ゴミの埋め立てには土地が必要だ。4万トンのゴミが廃棄されるごとに少なくとも約4000平方メートルあまりの土地が事実上失われる。有害の可能性がある廃棄物が処分された埋立地は住宅地から離す必要があるため、埋立地周辺の広大な土地もまた失われる。
 ブルームバーグ市長になってから、ゴミ問題の解決策として焼却処理が提案された。しかし、1日1万1000トンのゴミの焼却は大気汚染を進行させ、すでに病んでいるニューヨークの大気をいっそう有害なものにするだけだ。遠隔地へのゴミの搬入と同様、焼却処理も対症療法のひとつにすぎない。ニューヨークのゴミの山を減らすには、その原因を取り除かなければならない。
 ニューヨークで発生するゴミの量は、より根本的な問題――使い捨て経済の世界的発展――を反映している。利便性や政策的に過小に設定されたエネルギーコストを売り物に次々と生み出される使い捨て製品が、われわれが出すゴミの大部分を占めているのだ。(エコ・エコノミー第6章参照)
 普段、何気なく利用している使い捨て製品だが、改めて数え上げてみるとその数は実に多い。ハンカチの代わりにティッシュペーパー、ハンドタオルの代わりに使い捨てペーパータオル、布のテーブルナプキンの代わりに使い捨ての紙ナプキン、再利用可能な飲料容器の代わりに使い捨ての飲料容器が使われている。使い捨て製品を持ち帰るための買い物袋自体が使い捨て用として生産され、ゴミになっているのは矛盾の極みではなかろうか。本来、スーパーのレジでは「紙袋にしますか?ビニール袋にしますか?」ではなく「布の買い物袋をお持ちですか?」と尋ねるべきなのだ。
 われわれは今、使い捨て経済からゴミ減量・再使用・リサイクル経済に目を向けなければならない。使い捨て経済に伴うこれ以上の汚染、エネルギー消費、鉱業による環境破壊、森林伐採は地球の限界を超えている。ニューヨークのような都市が第一に取り組むべきは、ゴミ処理ではなくゴミ減量のための対策だ。
 ニューヨークは自分のところから出るゴミのたった18%しかリサイクルしていない。ロサンゼルスのリサイクル率は44%、シカゴは47%、シアトルとミネアポリスはいずれも60%に近い。しかし、これでもまだゴミリサイクルの可能性を最大限に引き出しているとはいえない。
 毎日発生するゴミの山を小さくする方法はたくさんある。ワンウェイ容器の使用を禁止してしまうこともそのひとつで、すでにデンマークやフィンランドが実施している。デンマークでは、ソフトドリンクのワンウェイ容器は1977年、ビールのワンウェイ容器は1981年に禁止された。もっと近いところではカナダのプリンスエドワードアイランド州がワンウェイ容器に対する同様の禁止措置をとっている。
 飲料容器の再利用には別の利点もある。再使用可能な容器は、飲料製品を運んできたまさにそのトラックで折り返し製造元に搬送できるので、ゴミはもちろん交通渋滞やエネルギー消費、大気汚染も軽減される。
 われわれは、事実上あらゆる種類のゴミをリサイクルする技術をもっている。例えば、現在ドイツの古紙パルプ利用率は72%、ガラス、アルミニウム、プラスチックの潜在的リサイクル率はこれをはるかに上回る。
 庭ゴミ、家庭の生ゴミ、スーパーの食品廃棄物などの有機性廃棄物をコンポスト化することで、ゴミの養分もリサイクル可能だ。農作物によって失われる土壌中のリンとカリウムを補うために、世界各地で毎年1億3900万トンのリン鉱石と2000万トンのカリが採掘されている。都市ゴミをコンポスト化して養分を土に戻せば、養分の消費や鉱業による環境破壊をかなり軽減できる。
 折りからの財政難を考慮すると、すべての使い捨て製品に課税することで結果的にゴミ減量を図るという方法もある。使い捨て製品を利用する人がそのゴミ処理のコストを直接負担する、事実上のゴミ処理税だ。これにより歳入が増加すると同時にゴミ処理にかかる歳出は減少し、市の財政赤字は縮小に向かうだろう。
 経済的メリット、環境保護、そして「ニューヨークは世界のゴミの首都」というイメージによって市民への呼びかけが無に帰するという事態の回避、と三拍子そろった解決法はいくらでもある。ニューヨークのゴミ問題に奇跡をもたらすのは、対症療法ではなく根本療法なのだ。

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