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Eco-Economy-Update 2002-8

飛躍を続ける太陽電池の売上

バーニー・ロバーツ

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 昨年、世界の太陽電池生産は2000年を37%上回る39万5000KWに急増した。年間成長率はすでに新設の発電所レベルに達しており、コストの低下に伴って今後も増加する見込み。太陽電池(PV)の累計発電容量は、現在184万KWを超えている。
 2001年は、シャープ、BPソーラー、京セラ、シーメンス・ソーラー、アストロパワーといったPVメーカー上位5社が世界生産の64%を占めた。日本のメーカーが世界シェアの43%を獲得したのは、PVの購入設置を助成する政府の施策効果だ。送電網に接続した(連系型)住宅用ソーラーシステムの設置費用を50%補助する住宅用太陽光発電システムモニター等事業が1994年度に始まった。1997年度より住宅用太陽光発電導入基盤整備事業に移行して、補助率としては実質的にほぼ3分の1となった。2001年度、日本政府は住宅向けの補助金以外にも研究開発、実証プログラム、市場刺激策に約235億円を投じ、PV産業の成長を支えた。
 日本とは対照的に、アメリカ政府は2000年のソーラー計画にわずか6000万ドルしか投入していない。2001年の世界シェアは24%となり、25%の欧州連合(EU)に抜かれた。政府による再生可能エネルギーの取り組みは、アメリカよりEUのほうがすすんでいる。2000年、ドイツでは再生可能エネルギーを利用した発電の支援策として、ソーラーシステム購入ための有利な融資条件や、余剰電力を送電網に戻す(ネットメータリング)際の買電保証価格を定めた「再生可能エネルギー法」が施行された。その結果、ドイツのPV産業はヨーロッパ首位の座を獲得し、設置容量は2001年の11万3000 KWから2004年には43万8000 KWに増加する見通しだ。
 政府の支援策によって、日本では住宅向け連系型PVシステムの設置が10万KWにのぼり、2001年度の販売高に大きく貢献した。ドイツでは連系型PVシステムの設置が7万5000 KWに達した。アメリカのPV設置は、連系型と過疎地住宅用の送電網に接続していないタイプ(独立型)を合わせて3万2000KW、インドは独立型のみで1万8000KW。発展途上国でも独立型PVの設置は50〜60か国の合計で12万〜13万KWとなった。
 日本とアメリカはいずれもPVの純輸出国で、アメリカは総生産のほぼ3分の2、日本は42%を輸出した。
 連系型PVのコストは依然として風力発電や石炭火力発電より割高だが、需要増に伴ってPV産業が成長した現在は、結晶系がおよそ3.5ドル/W、薄膜アモルファスが約2ドル/Wと、大規模生産によって急速に下がってきている。薄膜アモルファスは効率面で劣るが、屋根材型として建材との一体化が可能。専門家は、1976年から2000年にかけては累積生産量が倍増するごとに価格が20%低下したと指摘、今後は価格低下に拍車がかかるという見方もある。
 欧州PV工業会は、経済協力開発機構(OECD)の加盟30か国においては、2010年までに連系型の屋根型ソーラーシステムが消費電力の16%を占める可能性があるとしている。2005年前後までにコストが予測どおり3ドル/Wまで下がれば、住宅用屋根型ソーラーシステムの市場は拡大するだろう。住宅ローンでPVシステムの融資が受けられる場合や、ネットメータリングが義務づけられている地域では、需要は2001年の世界生産の100倍に相当する4000万KWに達する可能性もある。
 現在、発展途上国の農村部を中心に世界中で100万以上の世帯がPVを利用している。送電網にカバーされていない17億の人々にとって、PVは通常もっとも安い電源となる。過疎地では、大きな送電網で少量の電気を送ることにきわめて大きなコストがかかるので、PVの利用が多くなるだろう。少額の資金を無担保で貧しい人々に貸し付けるというマイクロクレジットの制度があれば、PVシステムの毎月の支払額はおおむねロウソク代やランプの灯油代くらいにおさまる。返済はおよそ2〜4年で終わり、その後はシステムの寿命が尽きるまで電気代はかからない。
 PVシステムによる電灯照明は質が高いため、教育機会はより充実する。情報にアクセスできるようになり、日没後の生産性は向上する。PVへの移行は衛生面でも恩恵をもたらす。ワクチンなどの必需品を冷凍保存できるようになれば、公衆衛生の改善に役立つ。過疎地では、多くの場合PVに切り替えることで屋内の空気がより清浄になる。灯油ランプのかわりに40WのPVモジュールを使えば炭素排出量を1年間で最大106kg減少させることができる。
 PVの設置効果は、発展途上国だけでなく先進国でも期待できる。条件に合うすべての屋根に最新型のPVシステムを取り付ければ、曇りの日が多いイギリスですら全国の年間消費量を上回る電気が得られる。その結果、発電による温室効果ガスの排出はなくなり、年間2億トン近くの二酸化炭素の排出を回避できる。
 PVの需要拡大につながる新しいタイプの住宅としてゼロエネルギー住宅がある。建材にソーラーパネルを組み込んだデザインで、エネルギー効率がきわめて高い。アメリカ南東部・ジョージア州ウッドストックにあってユリウス・ポストンの経営する革新的な建設会社サーティファイド・リビングでは、エネルギー消費量が一般的な従来タイプの半分という住宅を建築している。さらに、建材一体型のソーラーパネルを使用した2種類のゼロエネルギー住宅の試作品を建築している。将来的に普及してゆけば、大気汚染の原因となる化石燃料発電から脱却できる画期的な住宅である。
 力強く成長しつづけるPV市場は、発展途上国と先進国の双方に再生可能な、しかも汚染とは無縁のエネルギー源を供給する大きな原動力となるだろう。PVの今後の成長をゆるぎないものにするには、以下のような施策が考えられる。
(1) 市場に歪みをもたらす化石燃料関連の補助金撤廃。これによって、PVはより公正な条件のもとで競争できる。
(2) アメリカ国内はもとより、世界各国へのネットメータリング法の普及。これによって、住宅用ソーラーシステムで発電した余剰電力の購入を電力会社に義務づけることにより、PV利用の経済性を高める。
(3) 一般的融資やマイクロクレジット制度の確立。これは、PV利用を発展途上国ですみやかに普及させるために不可欠である。
 PVメーカーは、市場が将来著しく拡大するという感触をもちはじめている。世界最大のPVメーカーである日本のシャープは、2002年に生産能力を9万4000KWから20万KWにほぼ倍増する計画だ。業界全体の生産量も今後数年間は年間40〜50%のペースで増加する見込みである。ソーラー時代がますます近くなるだろう。

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