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Eco-Economy-Update 2003-3

砂漠が前進し、文明は後退する

ジャネット・ラーセン

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 クウェートからバグダッドに北上する連合軍が世界最古の文明であるメソポタミア文明の遺跡を通過している。今から5000年あまり前、チグリス川とユーフラテス川に挟まれた「肥沃な三日月地帯」の一角に古代シュメール人が住んでいた。彼らはそこで高度な灌漑システムをつくり、最古の都市を築き、くさび形文字や車輪を発明した。
 しかしながらイラク情勢のマスコミ報道で見るかぎり、現在の肥沃な三日月地帯はまったく「肥沃」ではなさそうだ。チグリス、ユーフラテス両川の氾濫原に激しい風が吹きつけると息もできないほどの砂嵐が起こり、細かい砂塵(さじん)が辺り一帯を覆う。砂嵐は人間の動きを妨げ、視界を奪い、健康を脅かす。かつて肥沃だった土地は、今や砂漠と化している。
 こうした状況は、残念ながら珍しくはない。62億という世界人口の圧力により、すべての大陸で生産力の高い土地が徐々に砂漠化している。条件の悪い土地を耕作することで土壌浸食が発生し、放牧地はおよそ30億頭のウシ、ヒツジ、ヤギによって持続可能な限界を超える過放牧で酷使されている。概数的に見れば、砂漠化は地球の陸地の3分の1にまで及び、110か国で10億人以上に影響を与えている。
 砂漠は定期的に拡大・縮小を繰り返すものだが、人間が引き起こす砂漠化の加速は農村経済を急速に蝕んでいる。毎年数百万haの耕地および放牧地が砂漠化で失われる。砂漠化の被害をもっとも受けやすいのはアフリカ(陸地のほぼ半分が危機にさらされている)だが、衛星画像や現地レポートを見れば砂漠化が世界の乾燥地域にくまなく広がっていることがわかる。
 アフガニスタンとイランにまたがるシスタン盆地では、風に飛ばされた砂塵で100以上の村が埋まった。わずか5年前には少なくとも100万頭のウシ、ヒツジ、ヤギを養っていたかつてのオアシスは、今ではほとんど不毛の地だ。過放牧の牧草地が砂漠になって数十万頭の家畜が死に、村人は土地を放棄した。
 これより北方、アフガニスタンのアムダリア川流域では植被の破壊で干ばつが深刻化した結果、長さ約300km、幅30kmの砂丘帯が形成された。これらの砂丘は1日1m移動し、森林が消えて無防備になった道路をふさぎ、村をのみこんでいる。
 カザフスタンでは、重税を課された農地が生産性の低下にともなって放棄されつつある。1950年代に始まった旧ソ連の自然大改造計画(※1)で条件の悪い土地が過耕作された結果、土壌の風食被害が広がった。1985年以降、カザフスタンでは2500万haの穀物作付面積のうち半分が放棄された。中国では砂漠化が数百万人の生活を脅かし、年間約65億ドルの直接経済損失を計上している。その損失には農業生産性の低下にかかるコストも含まれる。北京のアメリカ大使館がまとめた報告書『砂漠の拡大(別々の砂漠が拡大して1つになっていく)』によると、中国北西部では長引く干ばつや過放牧、野生植物の乱獲が原因で国内第3、第4の砂漠の辺縁部が流動化している。500万haの巴丹吉林(バダインジャラン)砂漠で不安定化した砂丘が強風に押しやられて南に移動し、300万ha(740万エーカー)の騰格里(テンゲル)砂漠へ向かって『砂漠の拡大』の基礎づくりをしている。
 新疆ウイグル自治区も同じような状況にある。上流の過剰なダム建設や農業用水の取水で塔里木(タリム)川が渇水した。その結果、塔克拉瑪干(タクラマカン)砂漠と庫魯克塔格(クルクターグ)砂漠に対する防壁となっていた大きなポプラ林などの植生が枯死した。この2つの砂漠も互いの距離を着実に縮めており、ひとつにつながる可能性がある。
 これらの問題は個々に孤立した存在ではないし、「地域」という範囲におさまりきるものでもない。中国やモンゴルで発生した巨大な砂嵐がはるか東のアメリカ本土まで達したこともある。日本と韓国は中国と協力して、劣化した土地の復旧作業を促進している。というのは中国の土地劣化により砂嵐が誘発され、その結果、息をつまらせる黄砂が海を越えて日・韓両国にまともに飛来するからだ。
 砂漠化対処条約≪正式名称:「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための国際連合条約」≫事務局の予測によると、砂漠化を阻止・改善する協調努力がなされないかぎり、アジアは耕作可能な土地の3分の1、南米は5分の1を失う可能性がある。アフリカでは3分の2が失われるおそれがあるが、そうなれば貧困と食料不安が増大し、環境難民が急増するだろう。
 アフリカでもっとも人口の多いナイジェリアは、サハラ砂漠の拡大によって毎年およそ35万haの土地を失っている。過剰な人口圧力、粗雑な土地管理、過放牧および干ばつの複合作用による砂漠化で、北部諸州のうち10州の土地の半分が影響を受けた。北部人口の合計は2900万人。砂漠が広がるにつれ、残された豊かな土地をめぐる農民と牧畜民の争いが激しくなっている。
 ケニアでは、土地の80%以上――3200万の人口のほぼ3分の1と2800万頭のウシ・ヒツジ・ヤギの半数を支えている――が砂漠化の危機にさらされている。かつてない人口増加が不適切な土地利用を招き、その結果、砂漠化が加速した。人間も家畜も条件の悪い土地に追いやられる一方、農家が休耕期間を短縮したことで土地劣化に拍車がかかった。
 砂漠化対策は、各国の気候条件や社会状況によって異なる。砂漠を後退させ、なおざりの土地管理と貧困の循環を断ち切る取り組みは、1日1ドル未満で生活する10億人の収入を増やすことにかかっている。また家族人数を減らして教育に力を注ぐことも、土地への圧力緩和とスチュワードシップの強化に重要な役割を果たす。
 砂漠化が特に懸念されるのは砂漠の周縁地域だが、植被を完全に失ったすべての土地もまた危機にさらされている。砂漠化しやすい土地の植生を回復すれば土壌が安定し、風に飛ばされなくなる。この点を認識した中国政府は、砂漠の拡大を食い止めるために、世界最大規模の植林プロジェクトを開始した。
 土壌の風食および水食は環境保全型農業の実践で防げる。不耕起栽培は土壌の有機物および水分を維持する農法で、集約的栽培に取って代わる可能性がある。環境保全型農業はアメリカ・南米諸国を中心に世界の約6000万haの農地で行われているが、アフリカや中東の乾燥地域でも土壌浸食を軽減し、農業生産を高める多大な潜在能力を秘めている。
 草地保全のためには家畜の管理を徹底する必要がある。中国の草地には1億6100万頭のヤギ、1億3700万頭のヒツジ、1億2800万頭のウシおよび水牛の採食圧・踏圧がかかっており、一部の地方政府はヤギの放牧を禁止した。農場内で刈草を食べさせて飼育するための補助金が支払われる場合もある。
 代替エネルギーもまた土地劣化予防の一助となる。発展途上国では約20億人が調理燃料を木材と作物残渣に依存しているが、ソーラークッカーなどの簡単な装置があれば土地への圧力を緩和できる。風力タービンはクリーンエネルギーを供給すると同時に防風機能も果たす。
 国連環境プログラム(UNEP)は、砂漠化への取り組み不足のために1978〜91年にかけて世界で約3000〜6000億ドルの逸失利益が発生したと推測しているが、これは控えめな数字だ。砂漠化を抑制し、劣化した土地を復旧することから生じる利益は、砂漠の拡大を放置するコストの少なくとも2.5倍を超えると推測する分析結果も出ている。生産性の高い土地面積が人間の需要増大に反比例して縮小する世界では、生態系の安定も経済発展もおぼつかない。
※1 http://wwf3kyo.com/plaza/article/seminar/20021003/参照

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