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Eco-Economy-Update 2004-10

世界の沿岸水域でデッドゾーンが増加

ジャネット・ラーセン

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 夏になるとメキシコ湾岸には魚や海洋生物がいない巨大「デッドゾーン」が毎年出現する。ここ数十年でこの区域はどんどん大きくなり、今では2万1千平方キロメートルというニュージャージー州よりも広い面積にまで達している。似たような状況は小規模だがチェサピーク湾にもみられ、1970年代から生命体のない広大な地帯の出現は年中行事となり、湾の40パーセントを占めることもある。

 世界中に146の酸欠海域と呼ばれるこうしたデッドゾーンがあり、海中に溶存する酸素濃度の水準が非常に低いので海洋生物は生存できない。1960年代以降、酸欠海域の数は10年ごとに倍増している。そのうち多くは季節限定の現象だが、一年中酸素濃度が低いところもある。

 沿岸地域で酸欠海域が発生し、魚やその他の生命体が死ぬのはなぜだろう?様々な出来事が複雑に絡み合ったせいだが、多くの場合、増加する世界人口に見合うだけの食料を栽培しようとする農場に端を発している。化学肥料は作物の成長を促すが、河川や海へ流出されると肥料に含まれた過剰に濃縮された窒素やリンに刺激されて、植物性プランクトンや藻が異常発生するのである。植物性プランクトンは死ぬと水底に沈み腐敗して分解するが、その過程で酸素を使い尽くすので低酸素地帯ができるのだ。

 ほとんどの海洋生物は低酸素地帯で生存できない。泳ぐことができる魚やその他の生物は酸欠海域から離れればよいが、それでも完全に安全ではない。移動により捕食者に捕まりやすくなったり、他の危険にも遭う。一方、甲殻類などは低酸素の水中では移動するまもなく窒息してしまう。

 酸欠海域の規模は、湾岸や河口の小さい区域から7万平方キロメートルにもわたる広大な海底区域まで様々だ。水温が温暖なところで最も発生しやすく、アメリカの東海岸沖やヨーロッパの海に集中しているが、中国、日本、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドの海岸沖でもこの現象は見られる。
 世界一大きな酸欠海域はバルト海にある。農場からの流水、化石燃料燃焼による窒素の堆積、そして人排泄物の放流などの要因が組み合わさり、水中の養分が増えすぎたのだ。アドリア海北岸、黄海、タイ湾の低酸素区域も似たような原因で発生している。沖合養殖も沿岸水域で栄養分が堆積される主要原因の一つである。

 米国の沿岸水域には43の酸欠海域がある。その中でもメキシコ湾のものは現在世界で2番目に大きく、米国年間水揚量のうち18パーセントを占めている非常に豊富な漁場に影響を及ぼしている。湾岸の漁師は魚やエビを求めて、低酸素区域から外へ漁場を求めなければならなくなった。メキシコ湾岸で取れる魚介類で最も高値のブラウン・シュリンプの水揚量は、1990年最高値を記録して以来、低酸素化が進んだ年にあわせて落ち込んでいる。

 ミシシッピ川から流出された化学肥料が、メキシコ湾酸欠海域の主な原因とみなされている。最近は年間1千6百万トンの窒素がミシシッピ川流域から流出しているが、この量は1955年から1970年の平均値の3倍以上である。ミシシッピ川は広大な米国土の41パーセントを流れているが、窒素は主に中西部の農場で使われた肥料が原因である。

 全世界における化学肥料の使用量は過去25年間で10倍以上増加し、1億4千5百万トンにいたり(earth-policy.orgのデータを参照)、同時に世界中で酸欠海域の数も増えた。自然環境の有効窒素が毎年増加しているだけでなく、湿地帯は干からび川岸区域の開発が進んで、自然が窒素をろ過する力は衰えてきた。過去100年間で世界の湿地帯の半分が消滅してしまった。

 米国では、オハイオ、インディアナ、イリノイ、アイオワ州などの主要農業地域で、湿地帯の80パーセントが枯渇している。ルイジアナ、ミシシッピ、アーカンソー、テネシー州では50パーセントの湿地帯が消滅した。そのせいで、農場からの肥料がミシシッピ川からメキシコ湾岸へさらに流出しやすくなっている。

 低酸素区域の場所によってその発生原因はさまざまなため、絶対的な解決策はない。だが、排出された栄養素による水質汚染を減らし、生態系機能を回復することが解決の鍵であることはどこも同じである。幸いにも成功例がいくつかある。デンマークとスエーデンにはさまれたカテガット海峡は1970年代以降、低酸素状態や、プランクトンの異常発生、そして魚の大量死に悩まされていた。1986年、ノルウェーのロブスター漁業が破綻し、デンマーク政府はこの問題への対策を立てざるを得なくなり、主に廃水処理場や産業による排水を減らすことによって、水中のリン含有量は80パーセント減った。また、沿岸湿地帯を再生し農場での肥料使用量を削減したので、プランクトンの増殖に歯止めがかかり水中の酸素量が増えた。

 黒海の北西部陸棚にある酸欠海域は、1980年代一番大きいときは2万平方キロメートルあった。しかし以降、多分にその地域で中央集権化されていた経済が崩壊したお陰で、ドナウ川の分水地点でリンの使用は60パーセント減り、窒素は半減し、また黒海へつながるその他河川流域でも同様の減少が見られる。その結果酸欠海域は縮小し、1996年には過去23年間で初めて消滅した。農場の肥料使用量を大幅に減らしたが、収穫量はそれほど減っていないので、以前は肥料を使いすぎていたことが明らかになった。

 黒海の酸欠海域の主要原因はリンだったようだが、化石燃料燃焼などの大気汚染で発生する窒素が、北海やバルト海の根本原因らしい。効率向上技術により燃料消費を減らし、資源保護を進めて再生可能な燃料を使うことで、この問題は解決できるはずだ。

 メキシコ湾では農場からの窒素流出を減らせば、酸欠海域を縮小できる。作物の成長に本当に必要なだけの肥料を使えば、海へ流出される余剰分も減るはずだ。耕作地を保護して侵食を防ぎ、輪作を行い、またそれと同時に湿地帯を回復し保護するのも一策である。

 アメリカ農地トラスト(American Farmland Trust)の栄養素管理最適化実践保証(Nutrient Best Management Practices Endorsement)などの画期的なプログラムによって、習慣化している肥料の過剰使用を減らす試みが行われている。このプログラムでは、農場がアドバイスに従い肥料の使用量を減らせば、穀物生産量が不足した場合経済援助を受けられる。こうして農家では肥料購入費を削減でき、減作時の補償もある。米国でのテストプログラムの結果によると、使用される肥料の量は4分の1減っている。

 入念に目標を定め問題に取り組めばすれば、たった1年で酸欠海域を縮小できる場合もある。だが、陸地に囲まれていて栄養素の代謝回転が遅いバルト海などの低酸素地帯では、もっと時間がかかるかもしれないので、早急に着手する必要がある。栄養素による水質汚染の程度と気候条件によって、当面酸欠海域の大きさは増減するが、その結果死んでしまった魚を取り戻すのはそう容易なことではない。

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翻訳提供/禁無断転載
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