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2004-11
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Eco-Economy-Update 2004-11
石油依存症を抜け出す最短距離
-ハイブリッド車と風力発電で
成功間違いなし
レスター・R・ブラウン
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石油価格が1バレル当り50ドルを超え、その上中東での政情不安が高まり、世界の石油経済が後退気味の現在、我々は新たなエネルギー戦略を必要としている。運良く、2つの最新テクノロジーによる新たな戦略が浮上してきた。
ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッドエンジンと改良設計された風力タービンにより、我々は輸入石油への依存症から抜け出せそうだ。この10年の間にアメリカの全車両を、トヨタのプリウスくらい燃費の良いハイブリッド車に替えれば、全米のガソリンの使用量は現在の半分に減らす事が出来るだろう。この方法なら、
車の台数を減らす必要もなく、運転する距離を減らす必要もない。ただ、効率を上げるだけなのだ。
現在市場には、ハイブリッド車が3モデル出回っている。トヨタのプリウス、ホンダのインサイト、そしてホンダのシビックのハイブリッドモデルである。中型車のプリウスは、自動車技術の最先端を行き、市街地と高速道路での平均走行1ガロン当り55マイルという驚きの高燃費だ。購入希望者が6ヶ月待ちを辞さないのもうなずける。
フォードは最近、エスケープのハイブリッドSUVモデルを発売し始めた。ホンダも人気のアコード・セダンのハイブリッド車を近々に発表する予定である。ゼネラルモーターズは、2006年のサターン・VUEを皮切りに、シボレー・タホ、シボレー・マリブなどに順次ハイブリッドモデルを展開すると発表した。その上同社は、シアトル市に235台のハイブリッドバスを供給し、その結果、同市の燃料の60パーセントを削減できると見込んでいる。さらに、フィラデルフィア、ヒューストン、ポートランドなどでもハイブリッドバスが運行される予定で、ハイブリッドエンジンが定着しつつある。
ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車が市場に出回っている今、次の段階である風力発電を動力とする自動車へ進むお膳立ては整った。ハイブリッド車にプラグイン機能とバッテリーを追加し、電力貯蔵量を増やすことが出来れば、電力だけで通勤、買い物、その他近所への外出など短距離の用事は電力で済ますことが出来、ガソリンは特別な場合の長距離旅行などで使用するだけとなる。ハイブリッド車を使用することで削減できる50パーセントにこれでさらに20パーセントが追加され、総計70パーセントのガソリン使用量を減らすことが出来るようになる。
プラグイン機能により、広大な、まだほとんど手付かずの風力資源の利用が可能になる。
1991年米国エネルギー省は、国家風力資源目録(National Wind Resource Inventory)を発表し、アメリカ50州のうちカンザス、ノースダコタ、テキサスの3州においては、国家のエネルギー需要を満たすのに足りる風力があると指摘した。風力発電による電力はほんのわずかだという見方が大部分だったので、このニュースに驚いた人も多かった。
今にして思えば、こうした考え方は1991年の風力タービン技術に基づいているので、ひどい過小評価であることは明らかだ。以降デザインが向上し、風速が遅くてもタービンが動くようになったので、より能率的に風力発電が行えるようになり、またより広範囲に渡る風力を活用できるようになっているのだから。
1991年における平均的なタービンは約高さ120フィートだったが、最新のものは300フィートと30階建のビルほどの高さがある。これにより、活用できる風力が2倍になっただけでなく、風力が強くより確実な標高の高いところにある風を活用出来るようになった。
ヨーロッパは、風力エネルギーの開発における世界的リーダーとして台頭してきており、ウインドファームにおいて4千万人の居住用の電力需要を満たすに至っている。昨年、ヨーロッパ風力発電協会は、2020年までに1億9千5百万人の電気需要を風力発電により満たすことが出来るようになると予想した。これは西ヨーロッパ人口の半分に値する数である。
2004年の風力発電コンサルタント、ガラード・ハッサン社によるヨーロッパの海上風力の可能性に関する査定によると、ヨーロッパ各国政府がこの資源の利用に積極的に取り組めば、2020年までに風力発電だけで、ヨーロッパの居住用の電力需要を満たすことが出来るとしている。
風力発電の利用は、安価、豊富、無尽蔵、入手しやすい、汚染源とならない、気候に悪影響を与えないなどの理由から急増している。その他のエネルギー源には、これら全ての利点を持ち合わせているものはない。
風力エネルギーのコストは、過去20年にわたって急速に下落している。カリフォルニアにある初期のウインドファームは、1980年代初めに近代的な風力発電設備が作られたが、当時はキロワット時のコストが38セントだった。現在は、キロワット時4セントで、最近締結された長期供給契約においては、3セントのものもあり、まだまだコストは下がりつづけている。(データ)
広く議論されている水素燃料電池による輸送モデルと異なり、ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッドや風力発電によるモデルは、費用のかかる新たな基盤設備を要しない。ガソリンスタンドは各地にすでに設置されており、車に取り付けられた蓄電池をウインドファームにつなげるのに必要な配電網も、すでに存在している。ただこの新しいモデルがより効率よく稼動するためには、全国土に渡る統合されたグリッドが必要とされている。幸いなことに、古びた地域的なグリッドを近代化し強固で全国的なグリッドと交換する必要性は、幅広く認知されている。2003年米国北東部に影響を与えた停電の後には、なおさらのことである。
風力エネルギーの弱点の一つにその不規則性が挙げられるが、ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車に、プラグイン機能を持たせることによりこの弱点はほぼ埋め合わすことが出来る。こうした車に備え付けられた蓄電池が、風力エネルギーの貯蔵システムの一部として機能するからである。その上、バックアップとしてガソリンも常備されている。
米国の22州において、現在すでに工業規模のウインドファームがあり、電流をグリッドへ供給している。公共のために必要な事業であることは理解しているが、自分の居住地域内で行なわれることは反対といった問題が生じることもあるが、賛成の場合のほうがずっと顕著である。タービン一つで年間10万ドルに値する電力をたやすく産出できるのだからこれは当然のことである。
アイオワの農場主やコロラドの牧場主の間で、ウインドファームをめぐる争奪戦が激しくなっている。自身で投資しない場合農場主は、風力タービン一台分の設置場所四分の一エーカーに対し、通常年間3千ドルをロイヤリティとして地方公共事業から受け取っている。トウモロコシの産地ではこの四分の一エーカーで、40ブッシェル、120ドル相当のトウモロコシを生産出来、また牧場では10ドル相当の牛肉の飼育が可能な程度の広さだ。
米国の農村では、ウインドファームがもたらす追加収入と働き口を切実に求めている。さらに、ウインドファームによって発電された電力に支払われた金額は、コミュニティー内にそのまま残るので、地域経済全体に波及効果が生じる。数年足らずのうちに数多くの牧場主が、蓄牛の販売より電力の販売により利益を上げるようになるだろう。
高性能のプラグイン機能付ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車へ移行し、国中で数多くのウインドファームが建設され全国規模のグリッドに電力が供給されるようになれば、ここ30年間成し遂げられなかったエネルギー安全保障をようやく確保することが出来るだろう。また、農場や牧場の地域社会を活性化し、米国の貿易収支欠損も縮小されるだろう。もっと重要なのは、炭素放出を大幅に削減し米国が手本となれば、他国も後に続くようになるということだ。
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