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Eco-Economy-Update 2004-7

サウジアラビアの対米価格支配力
穀物と石油の交易条件の推移

レスター・R・ブラウン

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 1970年当時、1ブッシェルの小麦は世界市場で1バレルの石油と交換できた。今や1バレルの石油を買うには9ブッシェルの小麦が必要だ。穀物と石油の交易条件が大幅に変動することでもっとも影響を受けるのは、アメリカとサウジアラビアの2か国である。

 アメリカ――世界最大の石油輸入国かつ穀物輸出国――では、小麦と石油の交換比率が9倍に上昇したしわ寄せがガソリン価格の値上がりというかたちで現れている。また、この変動でアメリカの貿易赤字は史上最大規模に膨らんでおり、これがドミノ式に未曾有の対外債務と国家経済の弱体化をもたらしている。対照的に、サウジアラビア――世界最大の石油輸出国であり穀物の輸入上位国でもある――は首尾よく利益を収めている。

 石油輸出国機構(OPEC)が石油価格を引き上げる以前の1970年代初頭は、アメリカが石油の輸入代金を穀物輸出で支払うことはおおむね可能であった。だが2003年には、穀物輸出は990億ドルという巨額の石油輸入手形の11%しか賄えなかった。穀物と石油の交換比率が悪化する一方、国内の石油生産量が減って消費量が増えたため輸入量は増大し、2003年には(輸入量が)総使用量の60%を占めた。

 穀物価格に代用される小麦価格と石油価格の交易条件は、大幅かつ継続的に変動している。1950〜73年までは、小麦と石油の関係と同様に両者の価格もきわめて安定していた。この23年間、世界市場において小麦1ブッシェルは常に石油1バレルと交換できた。

 石油と小麦の交易条件が初めて大きく変動したのは、OPECが1973年末に石油価格を3倍につり上げたときである。1974〜78年は1バレルの石油を買うのに約3ブッシェルの小麦が必要であった。その後、OPECによる2度目の石油価格引き上げ(1978年の1バレル13ドルから1979年には30ドルに上昇)が行われてからの数年間は、1バレルの石油を買うのに7ブッシェルの小麦が必要となった。

 こうして石油の購買力が急伸した結果、史上一二を争う急激な富の移転が起きた。多くの石油輸入国が手持ちのドルをはたいている間に、サウジアラビア、クウェート、イランといった主要な石油輸出国の国庫はドルで溢れはじめた。

 値上げを受けてOPEC地域を除く世界の石油生産量が増加したため、OPECの価格支配力は弱まり、石油価格は1985〜86年で半減した。以後99年まで石油1バレルを買うのに必要な小麦は平均5ブッシェル、2000〜03年で7ブッシェル、04年初めの現在は9ブッシェルと推移している。

 小麦と石油の交換比率が今後どのように変動するかを確実に知ることはできない。無限に継続しうる穀物生産とは対照的に、石油生産はおそらく向こう5〜15年以内のある時点でピークに達し、その後は減少するだろう。

 正確にいつピークが来るかは、石油メジャーや石油輸出国がとる枯渇防止戦略次第である。先細りする埋蔵量を減産で長くもたせ、油田の可採年数を延ばす決断をすれば、ピーク(の到来)は遅くなる。逆に目先の売上増にとらわれていると生産量は今より早いペースで拡大し、その結果産出高が上げ止まって減少に転じる時期を早めることになりかねない。

 生産量の頭打ちが懸念されつつも、石油使用量は中国、インドなど工業化が急激に進む国々で特に増え続けている。中国はすでに日本を抜いてアメリカに次ぐ第2位の石油消費国となった。

 アメリカはサウジアラビアに増産を強く求めているが、問題解決のためにはサウジアラビアが増産するのではなく、アメリカが消費を抑えるべきである。OPECによる価格引き上げが石油使用削減の必要性を示唆したにもかかわらず、アメリカはガソリンを多量に消費するスポーツ・ユーティリティー車(SUV)の生産を急速に伸ばしたため、石油の使用量および輸入量は増大した。

 アメリカが中東の石油への依存を強めるとともに、中東の政情不安も高まっている。イラクで広がりつつある暴動が他の石油輸出国に飛び火し、石油供給に混乱をきた恐れもある。クルマの燃費改善に真剣に取り組むべき時があるとすれば、それは今だ。

 アメリカが既存の技術で石油使用を削減するには多くの方法がある。たとえば、プリウス(トヨタ)やシビックハイブリッド(ホンダ)など、(ガソリンと電気による)ハイブリッドエンジンを搭載した新型車は燃費が非常によい。2004年式のプリウスの燃費は10・15モード走行で平均55マイル/ガロン(mpg)【(約23.4km、他の中型車の2〜3倍の数値】である。

 アメリカが今後10年間で国産車の燃費をプリウスの水準にまで向上させれば、同国のガソリン消費量は半減する可能性もある。そのためにはクルマの数を減らす必要はなく、高効率エンジンを載せるだけでよい。

 ガソリンと電気を併用するハイブリッド自動車は、今日使用されているもっとも高度な自動車工学技術のたまものといえるだろう。ハイブリッド車の設計者が行ったのは、実質上燃料を先進技術で代用することだ。

 当然ながら次なるステップは、電力需要が落ち込む夜間にハイブリッド車を電源に接続してバッテリーを充電できるよう、蓄電容量を適度に増やすことである。通勤距離が短い場合は電力のみで走行し、長距離移動時までガソリンを温存することも可能だ。そうなればアメリカはガソリンを風力発電の安価な電力で代用できるようになり、ガソリン使用量の削減も促進される。

 ハイブリッドエンジンの燃料組成における電気の比率を高めることで、アメリカの膨大な風力資源開発に向けた高収益の新規投資機会が開ける。エネルギー省によれば、アメリカの利用可能な風力で国内総需要の数倍の電力を生み出せる。また、同国の風力発電容量も急速に増大している。1995〜2003年には160万kwから640万kwへとはね上がり、5年で4倍増となった。

 風力タービン設計の進歩で風から安い電力をつくれるようになったことなどから、今や約22か国で商業規模の風力発電施設が地域の送配電網に電気を送り込んでいる。風力発電税額控除の延長――化石燃料補助金と同等の地位を確立するための措置――で、今後は成長の加速化と数千規模の新規雇用創出が期待される。

 私たちは中東の石油を確保するのにじゅうぶんすぎる血を流し、じゅうぶんすぎる富を費やしてきた。ランド研究所の予測によれば、中東の石油を確実に入手するために必要とされる米軍駐留の維持には、平時でも年間最低300億ドルかかる。(このような状況を)変革するなら今この時だ。

 アメリカが指導的役割を担わないかぎり、サウジアラビアが石油と穀物の交易条件、ひいてはアメリカのガソリン価格をも決定しつづけるだろう。アメリカは世界最大の石油消費/輸入国だが、石油への依存を大幅に緩和することで石油価格決定への影響力を回復できる可能性がある。依存緩和はまた石油生産のピークを遅らせ、世界がポスト石油時代へ円滑に移行できるよう時間を稼ぐ手段にもなる。アメリカはこの移行を率先して進めていくための技術とエネルギー資源を有している。いま世界に必要なのは石油ではなくリーダーシップだ。

# # #

小麦と石油の交換比率 (1950-2004)
小麦1ブッシェルの価格(米ドル) 石油1バレルの価格(米ドル) 1バレル当たりブッシェル数(比率)
1950 1.89 1.71 1
1955 1.81 2.11 1
1960 1.58 1.85 1
1965 1.62 1.79 1
1970 1.49 1.79 1
1971 1.68 2.19 1
1972 1.90 2.44 1
1973 3.81 3.27 1
1974 4.89 11.50 2
1975 4.06 11.45 3
1976 3.62 11.55 3
1977 2.81 12.51 4
1978 3.48 12.78 4
1979 4.36 29.83 7
1980 4.70 35.71 8
1981 4.76 34.04 7
1982 4.36 31.54 7
1983 4.28 29.47 7
1984 4.15 28.55 7
1985 3.70 27.37 7
1986 3.13 14.17 5
1987 3.07 18.20 6
1988 3.95 14.77 4
1989 4.61 17.91 4
1990 3.69 22.99 6
1991 3.50 19.37 6
1992 4.11 19.04 5
1993 3.82 16.79 4
1994 4.08 15.95 4
1995 4.82 17.20 4
1996 5.64 20.37 4
1997 4.35 19.27 4
1998 3.43 13.07 4
1999 3.05 17.98 6
2000 3.10 28.23 9
2001 3.45 24.33 7
2002 4.04 24.95 6
2003 3.98 28.89 7
2004* 4.20 36.00 9
出所:IMF Statistics Online database
* 2004年4月の小麦と石油の先物価格に基づく予備推計

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