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Eco-Economy-Update 2005-1

高騰する石油:フードセキュリティーへの脅威

ダニエル・マーレイ

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 今日の食品システムは畑から食卓まで安い石油に頼りきっているので、石油供給に対する脅威は食料供給に対する脅威でもある。食品システムのエネルギー消費量は、処理工程の複雑化・輸送の長距離化で年々増加している。

 アメリカの食品システムが毎年使用するエネルギー量は1055京1000兆ジュールを上回り、フランスの年間総消費量に匹敵する。農場での生産にかかるのは全体のわずか5分の1で、5分の4は出荷後の輸送、加工、包装、販売、保存に使われる。農業に費やされるエネルギーの使途は、肥料製造(28%)、灌漑(7%)、播種機・耕耘機・収穫機用ディーゼル燃料・ガソリン(34%)、残りは農薬生産や穀物乾燥などである。

 世界の穀物生産量はこの半世紀で6億3100万トン(1950年)から20億2900万トン(2004年)へと3倍増を記録した。増加要因の80%は人口増による需要の伸び、20%は食物連鎖の上位に属する食品〔たとえば食肉・乳製品などの畜産物〕を摂る人が増え、1人当たり穀物消費量が24%増大したことにある。新たな需要は耕地拡大によってではなく、主として多収品種の導入と機械化・灌漑・施肥―石油集約的な手段―を併用した土地生産性の向上によって満たされた。

 今日の農業では、土壌養分の補給は化学肥料、ひいては石油―肥料原料の採掘、肥料の製造および世界各地への輸送に必要―頼みである。原料資源であるリン鉱石は世界需要の2/3がアメリカ、モロッコ、中国、ロシアで産出され、カリ鉱石〔カリ長石〕はカナダ、ロシア、ベラルーシ産が半分を占めている。他方、大量の天然ガスを使って空中窒素を固定する窒素肥料の生産拠点は世界に遍在する。

 世界の肥料使用量は1950年代から劇増している。最大の消費国は中国で、2004年に4000万トンを突破した。アメリカは1984年以来年間1900万トン前後で推移しており、インドも1998年以降年間約1600万トンの横ばい状態が続いている。エネルギー効率に優れた肥料生産技術と土壌の栄養状態の精密なモニタリングで施肥にかかるエネルギーが削減されてはいるものの、改善の余地はまだある。石油価格の上昇で肥料が値上がりすれば、化学肥料の代わりに有機廃棄物で土壌の栄養循環を完結させることが奨励されるようになるだろう。

 灌漑用機械ポンプの普及は砂漠の真ん中での営農を可能にした反面、農業によるエネルギー消費の増加や大量取水を招き、世界各地で地下水層の枯渇を助長した。地下水位が低下するとそれだけ強力なポンプで汲み上げなければならないため、灌漑に必要な石油の量は増えこそすれ減ることはない。点滴方式や低圧スプリンクラーといった効率的な灌漑を行い、土壌水分を正確に測定すれば、農業用水および農業用エネルギーの需要は抑制できる。だが、多くの国では政府が補助金を出して人為的に安い水をいつでも簡単に使えるようにしている。

 エネルギー集約的な「農業の機械化」という時代の流れに対抗するのが土壌保全型農法(不耕起栽培あるいは最小耕耘法)の導入である。収穫した作物の茎や葉を地面に残し、土壌の風食・水食や乾燥を最小限に抑えることで土壌が改善され、燃料の使用量と灌漑需要が減少する。不耕起栽培の耕地面積は世界全体で9000万ヘクタール(うち半分以上をアメリカ・ブラジル両国が占める)にのぼり、最小耕耘法もアメリカの農地の41%で実施されている。

 農業分野で省エネ対策が探られているとはいえ、農場を出て食卓に上るまでのエネルギー消費は増加する一方だ。食品システムに費やされるエネルギーを用途別にみると、農業生産21%、輸送14%、加工16%、包装7%、小売業4%、外食・仕出し業7%、家庭での冷蔵・冷凍および調理32%となっている。

 食品の輸送距離(フードマイレージ)はかつてないほど長くなっており、西側諸国の青果物は農場から店まで2500〜4000kmの道のりを運ばれることも珍しくない。ますます開放される世界市場と低い燃料価格の相乗効果で、生鮮食品は―季節や場所にかかわらず―通年輸入することができる。しかしながら、輸送距離が伸びればエネルギー使用量も大幅に増える。食品輸送の大部分を担うトラックは鉄道や船の10倍近いエネルギーを消費する。ジャンボジェット機による保冷貨物輸送(海上輸送の60倍のエネルギーを要する)はチリ、南アフリカ共和国、ニュージーランドなどで生産された生鮮食品を北半球の市場に供給する一翼として、シェアは小さいながらも成長を続けている。

 食品の世界総売上のうち、加工食品のシェアは今や3/4達している。1ポンド(約450g)の冷凍野菜・果物は加工に825kcal、包装に559kcal、さらに保冷輸送や店舗および家庭での冷蔵・冷凍保存にもエネルギーが消費される。同量の野菜・果物缶の場合、加工に平均261kcal、缶詰めに1006kcal(缶の原料の採鉱・製鋼のエネルギー消費原単位が高いため)を必要とする。朝食用シリアルの加工は1ポンド当たり7125kcal(シリアル自体のカロリーのゆうに5倍)を要する。

 大部分の生鮮食料品と低加工の穀物、豆、砂糖は――大量購入時は特に――包装をほとんど必要としないが、加工食品はシート、袋、箱による個装・過剰包装が多い。大量のエネルギーと原料を投じてその場限りの華美な包装を施しても、結局は大半がゴミになる。

 小売店(スーパーマーケットなど)や飲食店は、食品の冷蔵・冷凍、調理に莫大なエネルギーを使っている。近所の店が「スーパー」に取って代わられるということは、消費者が(1)食料を買うのにより遠くまでクルマを走らせる必要がある、(2)食品を次の買い出しまで貯えておくために冷蔵庫への依存を強めざるをえないことを意味する。一般に大口契約・均質供給を好む食品チェーン店は地元農家、小規模生産者からの仕入れに消極的で、遠い大型農場や流通業者から買い付ける。この点もまた輸送・包装・保冷にかかるエネルギーが増大する原因となっている。

 各国政府は石油、灌漑、輸送への補助金で化石燃料の大量消費に基づく長距離輸送型の食品システムを下支えするよりも、持続可能な農業や地場産品、エネルギー効率に優れた輸送を推奨して然るべきである。
(1)土壌保全型農法、有機肥料施用、総合病害虫管理といった、環境にやさしい手法を実践するよう動機づける。それによって、農業のエネルギー消費を大幅に削減できる。
(2)エネルギー効率のよい設備機器を購入した家庭、小売店、加工業者、農家に割戻し制度を適用する。それによって、システム全体のエネルギー節約が可能になる
(3)包装のムダを最小限に抑え、リサイクルを推進する法律を定める。それによって、省エネ・ゴミ減量ができる。

 生産者から消費者への直接販売(直売所など)は、大手集中の流通機構を介さず、輸送と包装のムダを省いて、地域のフードセキュリティーを高める。産直市場数は全米で拡大しており、1993年の1755から2002年には3100に増えたが、食品売上額に占める割合はわずか03.%にとどまっている。

 何を買い、何を食べるかの決定は、個人が毎日取る最大の政治行動である。
(1)旬の地物を優先的に買う。これによって、生産と輸送に費やされるエネルギーを節減し、食の安全を高め、食料供給を安定させる。
(2)低加工の冷凍食品を大量パックで購入する。これによって、省エネ・販売コスト削減ができる。
(3)小型冷蔵庫に切り替える。これによって、電気代の節約につながる。
(4)食物連鎖の下位に属する食品(たとえば、畜産物ではなく、穀物や青果物)を摂る。これによって、土地、水、エネルギーへの負荷を低減する。

 現代の食品システムは、化石燃料頼みがアキレス腱になりうる。石油供給の変動・途絶でたちまち、食品価格が高騰し、それによって紛争や対立が急速に激化しかねない。食品システムを石油産業から切り離すことがフードセキュリティー強化のカギである。

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