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2006-3
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Eco-Economy-Update 2006-3
ボトル入り飲料水は資源の無駄使い
エミリー・アーノルド
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ボトル入り飲料水の消費量は世界全体で、2004年に1540億リットルに達し、5年前の980億リットルから57%増加した。水道水が安心して飲める地域でさえ、ボトル入り飲料水の需要が伸びている。そして、不必要なごみを出し、大量のエネルギーを消費しているのである。先進国では、ボトル入り飲料水はたいてい、水道水と比べても健康によいわけではないにもかかわらず、水道水の1万倍以上のコストがかかることもある。1リットル当たり2.5ドルものボトル入り飲料水のコストは、ガソリンよりも高いのだ。
アメリカは、ボトル入り飲料水の世界最大の消費国である。2004年のアメリカの消費量は260億リットル、すなわち国民1人あたり毎日240CCほどを消費したことになる。消費量の第2位はメキシコで180億リットル、中国とブラジルが、3位と4位で、それぞれ約120億リットル。そして5位と6位は、イタリアとドイツで、それぞれ100億リットル強であった。
イタリアは、1人あたりのボトル入り飲料水の消費量がもっとも多く、2004年は、国民1人あたり、約184リットル/年であった。2位は、メキシコで169リットル、3位はアラブ首長国連邦で164リットル、すぐあとにベルギーとフランスが続き、それぞれの年間消費量は約145リットル、6位はスペインで、137リットルであった。
ボトル入り飲料水の消費量がもっとも急速に増大している国々の中に、途上国の姿がある。1人あたりの消費量が多い上位15か国のうち、レバノン、アラブ首長国連邦、メキシコは増加率が最大で、1人あたりの消費量は、1999年から2004年にかけて、44〜50%も増加している。インドと中国の1人あたり消費量の伸び率は、これほど高くはないものの、人口の多いこの2か国での合計消費量は急増し、1999年から2004年にかけて、インドは3倍、中国は2倍以上になっているのである。しかも、さらに増加する可能性が高い。もし、中国の全国民が2004年のアメリカ人の平均消費量の4分の1強の量を消費すれば、国家としては約310億リットルを消費することになり、即座に世界最大の消費国になる。
エネルギー効率のよいインフラを通して供給される水道水とは対照的に、ボトル入り飲料水の長距離の輸送には、大量の化石燃料の燃焼を伴う。ボトル入り飲料水の約4分の1は、消費者に届くまでに国境を越え、船や列車、トラックで輸送されている。一例を挙げると、2004年にフィンランドのノルド・ウォーター社は、ボトルに詰めた140万本のフィンランドの水道水を、ヘルシンキにある工場からサウジアラビアまで4300kmを船で輸送したのである。
サウジアラビアは必要な水を輸入しているのだが、ボトル入り飲料水は、水不足の国々にのみ販売されているわけではない。アメリカで販売されているボトル入り飲料水の約94%は、国内で生産されたものであるが、同時にアメリカは、しゃれた外国製のボトル入り飲料水に対する需要を満たすため、約9000km離れたフィジーをはじめ遠方の諸国から水を輸入しているのである。
水の輸送のみならず、その容器にも、化石燃料が使用されている。ボトル材としてもっともよく使われるプラスチックは、原油由来のポリエチレン・テレフタレート(PET)である。アメリカ人の需要を満たすボトル入り飲料水用のボトルの生産には、毎年150万バレル以上の石油が必要である。これは、約10万台のアメリカ車の1年間の燃料に十分な量である。世界中で、毎年、約270万トンのプラスチックが飲料水用のボトルに使用されている。
飲料水を消費した後、そのプラスチックのボトルを処分しなければならない。アメリカの容器リサイクル協会によると、アメリカで使用された飲料水のペットボトルの86%は、ごみやくずになる。使用済みボトルの焼却は、塩素ガスや重金属を含む灰など、有害な副生成物を生み出し、また、埋め立て処理されたペットボトルは生物分解されるのに1000年もかかる。2004年にアメリカでリサイクルのために回収されたペットボトルの約40%は輸出されており、中国のように遠く離れた国にまで運ばれることもある。そして、再びペットボトルの原料となる。
ボトル入り飲料水の生産と輸送が、生態系に負荷をかけていることに加えて、この飲料水産業の急速な成長により、水の採取はボトル詰め工場がある地域に集中することになる。例えば、インドでは、コカ・コーラ社によるボトル入り飲料水“Dasani”をはじめとする飲料のための水の採取により、50以上の村が水不足となった。同様の問題が、テキサス州や北アメリカの五大湖地域で報告されている。そこでは、地下水位が急速に低下しており、農民や漁師、そして生活用水を地下水に依存している人々が、集中的な取水の被害を受けている。
消費者は、ボトル入り飲料水から健康な生活を連想していることが調査で示されているが、ボトル入り飲料水が水道水よりも健康によいとは、まったく保証されていない。実際に、ボトル入り飲料水のおよそ40%は、もともとは水道水である。たいてい、唯一の違いは、際立った健康上の利益などないミネラルが追加されているということだけである。フランス議会は、付け加えられたミネラルは、少量なら有益であるが、用量が多いと有害の可能性があるという理由で、ボトル入りのミネラルウォーターを飲む人々に対して、頻繁に種類を変えるよう忠告さえしている。
フランス議会はまた、水道水に関する些細な局地的問題が、地方自治体の水供給に対する信頼を広く喪失させる可能性があると指摘した。実際、ヨーロッパやアメリカなど、多くの国々では、ボトル入り飲料水よりも水道水の水質基準となる規制の方が多い。たとえば米環境保護庁によって規定されているアメリカの水道水の水質基準は、食品医薬品局によるボトル入り飲料水の基準よりも厳しいのである。
安全で手ごろな飲料水が、世界のいかなる地域においても健康には絶対必要であることは間違いない。しかし、ボトル入り飲料水は、先進国において安全で手ごろな飲料水を得るための答えではないし、安全な水を得られない11億人の問題を解決するものでもない。現在の水処理と公衆衛生を維持するシステムを改善し、拡大することの方が、安全な水質にして持続可能な水源を長期間にわたって確保できる可能性が高い。村落では、雨水を集めたり、新たな井戸を掘ることで、より手ごろな水源を作ることができるのである。
国連ミレニアム開発目標の項目にある、環境の持続可能性の確保では、2015年までに安全な飲料水への継続的なアクセスがない人々の割合を半減することを求めている。この目標を達成するには、現在世界が1年間に水供給と衛生施設に投じている150億ドルの2倍にあたる資金を必要とする。この金額は多いと思うかもしれないが、毎年、ボトル入り飲料水に費やしていると推定される約1000億ドルに比べると、大きな額ではないのである。
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