トップ > レポート一覧 > Eco-Economy-Update 2006-7 ビル・クリントン絶賛、レスター・ブラウン最新刊「PLAN B 3.0」人類文明を救うために発売開始 Eco-Economy-Update 2006-7 【ハリケーン】ハリケーン被害で新たな段階に
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ハリケーンによる被害はとてつもない額にのぼり、保険会社は破産し、リスクの高い地域の不動産所有者は保険契約でリスクに備えることができなくなっている。経済的損失が10億ドル以上のハリケーンによる世界全体の被害額は、1960年代は合計でわずか40億ドルであった。その額は、70年代には70億ドルになり、80年代には240億ドルを上回り、90年代には1130億ドルに急増した。そして、2000年から05年の6年間で、ハリケーンは2730億ドルという膨大な被害をもたらした。 ハリケーン災害による被害額増大の原因には、主に2つの傾向があげられる。1つには、急速な沿海開発により、多くの人々と高価なインフラがハリケーン被害を受けやすい地域に流入したことである。そして2つ目には、ハリケーン(太平洋西部では台風と呼ばれる)が高い海表面温度により勢力を強め、より強力に、より長く勢力を保っていることである。また、地理的な範囲も拡大しており、ハリケーンの猛威からは安全だとされていた地域にも侵入している。 2005年は、ハリケーンに襲われた地域と、その地域に保険契約者をかかえていた会社にとって、最悪の年であった。8個の大きなハリケーンによる損失額は1700億ドルを超え、そのうちの半分は保険契約が結ばれていた。8個のうち3個は太平洋であったが、大西洋のハリケーンは経済的損失の98%を占める。 05年6月から06年の年初まで続いた異常に長い北大西洋のハリケーン・シーズンでは、アルファベットからギリシャ文字まで使用して、記録的な28個の名前が付けられたハリケーンが発生した(ハリケーンの名前は、毎年Aからアルファベット順に命名されるが、大西洋北部ではQ・U・X・Y・Zは使用せず、21個の名前リストの最後までいった場合、ギリシャ文字のアルファベットを使用することになっている)。この数は、過去100年のハリケーン年間平均発生数の約3倍である。高い海表面温度により勢力を強め、4個のハリケーン(エミリー、カトリーナ、リタ、ウィルマ)が最強レベルに発達し、1シーズンに発生した「カテゴリー5」のハリケーン数は、史上最多となった。 2005年8月後半に米国メキシコ湾岸を襲ったハリケーン・カトリーナでは、風と記録的な高潮による被害額は1250億ドルを上回り、史上もっとも大きな経済的損失をもたらした。カトリーナは最大風速78m/秒に達したが、米国メキシコ湾岸上陸時には「カテゴリー3」に勢力を弱めていた。数週間後、強力なハリケーン・リタが上陸したが、1シーズンに「カテゴリー5」のハリケーンがメキシコ湾で2個も発生したのは史上初のことである。その後、ハリケーン・ウィルマが上陸し、メキシコのユカタン半島に深いツメあとを残し、大西洋でもっとも強力なハリケーンとして名を残した。 2005年のハリケーンは強力であっただけではなく、より広範囲に及んだ。ハリケーン・ヴィンスは、10月にスペインを襲ったが、これまでの大西洋のハリケーンよりずっと北東に移動した。1か月後、ハリケーン・デルタもまた、大西洋のハリケーンが侵入したことのない地域に進み、カナリア諸島を縦断した。この2つのハリケーンや、南大西洋で最初のハリケーンとなった2004年ブラジルでのハリケーン・カタリーナのように、想定外の地域での強力なハリケーンは、保険会社に大災害モデルの見直しをさせることになった。 毎年発生するおよそ90の熱帯性低気圧のうち、約半分がハリケーンと分類されるのに十分な強さに発達している。ハリケーンを誘発するのに必要な要素は、海表面温度が26℃以上で、適した風の状態である。高い海表面温度は、より強力なハリケーンを発生させる。 過去30年で、熱帯地方の海表面温度は0.5℃近く上昇したが、少なくとも過去150年では見られなかった規模の上昇で、おそらく数千年でも前例がないだろう。マサチューセッツ工科大学のケリー・エマニュエルの報告によると、大西洋と北太平洋のハリケーンと台風はこの間に勢力を2倍強めている。また、以前より長く続くようにもなっている。そして、温室効果ガス排出量の増加により気温が上昇し、さらに強烈なハリケーンが今後起こりそうである。また、暖かい空気は、より多くの水蒸気を含んでいるため、降雨量が増加し、ゆえに洪水も増えるだろう。 すでに、より多くのハリケーンが最高レベルの「カテゴリー4」と「カテゴリー5」に発達している。ジョージア工科大学の科学者によると、世界中の海洋盆で、1970年代後半から80年代には、「カテゴリー4」または「カテゴリー5」に発達したハリケーンは5個のうち1個弱であったが、90年代と2000年代初期には3個のうち1個になった。より強力なハリケーンは、著しく破壊的である。「カテゴリー1」のハリケーンは、風速約33m〜43m/秒で、約1.2mの高潮を引き起こす可能性があるが、「カテゴリー5」では、風速は倍になり、5.5mの高潮を引き起こす可能性がある。 →《続きはこちら》[ハリケーン]ハリケーン被害で新たな段階にリスクの高い沿海地域を見捨てる保険会社(2) |
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