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News Release

あなたのハンバーガーにバイオテロ

今年4月にイギリスの農村地帯で蔓延した口蹄疫ウイルスは、イギリス全体で推定60億ドルの被害をもたらした。当時、謀略戦の理論家たちは、この病気の発端は生物兵器による意図的な攻撃ではないのかと疑った。この病気は人体には無害だが、家畜を群ごと衰弱させ、農家に壊滅的な経済損失を与えると共に、食料供給に対する消費者の不安をあおり、さらに移送禁止、その他の規制のために農村経済を停滞させてしまう。

 この程、アメリカ農務省のアン・ベネマン長官は、口蹄疫の抑え込みに成功しているので、アメリカ国民の食料品がどのようなテロ攻撃に狙われようとも、政府の対処能力はすでに証明済みであると明言した。だが、昨今の炭疽菌攻撃についての数ある公式発表と同じく、長官の楽観主義はまったくの的外れなようだ。

(アメリカ農務省: http://www.usda.gov/news/special/ctc25.htm)

 アメリカの食品流通システムで致命的な弱点はどこにあるのかを考えると、それは現代的な食肉処理工場である。アメリカ全土で操業している典型的な規模の工場は、わずか数日間で数千トンもの牛挽肉、ホットドッグ、冷蔵スライス肉を加工処理できる。

 水道の浄水処理場など、バイオテロが想定される他の施設に比べて、食肉処理工場の安全対策は皆無に等しい。しかも、求人の門戸は広く、潜入に対しても無防備だ。アメリカの食肉処理工場で働いているのは移民であることが多く、不十分な訓練しか受けず、わずかな賃金しか支払われていない。採用時の書類審査や身元調査もおざなりである。概して工場では、従業員全体が1年で入れ替わり、誰が働いているのか誰にも判らないありさまである。

 精肉工場は、従来からアメリカにあって大きな労働災害のもっとも多い職場である。片足を失う、片目を失うなど、重度の労災事故の発生率は全国平均の5倍である。1999年では、アメリカの精肉工場で働く従業員数は15万人であるが、その4人のうち1人強が労災関連の傷害事故に遭い、あるいは疾病を患っている。労働者は、切り裂かれそうになる電動カッターを避け、猛スピードで搬送される2トンの屠体が頭に衝突しないように必死になっているのだ。彼らに食品流通の安全性確保などと言ってみても、重要な関心事であるはずがないだろう。

 食品から伝染する疫病を防止するには程遠い水準の、労働力及び処理工場が防衛最前線を担っているのが実態である。

 たったひとりのテロリストが、病原性大腸菌、サルモネラ菌、リステリア菌などの標本株を戦略的な位置に付けてまわるだけで、大量の食肉商品をすっかり汚染することができる。おまけに、入手、加工ともに困難な炭疽菌とは違い、これらの生物兵器はなんなく入手できる。

 ニューイングランド医学会報10月18日号に、政府規制がアメリカの食品の安全保障にすでに失敗していることを論証する研究が掲載されている。その一つは、アメリカのスーパー店頭で購入した挽肉5検体のうち1検体が、抗生物質に耐性を持つサルモネラ菌で汚染されていたことを示している。もう一つの研究は、ジョージア、メリーランド、ミネソタ、オレゴン州の26ヶ所のスーパーで購入した鶏肉の半数以上が時に致死性である腸球菌種Enterococcusfaeciumの耐性型を保菌しているのを見つけた。

 アメリカの食品流通について言えば、テロリストの脅威というものなど何もなくても、公衆衛生災害はいつでも起こりうる。元アメリカ農務省獣医師であるレス・フリードランダーは、食肉工場で働いている者なら誰でもサルモネラ菌、病原性大腸菌、その他の致死性の病原体の標本株を工場の食肉検査室で簡単に入手し、大規模汚染を引き起こすことができると言っている。

 ここ数十年間、全米的に、現場の食肉検査部門と規制当局との双方で規律の緩みが徐々に進んでいる。これは、現在の規制手段と基準とが不備だらけであり、単なる不注意からくる食品汚染でさえも見逃してしまっていることを意味している。農務省の発表によれば、2001年には9月までだけで、回数にして60回、重量にして総計1400トン近くの食肉製品が回収処分されている。

 残念なのは、食肉製品が持つ弱点が、食品流通全体のなかで決して例外ではないことだ。バイオ兵器による戦争という観点で見れば、遺伝学的に違いが少ない生物集団は、単一の病原菌が大多数の個体に感染しやすいので、攻撃対象として最適なのである。アメリカの乳牛の実に90%が、遺伝的に極めて近いホルスタインであるという事実を考えてみるとよい。また、アメリカ最大の豚肉食品メーカー、スミスフィールド社は1200万頭のブタを管理下においていて、そのすべてが事実上の単一クローンなのである。何万頭・何万羽もの動物を非衛生で閉ざされた区画に詰め込む工場方式の農場、あるいはアメリカ中西部穀倉地帯に多く見られる小麦や大豆の単一栽培など、さながら大感染の予備軍同然ではないか。

 私たちの日常食品へのテロの脅威について、「今やCIAが想定外の可能性を怠りなく検討している」というシナリオを、ハリウッドのライターが書くことはない。それよりも、安全問題への国民の警戒感が非常に強くなっている今こそ、食品流通システムを内部から根本的にチェックする絶好のチャンスである。家畜類の飼育環境をもっと清潔にし、飼料への抗生物質の添加を規制し、食肉処理工場の労働条件を改善しなければならない。

 アプトン・シンクレア(アメリカの社会主義作家:1879-1968)は著書『ザ・ジャングル』(1909)で、20世紀初頭の食肉加工産業の胸がむかつくような操業実態を暴きだしたが、今や、テロの脅威がありとあらゆる産業の実態を暴きだしている。郵便システムから航空産業にいたるまで、すべて無防備であることを曝けだしていて、その弱点の多くは以前から分かっていたのに真剣に考慮されてこなかったのである。

(“The Jungle”はプロジェクト・グーテンベルグから無料ダウンロード可:http://promo.net/pg/index.html)

 全てのアメリカ国民を汚染食品から守るためには、根本的な変革が必要だが、食品流通システムの大掃除を求める公衆衛生論者の度重なる声も、今までは、政治家の支持を得るに至らなかった。アメリカの国内安全保障を求める大合唱によって、事故とテロという両面の脅威に対して食品供給の安全保障を確保するために有意義な行動を、今度こそ呼び起こしたいものである。(2001.11.6発表)

 ―ブライアン・ハルウェイル―

 


翻訳提供/禁無断転載
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