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News Release

選択:21世紀に向けたエネルギー戦略

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 5月17日、ブッシュ大統領は、国家エネルギー戦略を発表することになっている。ワールドウォッチ研究所は、これまで政府の計画立案を綿密に追跡してきた。研究所のエネルギー問題の専門家であるクリストファー・フラヴィン所長と準研究員セス・ダンは、政府の戦略が明らかになった時点で解説を行う予定だが、新しいエネルギー政策の有効性を判断するための一連の基準を以下に用意した。

 まもなく発表されるブッシュ政権のエネルギー政策は、21世紀のエネルギーシステムに向けた先見の明に満ちたビジョンを国民に示し、そしてそのビジョンの達成を促す政策を奨励するまたとない機会である。

 かつての石油業界の幹部で、昨日までのエネルギー源と個人的にも政治的にもつながりを持った二人の率いる政権が、果たして新しい世紀の需要や要求と調和するエネルギーアジェンダを用意しているかどうかはまだわからない。20世紀(石油)や19世紀(石炭)のエネルギー源に今まで以上に依存するのは、1901年に馬車の大量生産計画を立てるようなもので、後ろ向きの誤った考え方だろう。はるかにクリーンなエネルギー源が利用できる時代に、必要もなく環境を汚染し、高いつけを払うことになる。また、地球温暖化を食い止めるというアメリカの公約を理由に、同盟関係にある国々がアメリカの化石燃料への依存拡大に厳しく反対しているのはすでに知られている。

 我々はいま、100年前に石油時代の到来を告げたのと同じ、急速かつ大規模なエネルギー革命の初期に立っている。各地に分散し、効率的で、再生可能資源や水素燃料にウエートを移していくこの新しいエネルギーシステムは、世界の他の場所ですでにその姿を現しつつある。明確なリーダーシップがなければ、アメリカは、国際舞台で経済の競争相手に遅れをとり、政治的信頼性を失う恐れがある。

 これから公表される戦略の評価は、以下に掲げる21世紀のエネルギーシステムの原則をどこまで組み入れているかによって下されるべきだと考える。


1.エネルギー効率:礎石


 エネルギー効率に投資し、より少ないエネルギーで照明、調理、暖房、移動、産業の各分野で変わらないサービスを手に入れることは、まず最初にやるべき措置である。チェイニー副大統領の言う「格好悪い」忠告などではない。石炭や石油を求めて掘削を進めるよりも、1キロワットや1バレルをもっと活用することは、経済的にも生態学的にもより大きな意味がある。改良された電気製品や建物、自動車、工業過程でエネルギーの利用効率を高めれば、経済生産高のあらゆる項目でエネルギー使用量が減ることはすでに証明されている。

 1973年から99年にかけて、国民総生産(GDP)のあらゆる項目でエネルギー消費量が41%も減少した。しかし、エネルギー省の国立研究所が報告しているように、エネルギーの効率改善を目指す政策を通して、アメリカはGDPに占めるエネルギーの割合をさらに10%削減できるだろう。電気の効率改善を怠った結果が、カリフォルニアの電力問題である。また最近のガソリンの値上がりは、企業平均燃費基準(CAFE)の強化を怠ったからである。アメリカ自動車製造業者協会(CAFEの凍結を目指して効果的なロビー活動を展開した)を動かしていた人物がトップに立つホワイトハウスは、自動車の燃費を向上させる有意義な基準や発奮材料を奨励するだろうか。


2.天然ガス:水素経済への掛け橋


 天然ガスは、もっともクリーンかつもっとも急速な成長を遂げる化石燃料であり、最近の価格上昇にもかかわらず、発電用燃料として選ばれるようになった。今後の課題は、政府がやろうとしているような生態学的に影響を受けやすい地域での掘削ではなく、きわめて効率のよい新しい用途を開発することである。一例としてコジェネレーションや、熱電併給と“マイクロパワー”技術の併用が挙げられる。

 “マイクロパワー”は、燃料電池や主に天然ガスで動くマイクロタービンのような、地方分散型の効率的な発電ユニットを目指す、明快な世界的傾向を描くときに用いられる言葉である。これは、大型コンピュータからパソコンへの流れのように大規模な変化であり、新しい重要なビジネスチャンスを平等にもたらす。アメリカの発電システムを化石燃料や原子力ベースの大規模な20世紀モデルに縛り付けてしまえば、人体や環境への悪影響が深刻化する一方で、エネルギー産業の国際競争力も低下することになるだろう。


3.原子力とクリーンな石炭:ノスタルジーに浸る暇はない


 この20年間で徐々に衰弱しつつあった産業を甦らせようとするブッシュ政権のプランが明らかになったが、これには大いに困惑している。原子力発電のコストは、現在の電力市場に存在する他の電力源に比べ、およそ2倍である。この費用に世論の反対が加わって、世界中で新規工事は中止寸前に追い込まれている。個人投資家は、原子力発電に大金を注ぎ込むつもりはない。原子力発電に政府がさらに助成金を支出すれば、税金のとてつもない無駄遣いになるだろう。

 政府が“クリーンな石炭”に巨額の資金を投じるという兆しは、納税者の金がまた軽率に支出されることを示唆する。石炭は19世紀のエネルギー源であり、化石燃料のなかでは環境や人体への負荷がもっとも大きく、毎年何百万もの人の健康を蝕んでいる。そのうえ、石炭業界は機械化で労働力が流出し、没落しつつある。1980年以降、雇用水準は66%減少し、炭鉱労働者はアメリカの労働力全体の0.1%にも満たない。中国が96年以降石炭消費量を27%削減したことで、世界の石炭消費量は84年以来最低値を記録している。


4.再生可能エネルギー:より速く、より安く、よりクリーンに


 最近よく耳にするもう一つの不合理な話は、「再生可能エネルギーは、現在、アメリカのエネルギーの2%程度しか占めていないので、今後もその役割は微々たるもので、大幅な支援には値しない」というものだ。100年前にも同じ過ちを犯した人間がいたかもしれない。というのも、1900年当時、石油はエネルギー使用量の2%しか占めていなかったからである。ところがその後、「石油の世紀」と呼ぶ歴史家がいるほど、もっとも主要な燃料になった。

 石油はまずニッチ市場に登場し、それから急速に拡大した。風力やソーラー発電も同様に世界全体で毎年2桁台の成長を遂げているが、その大部分はヨーロッパと日本である。とくに日本では、政府の支援が市場に活気をもたらし、ハイテク分野の雇用と輸出を生み出している(下記参照)。

エネルギー利用の世界的傾向、1990−2000
エネルギー源  年間平均成長率(%)*
風力 25.1
ソーラー 20.1
天然ガス 1.6
石油 1.2
原子力 0.6
石炭 -1.0

* 風力と原子力は設置済みの発電施設、ソーラーは太陽電池の出荷量、天然ガス、石油、石炭は消費量を基にしている。

 現在、風力は年率27%と世界でもっとも速く成長しているエネルギー源で、天然ガスや石炭を使う火力発電に比べコストも安い。ソーラーエネルギーもとくに日本とドイツで急速に拡大しており、両国の再生可能エネルギー政策は、アメリカをはるかに上回る効果をあげている。皮肉なことに、州レベルで最強の再生可能エネルギー政策を有しているのはテキサスで、ブッシュ氏の知事時代に、電力会社に対し、再生可能な資源で発電した電力を一定量供給するよう要請する法律が成立した。テキサスでのサクセスストーリーをワシントンに持ち込むつもりだと口にしている元知事に、国家再生可能エネルギー基準を期待できるだろうか。


5.水素:“未来の石油”


 ブッシュのエネルギー政策は、この宇宙にもっとも豊富に存在する物質を取り込むだろうか。自動車メーカーやエネルギー各社は、新規参入企業でも、持ち運びのできる電子機器や備え付けの発電システムや自動車の電源として、水素を基にした燃料電池の開発に数億ドルを注ぎ込んでいる。水素や燃料電池技術は、100年以上前に石油が発見され、内燃エンジンが発明された時のように、世界のエネルギーシステムを根底から新たな方向に向かわせる可能性がある。

 今年に入ってから、ブッシュ大統領は水素研究予算の48%削減を提案した。一方で、ドイツや日本の自動車メーカーやエネルギー各社は、かつての技術競争と同様に、水素/燃料電池の競争をリードし、デトロイトやヒューストンに先んじている。水素中心の電力や輸送システムへの土台を築かずに、石油に依存し続ければ、国家のエネルギーの安全保障や多様性が深刻なまでに損なわれるだろう。そして、自動車やエネルギーの熾烈な市場において、アメリカ企業の競争力が低下するだろう。


6.脱炭素社会:炭素社会を再登場させてはいけない


 1850年以降、世界のエネルギーシステムは、炭素含有量の高い燃料から、低い燃料へと確実に移行してきた。効率性や利用可能性を理由に、私達は木材から石炭へ、石炭から石油へ、そして石油から天然ガスへと対象を移してきたのである。水素への次の移行は、その兆しが見えているが、気候変動のリスク故に、その到来を早めることが求められている。

 過去数年間、石油や自動車業界の幹部は、石油の時代が終わりに近づきつつある点に触れた上で、脱炭素化の傾向を公に認めてきた(下記参照)。しかし、この国の政治指導者は、脱炭素化の緊急性を国民と公に話し合っていない。その代わりに、「化石燃料は永遠に」的哲学を示しつづけているが、そこには化石燃料エネルギー政策に備わっているとされる長期ビジョンが欠けている。

業界幹部VSブッシュ大統領

Michael Bowlin, CEO, ARCO(現BP),テキサス州ヒューストン、1999年2月9日

 我々は、石油時代の最後の日々に突入した。未来を受け入れ、さまざまな燃料を求める声を認めるか、あるいは現実を無視し、ゆっくりと、しかし確実に取り残されていくかだ。

GM Executive Director Robert Purcell, National Petrochemical & Refiners Association 2000 Meeeing 2000年5月:我々の長期ビジョンは水素経済にある。

Frank Ingriselli, President, Texaco Technology Ventures, ワシントンDC,2001年4月23日:市場の圧力、環境問題への関心、技術革新が産業の未来を形作り、水素経済へと我々を容赦なく追い立てる。それを追いかけない者は、後悔するだろう。

Geroge W.Bush 大統領候補、ミシガン州ポンティアック、2000年10月13日

経済がどれほど進歩しようと、設備がどれほど高度になろうと、我々は当分の間は化石燃料に依存し続けるだろう。(2001.5.17発表)

 


翻訳提供/禁無断転載
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