環境マガジン:ワールドウォッチマガジンより
哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、針葉樹を合わせて794種の生物が絶滅の危機に瀕していることが、絶滅ゼロ同盟(AZE)〔主要52自然保護団体の連合組織〕の調査で分かった。成果は「米国科学アカデミー紀要」12月20日号に掲載された。直ちに行動が取られなければ、これらの多様な生物種が差し迫った絶滅の危機に直面すると警告している。
絶滅のおそれがあるのはアメリカシロヅル、近年再発見されたハシジロキツツキ、アメリカのトレイマツ、あまり知られていないサエズリガエルの1種やエチオピアの半水生齧歯類小動物などで、両生類の約半分、鳥類の4/1近くを占める。
世界野生生物基金のテイラー・リケッツが率いる調査チームは国際自然保護連合のレッドリストから世界595か所の「迫り来る絶滅危機の中心」(深刻な危機にさらされ、かつ生息地が1か所しかない生物種を抱える地域)を特定。うち100か所以上では、複数の絶滅危惧種が生息していた。
こうした場所が特に集中しているのは南米のアンデス山脈、ブラジルの大西洋沿岸森林、アメリカ、カリブ海の諸島、マダガスカル島で、ハワイにはレッドリスト入りの両生類13種や鳥類5種の生息地域がある(昆虫、魚類などの分類群はデータの都合により分析対象外)。
今回の調査で得られた重要な知見は、絶滅リスクが以前のように島嶼部の生物種―ネコやネズミといった移入捕食者にとりわけ弱い―に極度に限定されてはいないということだ。絶滅の危機はいまや低地熱帯雨林、山岳地帯を含む「大陸部の生物多様性の宝庫」にまで広がりつつあるとリケッツは話す。絶滅危惧地域のほとんどは人口密度が高い(世界平均の約3倍)発展途上諸国に集中している。
種の絶滅は自然現象だが、一方で人為的原因による絶滅は自然の絶滅の早さの100〜1000倍に達しており、将来的には1万倍に増加すると予測される。現在の絶滅危惧種数(794種)は1500年以降に記録された絶滅種の3倍にのぼる。
AZEのマイク・パー事務局長は、個々の生物種だけでなく生態系の遺伝的多様性や数十億ドル規模に及ぶ世界のエコツーリズム産業、主要な集水域が提供する清浄な水の供給機能も脅かされていると指摘する。「私たちには、行動を起こす道義的責任がある。知識はあるけれど、時間はもうなくなりかけている」AZEは野生生物とその生息地を保護する活動を国家・地方・地域レベルで、強化するよう訴えている。今回、特定された595か所のうち、法的に保護されているのは約3/1の203か所のみで、40%超の地域では何の措置も講じられていない。環境マガジン:ワールドウォッチマガジンより
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