環境マガジン:ワールドウォッチマガジンより
2005年が観測史上、もっとも暑かった1998年と少なくとも同レベルであることが、ゴダード宇宙研究所(GISS)のジェームズ・ハンセンを中心とする、科学者らの分析で明らかになった。
98年の世界平均気温が従来のレベルを上回った原因は非常に強力なエルニーニョ現象〔南米沿岸付近での太平洋表層水温の一時的上昇〕にあるとして、むしろ05年の方が実質的には高温であったとしている。地球の温度はこの30年で0.6℃、過去1世紀で0.8℃高くなった。おそらく05年の記録も、次のエルニーニョが発生しそうな06年か07年に更新されると考えられる。
2005年は北緯75度以上の北極地方の急激な温暖化に伴い、平均気温が上昇した。この地域に住む人々の生活は温暖化によって激変しつつある(本誌2005年9/10月号『北極の気候変動がイヌイットの生活を直撃している』参照)が、動物たちも被害を受けている。05年12月には、夏季の海氷の後退面積が広がったため、ホッキョクグマが溺れ死ぬ例が発生しており、狩りを行う氷盤まで泳ぎ着くにも相当の体力を消耗していると伝えられた。また、気候が原因の食料不足で追いつめられたロシア北極地方のホッキョクグマが共食いを始め、北極圏各地でも個体数が減少していることがアメリカ地質調査所、カナダ野生動物局、WWF(世界野生生物基金)の調査で分かった。
地球温暖化の主な原因は温室効果ガス―特に自動車、工場、発電所などから排出される二酸化炭素―である。アメリカは長年にわたる世界最大の二酸化炭素排出国だが、同国のエネルギー情報局によれば、2004年はまた増加して、過去最高の59億7000万トンに達した。また、温室効果ガス排出総量は二酸化炭素換算で2%増の71億2000万トンにのぼる(排出源の82%超は石炭、石油、天然ガスの燃焼)。増加率は人口やGDP〔国内総生産〕の伸び率より緩やかなものの、排出量自体は京都議定書の基準年である90年を16%上回っている。
アメリカではブッシュ政権が気候変動に対して有意義な行動を打ち出していないため、連邦政府よりも州政府などによる対策づくりが促進されている。最新の取り組みとしては、北東部7州が署名した「地域温室効果ガス・イニシアティブ」が挙げられる。発電所の二酸化炭素排出量を2009年から現行レベルに制限し、2015年からは削減を求める覚書で、希望すれば他の州にも参入可能な排出権取引市場が特徴となっている。
最後に、排出削減策が「経済成長に水を差す」との声は以前からあるが、こうした批判に対する反証がこのほどカリフォルニアで示された。企業と消費者がオイルショック(1973〜74年)以降の30年にわたりエネルギー効率改善に努めた結果、同州で560億ドルの節減が実現されたことが、スタンフォード大学の最近の研究で分かった。
環境マガジン:ワールドウォッチマガジンより
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