地球環境マガジン「ワールドウォッチ」2006,11/12月号より
ブラジル植物油工業協会と全国穀類輸出業者協会(世界の主要大豆輸出業者を代表する業界団体)は2006年7月24日、アマゾンを開拓した農地で生産された大豆の使用を、2年間にわたり一時停止する措置に合意した。ファストフード大手のマクドナルドをはじめとする主要食品小売業者が、生態学的に脆弱なアマゾン産の大豆を飼料とした鶏肉の販売中止を決めたことにより、大豆生産者への圧力が高まっていることを受けてものだ。
消費者の懸念の増大と環境保護団体グリーンピースによる強い反対運動が、今回の合意を後押しした。グリーンピースは4月、大豆栽培とアマゾンの森林消失・強制労働・暴力との関連を概説した報告書を発表。同書はこうした有害な慣行の改善に向けた交渉を有利に運ぶための材料となった。アマゾンでは、毎年、広大な面積の森林が強制労働者によって切り開かれ、大豆の単一栽培が行われているが、このような行為は鳥類や昆虫などの野生生物の貴重な生息地を破壊するだけでなく、深刻な人権侵害をもまねいているという。
グリーンピースは勝利を祝う一方で、今回の停止措置に持続的効果をもたせるためには、さらなるアクションが必要だと警告する。「アマゾン森林破壊の2年間の一時停止に合意した大豆業者の決定は歓迎すべき第一歩ではあるが、重要なのは現場での実際の行動」と、反対運動の責任者ジョン・ソーベンは話す。
「この2年以内に、一時停止措置の恒久化および管理体制構築に向けた適切な手続きを整備し、アマゾンの雨林の本質的な保護策を導入してもらいたい」
しかも、今回の合意にはセラードは含まれない。ブラジルの国土の23%を占めるセラードは、1万種以上の植物、935種の鳥類、300種の哺乳類が生育・生息する生物多様性に富んだサバンナ気候地域で、アマゾン川を含む南米主要水系の水源の一つだが、アマゾンの森林以上に危機的な状況にあるともいわれている。社会・人口・自然研究所のドナルド・ソーヤー所長は、大豆栽培や放牧などを目的としたアマゾンの森林消失率が20%であるのに対し、セラードの植生破壊率は80%にものぼると指摘している。
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