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【オイルサンド】オイルサンド・ラッシュ―砂から石油を採るカナダの「汚れた秘密」

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【オイルサンド】オイルサンド・ラッシュ―砂から石油を採るカナダの「汚れた秘密」
 【WorldWatchマガジン2007/9・10月号より

 アメリカは1人当たりの石油消費量が世界でもっとも多く、総生産量の2/3を使っている。ブッシュ大統領でさえ、2006年の一般教書で「アメリカは石油依存症である」と述べたほどだ。しかしながら、石油依存症に関するアメリカの政策は、より確実でより近い供給源からより多く輸入する、つまり遠方の不安定な供給国に代わって近隣国、具体的にはカナダから石油を輸入することに尽きる。

 カナダはすでに、対米石油輸出国の中心的地位にある。2005年の対米輸出量は、アメリカの1日の消費量の約7%に相当する150万バレル/日。国内原油生産量の66%は輸出用で、1995年以降はその99%をアメリカが輸入している。一見したところ、需給格差を解消するための増産は不可能とされていた。というのも、カナダにおける在来型の軽油および重油の生産量は2006年にピークに達し、その後急減すると予測されていたからだ。だが、そこに「非在来型」のオイルサンドが登場するのである。

 カナダのオイルサンドの大半は、同国でもっとも化石燃料の産出量が多いアルバータ州に埋蔵されている。鉱床はフロリダ州がすっぽり入る14万平方キロメートルあまりの北方針葉樹林にあり、約1兆7000億バレルの天然ビチューメン〔オイルサンドから抽出された化石燃料を指す技術用語〕を含むと推定される。

 アメリカのエネルギー省は2003年にこれらのオイルサンドの埋蔵量を正式に確認し、カナダの石油埋蔵量を世界21位からサウジアラビアに次ぐ2位へと大きく引き上げた。これを受けて、国家エネルギー政策策定グループが、オイルサンドを「北米のエネルギーおよび経済の安定を支える柱」と位置付けたのも驚くにはあたらない。カナダの「ブラック・ゴールド(黒い金)」と呼ばれるオイルサンドは、豊富で安定した、手ごろな価格の原油資源とみなされるようになった。だが、この非在来型化石燃料の開発は、かつてないほどのリスクや影響を伴う。オイルサンドはすべての点でスケールが大きいが、なかでも地球温暖化と環境への影響は非常に重大であることから、オイルサンドを「カナダの汚れた秘密」と評する声も上がっている。

 オイルサンドから石油を生産するのは、石油樽の底をさらうようなものだ。オイルサンドは砂・粘土・シルト〔砂と粘土の中間の大きさの粒子〕85%、水5%、天然ビチューメン〔石油に変えられる、タールに似た物質〕10%からなる。ビチューメンは原油のような液体ではなく、オイルサンドから取り出すのは厄介な作業だ。現在は、大量の水とエネルギーを使い、熱湯で分離する露天掘り法が用いられている(この方法は、20世紀初めに開発されてからあまり進歩していない)。これは砂場にバケツ1杯の屋根用タールを混ぜ、湯を沸かし、それを砂場に注いで、砂からタールを洗い落とすイメージだ。

 オイルサンドによる大気汚染は州レベルでも越境レベルでも急速に進み、アルバータ州は2003年からカナダの産業大気汚染のメッカとなっている。化石燃料を燃やす重工業から放出されるもっとも一般的な大気汚染物質は、CAC物質(Criteria Air Contaminants)と呼ばれる。「人体の健康に影響を与え、大気汚染の原因となる大気汚染物質」と定義され、窒素酸化物や二酸化硫黄、揮発性有機化合物、粒子状汚染物質などが含まれるが、これらはすべてオイルサンド事業で大量に排出されている。

 世界の主要国は、オイルサンド由来の石油を確保するための態勢を整えている。これまでに、世界の5大石油会社のうち4社(ロイヤル・ダッチ・シェル、エクソンモービル、シェブロン・テキサコ、トタルフィナ)が、オイルサンド開発に数十億ドルを投資、またはその意向を表明した。ノルウェーのスタトイル、中国の中国石油化工(SINOPEC)といった国営石油会社も獲得に動いている。
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※ワールドウォッチマガジンは米ワールドウォッチ研究所が隔月で発行している。詳細
※11/12月号でなく、9/10月号でした。訂正しお詫びします。

 


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