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 トップ > WorldWatchマガジン > GROUNDWORK「アスベスト問題でも生かされなかった予防原則」

アスベスト問題でも生かされなかった予防原則

ワールドウォッチマガジン表紙
WWマガジン2006年 1/2月号より

GROUNDWORK「アスベスト問題でも生かされなかった予防原則」-2

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 予防の考え方から導かれる経済発展の大局的な理解は、その提唱者たちに、批判者の疑問とは異なる視点を与える。たとえば、非専門家の意見は重要である。なぜなら、彼らは多くの場合、その技術のインパクトの最前線に立っているからである。10年間アスベストを吸入せざるをえない作業に従事していたイギリスのある若い工場労働者のケースは、それを例証する。1899年にはこの工員は肺の疾患に苦しんでいた。彼は、アスベストにさらされている同僚の工員のうち10人が全員30歳前後で死亡したことを報告した。この事実と、当時発生したその他のアスベスト関連の健康被害にもかかわらず、主流の科学者の見解は、アスベストによる「危害の確証は存在しない」というものであった。

  未知の危険性を予防するのは不可能という明快な決まり文句は、一般に思われるほど予防原則に対する決定的な反証にはならない。予防原則の支持者は、厳密な危険性がまだ確認されていなくても、新しい技術や活動の何らかの特性が予防の必要性を合図しているかもしれないと論じる。取り返しのつかない帰結、有害な残留性廃棄物、大規模なインパクトといった特性はいずれも予防策を正当化するかもしれない。興味深いことに、この三つの特性はすべて化石燃料の使用に当てはまる。

 もし19〜20世紀に石炭と石油の燃焼を規制する予防策がとられていたなら、人類史上最大の環境への脅威ともいえる今日の深刻な気候問題は避けられたかもしれない。また、石炭と石油の使用を制限する社会は、より低い生活の質を導いていただろうと考えるのは誤りである。この考えは、予防に力を入れる世界では技術革新が阻害されるという批判者の主張につながる。もし化石燃料の使用が特定産業に制限され、個人輸送には許されていなかったなら、科学者と技術者は自身の活力と創造力を他の分野に向けていただろう。おそらく、彼らは、より限られたエネルギーで、より安全に機能する社会を構築することに貢献したに違いない。動物実験に関する規制が化粧品の開発をより人道的な方向に転じさせたのと同じように、予防原則は技術革新に足かせをはめるのでなく、その方向性を変えさせる可能性が高い。

 実際、科学研究そのものが、予防を支持するように変わる必要があるかもしれない。個々の要素だけでなく、多数の要素の相互作用も調べる研究、あるいは古い問題にこだわるよりも新しい問題を探る研究は新技術のリスクを評価する助けになりうる。そして、科学は新たな市民の活力を生み出す必要があるだろう。「科学は商業化されてしまっている」と指摘するのは、科学・環境健全性ネットワークのキャロリン・ラフェンズバーガーである。彼女によると、「過去10〜15年間に人間がつくり上げたものは世界規模の経済競争力という目標をもつ科学」であり、たとえば「ガンの予防方法の開発より、新しい治療薬の開発により多くの資金を費やす」。今後、アスベスト関連の疾患で死亡すると予測されている40万人のヨーロッパ人は、この点について厳しい意見をもっているに違いない。

ゲイリー・ガードナー
(Gary Gardner)

WWマガジン2006年 1/2月号より

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