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 トップ > ブックス > 地球白書11−12 特集 アフリカ大飢饉を回避する農業改革

地球白書

地球白書
発売中

[全国学校図書館協議会選定図書/日本図書館協会選定図書]


ワールドウォッチ研究所編著

日本語版編集監修
エコ・フォーラム21世紀
日本語版編集協力
環境文化創造研究所

2850円(本体価格)


Amazon.co.jpで購入

 地球白書2011-12の特集

地球白書2011-12の特集 | 地球白書とは? | 著者・監修者紹介 | 目次 | 購入する 


 

やせてゆく大地、迫り来るアフリカ大飢饉
 マラウイは2005年にアフリカ最大級の干ばつにおそわれている。人々は空腹に苦しみ、木から樹皮をはぎとって、それを何とか調理して食べるほどの惨状であった。緊急援助食料が全土に配布されていなければ、数百万人が餓死したにちがいない。それにもかかわらず、村の人々は「干ばつよりも、土壌がやせてゆくことの方が重要な問題である」と口を揃えるのである。その理由をヒアリング担当者が聞くと、女性たちは「干ばつは恐ろしい。けれども、干ばつの発生は、十年あまりの間に数回のこと。土壌劣化は毎年、確実に食料不足を引き起す」といった。
 男性たちも、女性たちも誰ひとり異論はない。母親たちは、土壌劣化の問題に強くこだわるとともに、心底から「飢餓」に怯えている。世界最貧レベルといわれるこの村の人々でさえ、これほど長期に及ぶ、しかも解決の道筋のみえない生存の危機に直面したことがないのである。
 人々はもはや農地の土壌が劣化してゆくのを防ぐ術を持たない。収量は激減し、毎年1525%も落ち込んでいる。今後5年で、現在の収量がさらに半減するとの見方が大勢である。しかし、すでに恒常的に食料支援に依存する村もある。土地を捨て、肥沃な土地を求めて村ぐるみで、アフリカ大陸を移動することを選択肢のひとつにしている村も多い。アフリカの人口が現在ほど多くない時代であれば、それも理にかなった生き残り策であったのであろう。しかし、高い人口増加率が続いてきた今日のアフリカにあっては、非現実的な選択肢にすぎない。

 アフリカの農地が「土壌の地力喪失」という危機に直面していることは、専門家にとっては決して目新しい話題ではない。しかし、悲劇があまりに駆け足で迫り、今後わずか45年で数千万人が飢餓に陥る恐れがあるというのは、まさに初めて耳にする深刻な事態である。アフリカ大陸に、「アフリカ大飢饉」という悲劇が差し迫っている。

―本書、第6章より

 

●『本書に寄せて」

 「食料への権利」に関する国連特別報告官
オリビエ・デ・スキュター

世界はかつてないほど大量の食料を生産しつつも、同時にかつてないほど多くの飢餓人口をかかえている。これには理由がある。私たちが、食料生産の増大に意識を向けすぎて、分配面での問題も、環境への長期的影響もないがしろにしてきたからである。たしかに、収量の増加ではめざましい成果をおさめた。しかしながら、下のような事実も明確に認識しなければならない。

*収量は増加したが、飢餓対策ができていない。

*収量の増加は、飢餓と栄養不足を緩和するための必要条件であるが十分条件ではない。

20世紀後半に全体の生産レベルを飛躍的に高めたが、同時に二一世紀の深刻な生態系の崩壊につながる状況を生み出した。

 くわえて、アフリカの状況はいっそう厳しい。第一に、サブサハラ・アフリカ〔サハラ砂漠以南のアフリカ〕諸国では、穀物の国際市場への依存度が大きく高まっている。その結果、過剰な投機資金が国際市場へ流入したことで価格が急騰した場合には重い負担がかかる。とりわけ食料価格の上昇は石油価格の上昇と同時に起きやすいため、事態はいっそう深刻になりがちである。
 
 第二に、気候変動が農業生産に多大な影響を及ぼすことについては、多くの証拠がある。実際、降雨のみに依存する天水農業を行っている地域で、これまでの農業生産レベルを維持できるかどうかが危ぶまれている。国連開発計画(UNDP)によると、気候変動の直接的な結果として2080年までに新たに飢餓に陥る恐れのある人々は、六億人に達する可能性がある。

サブサハラ・アフリカでは、乾燥および半乾燥地域が6000万〜9000万ヘクタール増加すると推定されている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、南アフリカでは天水農業の収量が2000年から2020年の間に半減するとみている。多くの発展途上国における農業生産の減少は、他地域の増加で部分的に埋め合わせることができるが、全体としては、生産能力は2080年代までに最低でも3%、予測される炭素の肥料効果(大気中の二酸化炭素濃度の上昇により、収量が増える)が現実のものとならなければ最大で16%低下する。

「緑の革命」は、多分に女性を無視した革命だった。なぜなら、農業分野の融資や農業改良普及サービスは主に男性を対象とした事業であった。また、「高収量品種の種子」や「化学肥料・農薬」といった生産資材を購入する経済的な余裕は、ことさら女性にはなかった。

 発展途上国の食料自給能力は、環境に配慮し、くわえて農村地域の貧しい人々のためになる農業生産を支援することで高められる。アグロエコロジカル農法は、化学製品の使用割合が低いという一般的な特徴があり、高価な化学肥料や農薬への依存が抑制されている。堆肥の原料は、家畜の排泄物や作物残渣(茎や葉などの非食用部分)などとして、大部分が農地で自給できる。さらに、マメ科の植物(共生する根粒菌が空中窒素を土壌に固定する)を利用して土壌を豊かにすることもできる。



 地球白書とは?

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 『地球白書』は、1984年から米国ワールドウォッチ研究所が年次刊行物として発刊しています。様々な言語に訳され、世界で多くの研究者・政治家・政策スタッフ・企業関係者・教育関係者・学生に読まれています。

 日本では1993年から翻訳されています。ワールドウォッチ研究所・著者等についてはこちらをご覧ください。

(左)「地球白書」創刊号

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 ※書店で購入する場合

店頭にない場合は、以下をメモして注文してください。
ISBN 9784948754423  書名 地球白書2011-12

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honto
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検索の場合はISBN 978-4948754423 か書名 地球白書2012-13 をお使いください。
「在庫なし」と表示された場合はブックサービスをお勧めします。

英語版はAmazon.co,jp等でお買い求めください。
State of the World 2011: Innovations that Nourish the Planet

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 著者・監修者について

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「地球白書」記者会見
「地球白書」記者会見

※ワールドウォッチ研究所について

 1974年にレスター・ブラウン氏が米国ワシントンDCに設立。人口・エネルギー・食料・地球温暖化・気候変動・安全保障・水・生態系など様々な環境問題を対象とし、雑誌"World Watch(ワールド・ウォッチ)"、年次報告書の"State of the World (地球白書)"などが多くの国々で読まれています。環境問題がさほど注目されていなかった設立当初から、独立非営利の研究機関として様々な警鐘を鳴らしてきました。

※クリストファーフレイヴィン

  1955年、カリフォルニア州に生まれる。1977年にワールドウォッチ研究所へ。1990年に研究担当副所長に就任、2000年にレスター・ブラウンにつぐ第2代の所長に就任。 気候変動・エネルギー関連が専門。リオ・デ・ジャネイロ地球サミット・京都会議・ヨハネスブルク地球サミット等に参加。その他、多くの気候変動・エネルギー関連の研究プロジェクトを手掛ける。The New York Times、Technology Review、The Harvard International Review、Time Magazineにコラム等掲載。BBC、CNN、NPR、Voice of America、PBS等に出演。

※日本語版監修―エコ・フォーラム21世紀

環境監査研究会代表幹事 後藤敏彦
国連大学副学長 武内和彦
地球環境戦略研究機関 理事長 浜中裕徳
東京大学 名誉教授 林 良博
早稲田環境塾 塾長 原  剛
早稲田大学 環境総合研究センター 顧問 福岡克也
京都大学名誉教授 松下和夫
日本気候政策センター 理事長 森島昭夫
国連大学名誉副学長 安井 至
(五十音順)

事務局  織田創樹 清水久敬 四條舞美

※日本語版編集協力

環境文化創造研究所

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データ年鑑
環境問題をはじめる
レスター・ブラウン著作

地球環境データブック

こども地球白書 プランB レスター・ブラウン自伝

 目次

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『地球白書 2011−12』

目次

本書に寄せて
はじめに
アフリカ地図
環境界の一年間の主要動向

第1章 飢餓のない世界を築くための展望
水産業も、飢餓や貧困の緩和に貢献する
高水準の食料価格、低水準の農業開発投資
飢餓と闘うアフリカ大陸
今日の世界──肥満と栄養不足がそれぞれ10億人に近い
化学肥料や農薬へ過度に依存してきた近代農法

◆品種改良に留まらない取り組み
品種改良に重点を置いてきた農業研究投資
地力を失い、乾きゆくアフリカの農地
灌漑拡大に劣らず重要な「農地における水管理改善戦略」

◆農場(生産)に留まらない取り組み
生産量の25〜50%が捨てられている
アフリカの最貧国では輸入食料への依存度が二倍に高まっている
都市貧困層を支える都市農業
学校での食育を飢餓の軽減に役立てる
在来種や野生の食料資源を活かす

◆アフリカに留まらない取り組み
長期的視点から、食料援助策を見直す先進国
「気候変動の緩和」に貢献できるアフリカ農業
サウジアラビアや中国などによる、アフリカの「農地の争奪」
先進国もかかえている食料・農業問題

◆フード・セキュリティ強化への新たなステップ
「二一世紀の農業改革」を目指して
コラム1─1増加する飢餓人口と不足する農業農村開発支援
〈現場から〉
バランスの取れた農業開発支援を強化する
 大きな増産効果を上げたアジアの「緑の革命」と中国の「生産請負制」/短期的増産から持続的農業へのシフト/
「自主性」と「伝統的農法」を尊重する「地域参加型開発」/国際的な協調活動による農業開発/
「成功事例」は「開発戦略」を代替できない/「成功」には賛否両論がつきまとう

第2章 エコアグリカルチャーを農業の主流に
エコアグリカルチャーのランドスケープ

◆アグロエコロジー(農業生態学)に基づいたアグロエコロジカル農法
作物や家畜の多様性を活かす農法

◆エコアグリカルチャー・ランドスケープ
ランドスケープ・エコロジーによる評価
先住民のアグロフォレストリーによって生まれた生物回廊
輪換放牧によって、サバンナの草地を再生する
「無農薬栽培」を導入して、収入を増加させた小規模茶業組合農家

◆多様な恩恵をもたらす可能性
生産・生計・環境に多様な貢献をする、発展途上国のアグロエコロジカル農法
干ばつに強い有機水稲栽培
求められているランドスケープ測定法

◆可能性を現実のものに
エコアグリカルチャー・ランドスケープの包括的な取り組み
フード・シェッドのもつ可能性に立ち返る
アグロエコロジカル農法に関心を寄せ始めた巨大アグリビジネス
10億ドルのポートフォリオによって、                           
アグロエコロジカル農法を支援するテラフリカ

◆エコアグリカルチャーを、世界の農業の主流に
企業的大規模農業にはない共生的機能
持続可能な食料増産と生態系の保全を実現するために
気候変動下のフード・セキュリティのレジリアンスの強化
社会的・生態学的な差異を見極めて、最適な農法を推進する

コラム2─1アグロエコロジカル農法の例

〈現場から〉
マダガスカルにおけるコメの品種改良の改革
 在来種は、不順な天候でも収量が比較的に安定している/農業者と連携して「作りやすい品種づくり」を目指す/
コメ増産の前提条件は「水管理方法の改善」/種子生産が、農業者組織によって始まっている

第3章 野菜の栄養的・経済的可能性を活かす
「穀物の革命」と同時に「野菜の革命」を展開する
微量栄養素が不足しているアフリカの食事
野菜と果実の農業研究費は穀物の約13%にすぎない

◆農業者の声を聞く
地域コミュニティごとに最良品種を選定する

◆農業者に種子を供給する
ハイブリッド野菜よりも育成しやすい自然受粉品種
タンザニアのトマト農家の純益を40%増加させた新品種

◆在来種の野菜を活用する
在来種の特徴を活かした品種改良
消費者にも好まれ、生産者の収入を増加させたアフリカ・ナスの新品種
需要が伸びている葉菜 ──アフリカ・イヌホオズキとササゲ
生産者のみならず、消費者にも在来種を見直してもらう

コラム3─1改革が期待される作物の品種改良
コラム3─2食材となる自生植物を活かして、気候変動に適応する

〈現場から〉
学校農園で展開される改革
「実際に栽培し、調理し、味わってみる」──スローフード協会との連携/
学校農園の生徒の家庭も、地元農家を支援するようになる/通学制でも全寮制でも、「農場から食卓まで」を学ぶ
「アフリカの緑の革命」を目指す「一エーカー基金」
グループのメンバーが保証人になり、借り受けた農業者の98%が完済/
「豊作だったら、何を実現したいのか」──農業者の夢が基金メンバーに力を与える

第4章 農業における水生産性を改善する
大量の水を必要とした「緑の革命」

◆サブサハラ・アフリカの水の脆弱性
サブサハラ・アフリカでは農地の四%しか灌漑されていない
2009年、「アフリカの角」では数百万人が飢餓に直面した
単収格差を解消すれば、世界の食料需要増の四分の三を賄える

◆水を汲み上げる人力ポンプ
バングラデシュで、三五ドル前後のペダル式ポンプによって灌漑が可能に
アフリカでも、ペダル式ポンプの普及が始まった

◆手頃な価格のマイクロ灌漑で、水を確保する
バケツ灌漑によってガーナの灌漑面積は倍増
ベナンでは、太陽光発電によるマイクロ灌漑によって増収を実現

◆雨水の効率的な利用
環境保全型農業は「緑の水」を増加させる
土壌水分の保全と根域への施肥によって、テフの単収が倍増
環境保全型農業によって、天水農業のレジリアンスを高める
栽培環境に適合した農法によって、水や農地の生産性を高める
情報技術(IT)によって、衛星画像と村の無料電話を結ぶ
大量の労働力を必要とする土壌・水保全型農法の普及に必要なインセンティブ
ケニアでは、段々畑の構築によってトウモロコシの単収が50%増加

◆未来をみすえて
気候変動によって、貧困層の水事情はいっそう悪化する

コラム4─1ソーラー点滴灌漑菜園

〈現場から〉
ウォーター・ハーベスティング
ルワンダでは、厚さ〇・八ミリのプラスチックシートで小さな貯水池を造る/
ケニアでは、マサイ族の女性たちが雨水タンクを造る/
政府に期待されるファシリティーター機能と奨励補助金

第5章 農業の研究開発を農業者が主導する
果敢なチャレンジを続ける農業者たち
農業者のニーズと乖離した研究や開発計画

◆農業者主導の農業改革を支援する
ソーシャル・クレジットを立ち上げる女性グループ
農業者が運営の中心になる「地域改革支援基金」

◆農業者が農業改革の普及を加速する
展示会やワークショップで、チャレンジの課題や成果を広く伝える

◆なぜ、農業者主導の農業改革を支援するのか

◆研究開発に取り組む人々のための教訓
コラム5─1エチオピアにおける農業改革の共有

〈現場から〉
ザンビアにおける穀物輸出禁止政策
南アフリカ共和国から、ザンビア経由でコンゴ民主共和国に向かうトウモロコシ/
食料増産の妨げとなる穀物輸出禁止政策/食料品のアフリカ地域内自由貿易への期待

第6章 アフリカが直面する「土壌の地力喪失」と「大飢饉」
やせてゆく大地、迫り来るアフリカ大飢饉

◆「アフリカ大飢饉」につながってゆく「パーフェクト・ストーム」
「パーフェクト・ストーム」を引き起こす
「家畜の排泄物」・「休閑農法」・「化学肥料」・「気候変動」の現状
土壌劣化がもっとも深刻な半乾燥気候および亜湿潤気候に位置する低地

◆すでに現れている危機の兆候
急速に失われている土壌有機物
劣化した土壌では、雨が土壌に浸透しない
土壌の劣化と人口増加が、「土地をめぐる争い」を深刻にする

◆土壌劣化の進む地域において、農業者に残された道

◆四つの土壌劣化対策案を評価する
第一案─「化学肥料補助金」
第二案─「家畜の排泄物」および第三案─「堆肥」
第四案─「緑肥・被覆作物」

◆緑肥・被覆作物のポテンシャル
数千年にわたり続けられてきた緑肥農法
作物と緑肥と被覆作物を混植する三層農法

◆緑肥・被覆作物農法への批判

◆勇気づけられるドゴン族の取り組み

〈現場から〉
タンザニア・ザンジバル島におけるキャッサバの新品種開発
キャッサバの二大病害の損害額は年間10億ドルを超える/
二大病害に耐性のある新品種の開発と農業者による試験栽培

第7章 地域の農業資源と食料の多様性を守る
輸出用商品作物を大増産、一方で主食のコメを輸入に依存するギニアビサウ

◆野生資源の保全
エチオピアでは、南部高地の野生コーヒーの付加価値を高める
セネガルでは、女性グループが地域特産の植物を加工品にして販売

◆農業の生産現場における生物多様性を増大させる
マリのドゴン族の伝統的調味料を、イタリアの腕利きシェフが高く評価

◆生物多様性と市場
エチオピアでは、養蜂研修によってハチミツの品質を大幅に改善

◆生物多様性と地域コミュニティ
地産地消は、地域コミュニティのレジリアンスを強化する
ウガンダ、コートジボワール、ケニアにおけるスローフード協会の支援

コラム7─1農業生産現場における生物多様が紡ぐ未来

〈現場から〉
ケニアにおける動物遺伝資源への脅威
 生産効率優先で、頑強さが失われた改良品種
セネガルにおける太陽熱調理器による恩恵
 女性や子供が薪集めから解放された

第8章 気候変動に対するレジリアンスを構築する
8 ─1「気候変動への適応」における不可知論的アプローチ

8─2農業者の再緑化による「気候変動の緩和」
残念ながら「緑の壁」は砂漠の南進を防げない

◆再緑化はすでに始まっている
広がりをみせる農業者管理型天然更新
資源利用者を主体とするアフリカ再緑化イニシアティブ

◆規模拡充のための方策
〈方策1〉
〈方策2〉
〈方策3〉
〈方策4〉
〈方策5〉
〈方策6〉
〈方策7〉
〈方策8〉
〈方策9〉
〈方策10〉
〈方策11〉
〈方策12〉
〈方策13〉
〈方策14〉
〈方策15〉
〈方策16〉

農地の再緑化による便益の最大化
〈量的規模拡充〉
〈機能的規模拡充〉
〈政治的規模拡充〉
〈組織的規模拡充〉

8─3食卓から取り組む「気候変動の緩和」

◆人類のコモンズである大気を蝕む
温室効果ガスの主要な排出源である農業食料システム
石油依存型農業に比較して収量は同水準で、干ばつには強い有機農業
世界規模で有機農業に転換すれば、食料生産は長期的には安定する

◆世界の農業をアグロエコロジーに転換してゆくための方策
大規模農畜産業へ巨額な補助金を支出しているアメリカ農業政策
有機農業振興を目指す農業政策

〈現場から〉
マラウイでは/ザンビアでは
 アフリカ農業にエバグリーン革命を

第9章 ポストハーベスト・ロス ─食料不足問題のもうひとつの核心
「緑の革命」から取り残されたポストハーベスト・ロス

◆膨大なポストハーベスト・ロス
アジアにおけるコメのポストハーベスト・ロスは一三%前後に及ぶ
都市の食料不足は革命の契機にもなった

◆食料不足のアフリカにおける「食料廃棄」
ザンビアでは、貯蔵トウモロコシがアフラトキシンに汚染されている
ポストハーベスト・ロス対策に取り組み始めたザンビア農業省
日本などの支援で建設された集乳施設
ギニアでは貯蔵方法の改善で、ピーナッツのアフラトキシン汚染が大幅に減少

◆多様な貯蔵方法
改善の余地が大きいイモ類の貯蔵
インド政府がコールドチェーンの整備を進める
ドライフルーツや発酵乳は持続可能な保存方法
貧困農家を救うバイオテクノロジーへの期待

◆「農業者の貯蔵施設改善への支援」は「農地を必要としない食料増産方法」になる
ポストハーベスト・ロスを解消して、食料の供給量を増やす                  

コラム9─1アジアにおけるポストハーベスト・ロス

〈現場から〉
ガンビアのカキ漁を持続可能なものにして、暮しを向上させる女性組織

第10章 増大する都市人口の食料を支える都市農業
社会的弱者のフード・セキュリティに貢献する都市農業
サブサハラ・アフリカの各国の首都で重要な役割を果たしている都市農業

◆食料を生産し、フード・セキュリティを強化する

◆コミュニティを立ち上げる

◆女性の地位を向上させる

◆環境を改善する

◆都市農業を支援する諸政策
〈アルゼンチンのロサリオでは〉
〈アメリカのサンフランシスコでは〉
〈ウガンダとケニアでは〉

◆都市農業の将来
コラム10─1都市農業の可能性を広げる

〈現場から〉
西アフリカにおける廃水灌漑の安全性向上を促進する
人間の排泄物を土壌有機分として農地に還元する

第11章 女性農業者の知識と技術を活かす
貧しい女性が支えているアフリカの食料

◆世界市場への参入を目指す女性たち
シアバター女性生産者を支えたフェアトレード市場
従来の国際市場では苦境に立たされるシアバター女性生産者

◆女性を対象とした農業改良普及事業
女性の農業改良普及員による女性農業者の支援
家族の生活改善に直結する農業改良普及事業

◆マイクロ・クレジットで貧困と闘う
男性を優先するマイクロ・クレジット
女性アントレプレナーが女性農業者組織を立ち上げる

◆新たな技術がもたらす効果
ラジオ受信から双方向の携帯電話へ
女性の地位向上のためにも望まれるインターネットの普及
女性が参加しなければ、いかなる開発プログラムも成果は期待できない

コラム11─1社会資本投資:貧困を解消してゆくための改革
コラム11─2カカオ生産地で女性のエンパワーメントを支援する

〈現場から〉
演劇を通して女性を支援する
「適正技術」に関する判断基準

第12章 アフリカで展開される「海外勢力」による農地争奪と農業投資
アフリカに農地を求めるサウジアラビア
水面下で行われる「農地略奪」取引

◆ランド・ラッシュ ──エチオピアの土地に投資が殺到している
サウジアラビア政府の補助金も投入されるランド・ラッシュ
「海外農業投資は、農場労働者の雇用をもたらすのみ」という批判

◆「農地の略奪」に渦巻く不満と不安
「アフリカに未利用の空き地はない!」
「いつまでも先進国の慈善的余剰農産物を受け入れていては、飢餓から解放されない」

◆誰のための農業開発であるか
アフリカ農業開発にみる新植民地的害悪
アフリカを舞台にしたランド・ラッシュへの基本的な問い
〈一つ目の問い──「誰が、何を所有しているのか」〉
〈二つ目の問い──「誰が、支配権を握っているのか」〉
〈三つ目の問い──「誰が、支払うのか」〉

〈現場から〉
食用農産物の貯蔵・加工方法を改善する

第13章 農産物の増産に留まらず、バリュー・チェーンを強化する
慢性的飢餓のあるザンビアで「トウモロコシが余っている」

◆ゼロから立ち上げるフード・セキュリティ

◆無視されている外部費用

◆海外からの支援

コラム13─1農産物の取引状況を改善する
コラム13─2携帯電話を利用した銀行サービス

〈現場から〉
飢餓救済を超えて動き出す教会

第14章 畜産改革によって、食料生産を改革してゆく

◆発展途上国でも変化しつつある畜産
発展途上国では貴重な資産とされている家畜
発展途上国でも始まった畜産の集約化

◆より適正な給餌戦略
給餌の改善に取り組む小規模飼養者

◆より健全な家畜
近年、とくに問題となった人獣共通感染症
発展途上国の実態とかけ離れている獣医政策
遊牧民の伝統的な知識を家畜の疾病監視に活かす

◆気候変動への取り組み
植生の衛星画像によって可能になった家畜保険
小規模な家畜飼養者や有畜複合農業者の環境保全機能への報酬

◆結論
コラム14─1モザンビークにおける家禽のニューカッスル病の抑制

〈現場から〉
ルワンダにおける小規模畜産

第15章 生態系保全と食料生産を両立させてゆくための改革
15─1「農業」という複雑なシステムの理解における改革

15─2農業開発プロジェクトの評価における改革

15─3枠組みにおける改革 ──人類と生態系を支えるために
企業型大規模農業による影響
エコアグリカルチャーへの転換
農業者および農村コミュニティを支援する
不可欠な「世界レベルの食料システムの民主化」
国際的な「農地の争奪」を中止させるために
「食料への権利」に基づいたアプローチ

15─4ガバナンスにおける改革
遺伝子工学(GE)への過度の期待
多様な農業開発モデルを的確に評価・選択する
コメの自給を再度確立したインドネシア農政
地域レベルで取り組む西アフリカ諸国経済共同体
アグロエコロジカルな病害虫防除を開発する
コンプライアンス・アドバイザー/オンブズマン
社会的監査によって確保される公的透明性
農業は全ての人々の「食料への権利」を守る闘いである

15─5 政策転換における改革
オバマ政権による「フィード・ザ・フューチャー」イニシアティブ
投資の大半はアグリビジネスや貿易の拡大に向かう
国際食料市場に対しては規制も必要である
政府は強いブレーキもアクセルも踏める
期待される国際的ガバナンス
「農地の争奪」に対しては、強制力を有する行動規範が必要である
「食料への権利」を実現するための取り組み
エクアドルとブラジルの先駆的な取り組み

コラム 15─1農業研究開発投資額において、公的機関を上回った民間部門

原注

索引


   

 

 

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