過剰投資、貿易黒字、環境破壊への懸念浮き彫りに。
アジア開発銀行(ADB)は9月6日、「2006年アジア開発展望」の改訂版を発表した。中国の経済成長率予測を9.5%から10.4%に上方修正し、07年の成長率は9.5%と予測している。同国の今年上半期の国内総生産(GDP)は、固定資産投資〔少なくとも1年間は換金されないと予想される長期有形資産への投資〕および対外貿易の急増を受け、前年の9.9%を上回る10.9%の成長率を示した。
中国政府は主要金利の引き上げをはじめとする金融政策で経済の冷却を図っているが、アジア開発銀行は下半期の減速はごくわずかなものにとどまるとみている。開発銀行のチーフエコノミスト、イフサル・アリは、改訂版の発表に際し、「この投資景気が続けば、慢性的な過剰設備に陥ることが懸念される」と述べた。
06年上半期の固定資産投資は、前年下半期に投資率が持ち直したため、29.8%増加した。輸出は前年比で25.2%、輸入も21.3%伸びた。輸出入の成長格差が広がり、貿易黒字は上半期で614億ドルに拡大した。北京税関によれば、7月の貿易黒字は3か月連続の記録更新となる146億ドルに達した。
投資の急増に牽引された経済活動が痛みを伴って後退する可能性や過剰設備への懸念が改訂版で浮き彫りにされるなか、対中投資抑制の是非は同国の経済学者の間に激しい論争を巻き起こした。政府は経済活動を抑えすぎないよう慎重に投資規制を行うべきだと強く主張する向きもある。新華社の「経済観察」は、中国のGDPに占める外国投資の割合は14.8%で、世界平均の21.7%を大きく下回るとしている。記事に引用された国連資料によると、世界の海外直接投資(FDI)の70%超は先進国が受け入れており、昨年は総額8970億ドルのうち5730億ドルが流入した。
中国当局はさまざまな経済成長抑制策に努めているものの、改訂版は経済を混乱させるような減速はきわめて危険だと指摘する。なぜなら、依然として国内の優先事項に位置づけられている「雇用創出」と「広がりつつある所得格差の軽減」は、いずれも経済の持続的成長を必要とするからだ。
さらに、環境悪化と低いエネルギー効率への懸念の増大も強く示唆されている。中国はGDP成長がもっぱら重工業に牽引されてきたため、好景気に伴う深刻な汚染リスクを抱えていると警告。対策として、汚染の少ない(環境への負荷の少ない)エネルギー技術と監視体制の強化を提唱している。
アジア発展途上地域全体(43か国)の06年の成長率は、4月の時点で7.2%と予測されていたが、7.7%に若干上方修正された。
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