東北部沿岸の遼寧省大連市で建設が進められている中国初の海水ポンプによる冷暖房システムが、この冬から稼働を始めると中国新聞が伝えた。海水の温度差で発生したエネルギーを建物の空調に利用する仕組みで、省エネ・環境保護に大きな可能性をもたらす。
大連市の星海湾商務区で進行中のこのプロジェクトは、地元の大型設備メーカー「氷山集団」が主導する。第1段階は区の会議場とプールと合わせて30万平方メートルに暖房を設置。第2・第3段階では近隣の住宅地もカバーし、暖房供給面積を200万平方メートルに拡大する予定だ。
海水利用の冷暖房が普及すれば、中国は発電施設および送電網への多額の投資を回避できる可能性がある。同国は電力の半分以上を、深刻な汚染をもたらす石炭火力発電でまかなっていることから、環境面でも大きなメリットが期待される。また、オゾン層を破壊するクロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)などの冷媒も段階的廃止が進みそうだ。
中国における冷暖房への海水利用は膨大な可能性を秘めている。北部の黄海および渤海湾の海水温は、もっとも低い2月でも2℃以上あるため、ポンプを稼働させて発熱することができる。夏は水深35mで12〜14℃となる。南シナ海の海面水温は1年を通じて28.6℃前後で比較的一定している(深層では2.36℃)。
星海湾のプロジェクトは目下、少なからぬ援助や投資を呼び込んでいるが、この冬の暖房をどれだけ供給できるかで真価が問われる。成功すれば、他の沿岸地域にも広がっていくだろう。中国の11万kmあまりの海岸線に点在する島や半島には、多くの大都市がある。これらの都市のほとんどは猛烈な経済成長を遂げ、商業施設および住宅の空調需要が急増している。
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