中国の富裕層の調査を毎年行うことで知られる高級ビジネス誌「胡潤百富」は、「2006年度エネルギー業界長者番付」を近ごろ発表した。この番付では、中国で成長著しいエネルギー業界で得られた資産をランク付けしている。太陽エネルギー業界の巨頭である施正栄(シー・ゼンロン)は、個人資産額19億5000万ドルでトップの座を獲得し、山西大土河焦化(シャンシーダトヘジォファ)有限責任公司(石炭大手)の賈延亮(ジャ・イェンリァン)、王鎖蘭(ワン・ソラン)夫婦が5億2500万ドルで2位につけた。
石炭鉱業、石油・ガス供給、発電などの従来のエネルギー事業主が、依然として同長者番付を独占しているものの、太陽、風力、電池、バイオ、ごみ焼却発電、熱エネルギーなどの“クリーンエネルギー”分野の中国人長者は、昨年のわずか4人から14人に増加した。胡潤百富のCEOであるルパート・フーゲワーフ(中国名:胡潤:フー・ルン)は、中国富裕層の個人資産を値踏みすることは学問の分野と言えるくらいの特殊な技術であると認めているが、このランキングによって、中国エネルギー市場の動態が垣間見え、また、民間企業がエネルギー全体をいかに国営企業と共有しようと努力しているかが明らかになっていると信じている。
上海証券日報によると、2006年のランキングは、2つの大きな流れを映している。1つは、現在行われている伝統的な石炭産業の改革、そしてもう1つは、民間企業のクリーンエネルギー分野への急速な参入である。新華社通信によると、国家発展改革委員会(NDRC)が監督している石炭産業の改革は、技術の近代化を促進し、予測された需要の伸びに対応できるよう強化すると同時に、環境を保護し、産業の事故を減らすことを目的としている。新たな政策では、大手民間石炭会社数社は、中小の炭鉱会社の合併、革新、再編や、競争力のある価格での海外市場への参入、また、深部石炭精製への転換を行うことが可能である。これらの取組みにより、新たな大物実業家が現れている。
従来のエネルギー産業の投資家とは違って、クリーンエネルギー分野の投資家は、最先端の技術を導入することによって思いがけなく富を得ている。サンテック・パワーを世界大手の太陽電池製造企業に作り上げたエネルギー業界長者番付トップの施正栄に加えて、5人の中国の実業家が、太陽技術に投資することによって巨額の富を得ている。また、クリーンエネルギーの大物である兪建秋(イゥ・ジェンシュウ)、バイオディーゼル製造大手の古杉集団(グシャン ジトァン)の代表で、資産総額4億ドルで5位にランクインしている。
エネルギー効率のよい技術の研究開発に取り組んでいる会社、北京神霧能技能(ベジン・シンウーノン・ジノン)有限公司の代表であるウー・ダオホン博士は、同長者番付21位である。この会社は、近ごろ、アメリカにある温室効果ガス排出の登録、削減、取引を行うシカゴ気候取引所(CCX)への中国で最初の参加企業となった。クリーンエネルギー技術により、電力産業でも“環境に優しい”実業家が現れている。同11位の杭州錦江(ハンジォー・ジンジャン)集団有限公司のドー・ゼンガンは、中国全土に10数施設を保有するごみ焼却による発電で中国最大の民間企業経営者である。
国営企業は、中国の化石燃料産業を独占し続けており、民間企業は供給ではある程度関与しているものの、石油の探査や精製を行うことは困難である。しかしながら、中国政府は、再生可能エネルギー市場の発展には、あらゆる産業からの参加を促している。2005年2月28日、国務院は、再生可能エネルギー法を可決し、本年1月1日に発効した。中国は、この法律で「エネルギー構造の改善、エネルギー供給の多角化、エネルギー安全保障の確保、環境の保護、そして経済と社会の持続可能な発展の実現」を目指している。
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