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China Watch 2006-4

【ChinaWatch】先駆的なニュースレターが、
       中国の有機農産物の発展を推進

リラ・バックレー

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 「“有機”的潮流(オーガニック・トレンド)」という新しい月刊ニュースレターが、最近北京で創刊された。「環境にやさしく健康的な食品の生産と加工」を全国で推し進めることを目的としている。発行者の“中国環境と持続可能な発展資料研究センター(CESDRRC)”は、国家環境保護総局の下部機関であり、環境と持続可能な開発に関する国内最大の公共情報センターである。CESDRRCからは、毎月のCESDRRCニュース、医薬品と環境についての入門書、砂漠化の様子を伝える写真集、北京に特化した有機食品・エネルギー・建材・水の消費者ガイドなど、さまざまな出版物が発行されているが、これに一番最近加わったのが「“有機”的潮流」だ。

  一般市民に環境情報を提供するというCESDRRCのミッションにもとづき、「“有機”的潮流」は中国で拡大する有機部門の情報を研究し、とりまとめている。「この15年間で、有機食品は飛躍的な成長を遂げました」とCESDRRCでディレクターを務める「“有機”的潮流」編集長のエバ・スターンフェルドは語る。「でも、中国ではまだ、有機食品について大きな混乱があります。私たちは、ニュースターを通して、有機食品についての情報や動向がもっと人々に伝わるようにしたい、と考えています」
中国で初めて有機認証商品が開発されたのは、1990年代初頭のことだ。外資系企業が、紅茶と大豆製品の特殊品の輸出市場に出荷できるよう、農家と協力し始めたのである。現在中国では、有機食品が生産されている4000ヘクタール以上の土地が、30以上の認証者によって監督されている。認証者はそれぞれ独自の基準と認証マークを有し、果物や野菜から穀物、ワインにいたるまで、さまざまな商品が対象となっている。上海では、有機商品の人気が高く、そのような商品だけを取り扱う「オー・ストア」というスーパーマーケットがあるほどだ。このスーパーは、2005年秋に開店し、約70の国内生産者の商品を販売している。また、北京では、「自然の友」という環境グループが最近、近隣の「留民営(リュー・ミンイン)生態農場」から消費者の食卓へ、旬の有機農産物を週1回届ける事業を始めた。

  2003年には、国家環境保護総局の有機食品発展センターが、ドイツ技術協力公社(GTZ)の協力のもと、中国初の有機認証基準を策定した。この基準はその後、有機商品を監視する世界随一の機関である国際有機農業運動連盟(IFOAM)からも認められている。さらに2005年初頭には、このような認証マークの標準化をさらに進め、高い有機認証基準を確保するため、有機農産物に関する中国初の国家基準が、国家認証認可監督管理委員会により策定された。2006年半ばから、すべての有機食品は、いかなる国際認証マークが付いていても、それに加えてこの国家基準を満たしたというラベルの貼付が必要となる。これは、中国の有機市場の標準化を進め、その輸出力を高める一助となるはずだ。

  有機商品は現在でもほとんどが輸出市場に向けたものであり、国内の流通量は限られているが、これと平行して「緑色食品(グリーンフード)」運動が起こった。良質の商品や持続可能な食品を求める中国人の需要を満たそうという動きである。農業部は1990年、国内市場に向けて「汚染されておらず安全で良質で栄養価の高い食品」を生産するため、中国緑色食品発展センターを設立した。現在、全国に43の事務所がある。このセンターの「緑色食品」マークは、限られた量の化学肥料や農薬を使って育てられたものに与えられる。今では中国全土に広く流通し、認知度も高まっている。

  皮肉なことに、緑色食品運動の成功は、有機市場のさらなる発展を阻害する要因となっている。「みんなが、緑色食品マークを知っています」とスターンフェルドは言う。「でも、それが混乱も招いてしまいました。街を歩く人々に、健康に良いのは有機食品と緑色食品のどちらだと思いますか、とか、環境に良いのはどちらですか、と尋ねたら、北京市内でさえ、ほとんどの人が『緑色食品』と答えるでしょう。中国語で『緑色』は『有機』より響きの良い言葉ですし、いずれにしても『有機』という言葉はほとんどの人が聞いたことがないでしょう」
また、緑色食品は、有機部門に比べ、政府から大きな支援を受けてきた。緑色食品のほとんどが国営農場で栽培されているのに対し、有機部門は、主に国際企業が個別の農家や村の協同組合と直接協力することによって発展してきたのである。「農業部はもともと、有機農業の推進に乗り気ではありませんでした。まずは13億の国民を食べさせることに力を注がなければならない、というのが彼らの言い分だったのです」とスターンフェルドは説明する。その目標を健康的に達成する手段として、農業部は緑色食品に着目したのだという。「でも、国際食料市場で中国の存在感が増すにつれ、農業部は有機マークを好意的に見るようになりました」。その理由は、従来の中国の農産物は残留農薬が多いために、国際市場に参入するうえで困難が生じていたことと、農業排水による深刻な水質汚染など環境問題が悪化したために、農業部がもっと環境にやさしい農法を模索せざるを得なくなったことにある、と話す。

  中国で有機部門の発展を阻害する要因は、ほかにもある。これまでの研究により、有機商品は従来の商品よりも栄養価が高く、おいしいものが多いことがわかっているが、見た目が悪かったり小さかったりするために売れ行きが悪いのだ。さらに、認証プロセスは非常に費用が高く付くし、有機農地に転換するまでには3年かかる。「貧しい農家にとって、農薬や化学肥料をまったく使わずに生き残るのは、容易ではありません」とスターンフェルドは語る。「もし収穫に失敗した場合、よりどころにするものが何もないのです」。この問題に対処するため、一部の有機認証基準の関係者は、農民が協同組合単位で認証申請を行えるようにすることを考えている。そうすれば、地域社会レベルあるいは村落レベルで、有機栽培への転換による資金面・時間面での負担も、恩恵も、分かち合えるからだ。
このような課題があるとはいえ、中国の有機部門のさらなる発展を阻害する主因は、人々の意識にある、とスターンフェルドは主張する。「多くの人々は、健康的な食品を買いたいと思っても、それをどこで、どのように買えるのか、知らないのです。そして、多くの農家は有機食品を有していても、それをどのように売ればいいのか、知らないのです」。この売買のルートが一度できあがれば、特に工業化の進んだ都市部で汚染が増し続ける中、有機部門の「急速で大幅な発展」が見込める、と彼女は力説する。「ここの人々は、汚染について、そして汚染による食べ物への影響について心配するようになっています」。そう言って、中国のメディアで最近、食品中の農薬や硝酸塩の危険な残留レベルについて複数事例を紹介する報道があったと話してくれた。

  中国で急増している中流階級の人々は、食べ物、特に良質の食べ物には、お金をかけるのをいとわない。しかし、スターンフェルドによると、「人々は必ずしも、良品の食べ物とは何かを知っているとは限りません。だから、フカヒレのような希少価値のある特殊な品を買ってしまうのです。彼らが、有機食品について、そしてその健康面や環境面での利点について知れば、必ず、高くてもそういう食べ物を買おうとするでしょう」。これは特に、一人っ子を育てる都市部の親たちにいえることだ。彼らは、わが子に「最上のもの」を与えるためには多大な犠牲もいとわないことが多いのだ、とスターンフェルドは述べる。

  創刊された「“有機”的潮流」ニュースレターは、有機食品が健康面と環境面でもたらす恩恵について、そして有機食品は緑色食品とどう違うのかについて啓発するために、一歩踏み出すものだ。また、北京市民にとっては、有機商品を買える場所や、北京で今秋開催される2006年中国国際有機食品・緑色食品博覧会など関連イベントについて知る貴重な情報源ともなる。
しかし、短期的に見ると、有機食品は今後もおそらく、主に国際社会や都市部の中上流階級のための特殊品であり続けるだろう。「人間は、基本的なニーズが満たされたときに初めて、環境問題について関心をもつ余裕が生まれるのです」とスターンフェルドは話す。中国で生まれつつある市場経済において、今でも大多数の人々は、何を食べるかを結局は価格で決めざるをえないのである。

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