近ごろ中国政府は、水管理に関する新しい法律を制定した。これにより水の使用許可システムの更新や、農業用水の価格設定が行われる。国務院は、この法律により灌漑での節水対策が進み、農民の節水意識が高まるものと期待している。法律は本年4月15日に実施される。
新法は、1993年に導入された水利用の許可制度をふまえたもので、水の使用許可の申請手続きや、川、湖、地下水などから直接取水する場合の料金システムについて規定している。それによると、水の価格水準は、水資源の源流を有する省政府が決定することになるが、中央の、あるいは省にまたがる節水対策の場合は、中央政府が水価格を監督することになる。
法律が実施されると、農民の金銭的な負担が増え、農業生産に影響が出るかもしれない。しかし、農民が自分の池や貯水池から水を引いたり、日常生活で水を使ったりする場合などは、使用許可の申請や水利用への支払いが免除される。また、一定量以内の水の使用も無料になるため、多くの個人生産者は水料金を支払わずに済むことになる。
中国の水消費量を劇的に減らすための最も効果的な方法は、農業分野での水の利用効率を高めることである。中国水利部によると、2004年の農業用水の消費量は約3590億立方メートルで、中国全体の水使用量の65%を占めている。その90%の約3230億立方メートルは、農地の灌漑に使われている。大半は農地の全面に水を張る湛水(たんすい)灌漑であるが、この方法だとふつう農地1ヘクタール当たり年間2万〜3万立方メートルの水が必要で、大量の水が無駄に使われる場合もある。
中国は過去20年間、深刻な水不足に悩まされてきた。北部を流れる黄河、海河(ハイホォ)、准河(ホワイホォ)の平均年間流水量は、10〜40%も減少している。水質が悪化しているため、水の豊富な地域でさえ水の供給量が減っている。最近の水資源の現状に関する報告書(中国科学技術部が資金提供)によれば、水不足による直接的な経済損失は年間平均2800億元(350億ドル)で、洪水による被害の2.5倍にも上る。
国連の世界水開発報告書によると、20世紀の100年間で世界の水使用量は6倍に増え、世界人口の増加ペースを2倍上回っている。灌漑用水は、現在すでに人間の生活で使う淡水のほぼ70%を占めているが、その量は今後も増え続けるという。2030年までに世界の食料需要は今より55%増えるとみられ、これを満たすために各国での灌漑用水の需要も増加するからだ。都市化が進んでいることも、世界の水需要を押し上げる一因となっている。2030年までには、都市部に住む人の数は世界人口の3分の2に上るとみられ、20億の人々がきれいな水や下水をはじめとする公衆衛生のサービスを利用することができないと予測されている。
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