河北省の水文・水資源調査局の最近の調査によると、北京の南に位置する華北平原中部で、2030年までに平均で浅層地下水位が16.2メートル、深層地下水位が39.9 メートル低下すると推定されている。新華社によると、地下水位の低下が続いていることから、この地域ですでに深刻な生態系と環境の問題がさらに悪化すると予想されている。
当局の予想は、地域の現在の地下水揚水量にもとづいている。華北平原中部の面積は約62,000 平方キロメートルで、中国の2つの「百万都市」の北京と天津(総人口は2,600万人)の主な水の供給源である。地下水がこの地域の水供給の90%も占めているが、都市部の生活用水や農工業用水の需要が急増しているため、無理な過剰揚水が行われている。
華北平原中部では、年間平均で約71億立方メートルの淡水が作られている。しかし近年、この地域によって供給された水需要は、年間平均121億立方メートルである。年間の水使用量は、2030年までに158億立方メートルまでさらに増加すると予測されている。水需給の格差を解消するために、地下水はひどく過剰に汲み上げ上げられてきた。同調査によると、過剰揚水が行われている地域は、浅層地下水で15,000平方キロメートル、深層地下水で40,000 平方キロメートルに及ぶと推定されている。
地下水の過剰揚水は、地下水位の低下だけでなく、帯水層の枯渇、地盤沈下、地下水の逆流(地下水の汲み上げにより、井戸付近の地下水が特に低下し、地下水が井戸へ向かって流れる地域)などの生態学的な問題を引き起こしている。ある予備的な統計によると、帯水層が枯渇した面積は1,700 平方キロメートルまで拡大したという。さらに1996年までに、地下水位の低下により70センチメートル以上の地盤沈下が発生した地域は、約621平方キロメートルを超えており、2030年までには28,836 平方キロメートルまで広がると予測されている。ワールドウォッチ研究所の『地球環境データブック06-07』には、都市中心部で、建物の弱体化、道路、上下水道などのインフラの破壊など、広範な被害が発生する可能性があると報告されている。また、華北平原には現在、約21の地域で地下水の逆流が観察されており、総面積は40,000平方キロメートルにまで及ぶ。状況が悪化するにつれて、こうした地域はさらに拡大すると考えられている。
こうした悪化傾向に歯止めをかけるため、同調査は、行政や法規制や経済といった側面から、この地域における地下水資源の管理を改善するように提案している。また、中国政府に対しては、需給の不均衡を是正するために、節水や、過剰に水を消費する時代遅れの設備の統合や閉鎖を促している。
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