中国の人々は、ここ数十年にわたり、食料の安全性や環境に関して、リスクにさらされてきた。それでも20年ほど前までは、こうしたことを声高に政府に訴える行為は、人々にとってはそれ自体が懲罰的な新たなリスクをもたらすことが分かっていた。しかしながら、今日に至り、食料や水や大気の汚染について、懸念を明確に表明することが許されるようになった。
「中国人の5人に4人は食品の安全性について不安を抱いていながらも、現実には5人に2人は安全とはいえない食品を摂取している」――最近のある調査でこのような実態が明らかにされた。食料の生産基盤である土壌や水が重度に汚染され、その生産物の安全性は当然に損われてきている。この場合の主な汚染源は化学肥料と農薬である。
「地方で売られているブタ肉が致死性の高病原性ウイルスに汚染されていた」――1月下旬、このような噂が北京市民の間で、電話によって広まった。危険な食品から身を守る自衛手段として、善意から友から友へと広まったのである。こうして市民が買い控えたので、ブタ肉業者の売り上げは3分の1に激減してしまった。市当局はこれを風評として鎮静化を図ったが、市民の懸念を拭い去ることはできなかった。
もっとも、北京にあって、こうしたことはこれが初めてではない。数か月前には「カビ米」騒動がもち上がっていた。「市のマーケットで売られていた米が、人体に有毒なレベルまで汚染されている」ということで、市民はパニック状態になった。
国家環境保護総局(SEPA)の副局長潘岳(パン・イエ)によれば、国土の約1000万ヘクタールが重金属をはじめとする有害物質で汚染されている。また地方には推定1億5000万トンの廃棄物が野積みされていて、住民や野生生物、そして環境にリスクを及ぼしている。
1月15日に発表された調査結果は食品の安全性と環境への、人々の懸念を反映するもので、回答者の86%は「環境汚染は、私たちの生活に大きな影響を及ぼしている」と認識しており、また39%は「ますます環境が悪化して、自分のみならず、家族にも大きな影響を及ぼしている」と認識している。中国環境文化交流協会が行った調査は先きの潘副局長が指導的役割を果たしたものだが、彼自身が「この調査は人々の環境意識をよく示している」と評価している。
さて、その調査結果は次のようなものである。80%の人々は「飲用水の水質が不安」であり、34%は「水の汚染問題に直面」し、40%は「大気汚染問題に直面」、70%は「近頃の空気は汚染が気になる」としている。また、多くの人々が大気汚染や騒音公害に日々さられされており、「健康が心配」としている。
また、潘副局長は次のようにコメントしている。「中国は環境劣化のさなかにある。4億の人々が深刻な大気汚染の下にあり、その結果として1500万の人々が呼吸器系疾患をもっている。ガンの専門家によれば、ガンによる年間の死亡200万のうち70%は環境汚染に関連している」
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