2006年、中国南西部の長江上流に位置する重慶市は、過去50年間で最悪の干ばつに見舞われた。今年の夏もこの干ばつが続く兆候が出ている。人口3100万人を超えるこの大都市は、新しい巨大な三峡ダムでせき止められた、長さ690キロメートルの屈曲した人工湖の上流端にある。
光明日報によると、2006年6月1日から8月14日までの75日間で、重慶と隣の四川省では、平均雨量が287.1ミリメートル未満と、例年平均より約103ミリメートル少ない雨量を記録した。また、7月10日から8月13日の35日間では、重慶の気温が40℃を超えた日が24.8日と、通常よりも約13日多く、現代史で新たな記録が誕生したことになる。
干ばつにより水位も記録的な低さになった。今年の2月26日に嘉陵江(長江の主な支流)の北碚区では、176.13メートルの水位を記録し、流量は66立方メートル/秒と、1939年に監視設備が設置されて以来の低さとなった。
地元紙の重慶タイムスによると、中国で最も人口が多い都市の重慶では、3月中旬までに、市内の40の地区及び郡のうち36が干ばつの影響を受けた。そのため、同市の人口の5.4%に相当する163万人近くが飲料水の不足に悩まされた。
重慶市は先月、バス運転手、交通担当警察、重工業の労働者など、気温が高い環境で働く住民の安全を確保するために、気温が35℃を超えた場合の労働時間の短縮と「猛暑休暇」を発令した。
重慶は2006年の干ばつにより、80億4000万元(10億4000万ドル)近くの経済的損失を被った。この損害額は、三峡ダムが昨年、予定よりも一年早くダムの貯水量で156メートルに達したことで、増加した発電量がもたらした追加的収益の4倍近くだった。800万人近くの地元住民は、飲料水の確保で悩まされ、約207万ヘクタールの農地が影響を受けた。
酷暑でよく知られる重慶は、中国中央部の湖北省武漢市と東部の江蘇省南京市と並び、長江の「三大かまど」と呼ばれているが、これほどの干ばつに見舞われたことはなかった。同市で長江に合流する嘉陵江と烏江は、この地域に豊かな水資源をもたらしてきた。だが、こうした豊富な水資源は重慶の猛暑の原因にもなり、同市の大気の湿度を上昇させ、この湿った空気が揚子江流域にある山々を潤すことになる。その重慶のいくつかの地区で、水田だった農地が水不足のためにひび割れしている様子を目にするが、これはかつてなかったことである。
【後編】中国の干ばつで高まる気候変動の懸念《2》へ
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