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1984年創刊、世界で読まれている地球環境問題のロングセラー本『地球白書』、最新版発売!

Eco-Economy-Update 2003-2

持続不可能な水使用で
食料バブルが世界で起こっている

レスター・R・ ブラウン

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 第3回世界水フォーラムが3月16日に日本で開幕する。約1万人の参加者が世界の水の展望について話し合う。公式な議論の的は水不足だが、間接的には食料不足に焦点が当てられるだろう。というのは、河川から引いた水や地下から汲み上げた水の70%は灌漑用水として使われているからだ。
 世界の水需要は過去半世紀で3倍に増えた。多くの国では需要量が帯水層の持続可能な涵養を上回り、その結果として地下水位が低下している。実際問題として、各国とも地下水を過剰に汲み上げることで増大する食料需要に対応しているが、この方法では帯水層が枯渇した時点で食料生産はほぼ確実に減少する。その自覚があろうとなかろうと無理に生産を増大させて、いわば「食料バブル」をつくり出しているのだ。
 水利用が増えるにつれて、世界では圧倒的な水不足が起こりつつある。この現象は歴史的には新しく、見た目にはほとんどわからないが急速に進んでいる。水危機はたいてい地下水位の低下というかたちでやってくるため、目には見えない。井戸が枯れてはじめて地下水位が下がったことに気づく場合が多い。
 増大する水需要が帯水層の持続可能な涵養をいったん上回ると、その差は毎年広がり続ける。その1年目には地下水位はあまり下がらず、見た目もほとんど変わらない場合が多いが、その後は年々大きく低下していく。
 過剰揚水をおこすディーゼルポンプや電動式ポンプは世界でほぼ一斉に普及した。帯水層がほぼ同時期に枯渇するということは、多くの国でおおむね同時に穀物生産が減少しはじめるということだ。そしてこのような事態が発生するころ、世界人口は毎年7000万人以上のペースで増えているだろう。
 帯水層は中国、インド、アメリカ(この3か国で世界の穀物の半分を生産している)を含む数多くの国で枯渇しつつある。中国の小麦の半分以上、トウモロコシの3分の1を生産する華北平原では、地下水位の低下速度が10年前の平均1.5m/年から現在3m/年にまで上がっている。浅い帯水層が過剰揚水でほぼ枯渇したので、汲み上げられる水は降水によって涵養された分だけとなった。このため深い帯水層まで井戸を掘り下げざるを得なくなるが、不幸なことに深い帯水層の水は涵養されない。
 北京地質環境監測研究所の責任者何卿誠(He Quincheng)氏は、華北平原の深い帯水層が枯渇することで「最後の水がめ」も失われると指摘する。氏の懸念は世界銀行の報告書に反映されている。報告書は「北京周辺で掘られた」深井戸から水を汲むには今や800m以上の深さが必要で、そのため供給コストが劇的に上昇していることが事例証拠によって示された」として、水の需給バランスが早急に是正されないかぎり「後世に破滅的な結果」をもたらすと、これまでになく強い調子で警告している。
 現在10億の人口を抱えるインドでは、穀倉地帯のパンジャブ州をはじめハリアナ州、グジャラート州、ラジャスタン州、アンドラプラデシュ州、タミルナドゥ州などで帯水層の過剰揚水がみられる。最新情報によると、パンジャブ、ハリアナ両州の地下水位は毎年1mずつ低下している。デヴィッド・ゼクラー元国際水管理研究所所長は、帯水層の枯渇によってインドの穀物生産が20%減少するおそれがあると予測している。
 アメリカは、主要な穀物生産地域であるテキサス州、オクラホマ州、カンザス州の一部で地下水位が30mあまり低下した。その結果、グレートプレーンズ南部の数千の農場で井戸が枯れた。
 パキスタンでも地下水が過剰に汲み上げられている。この国の1億4600万の人口は毎年400万人のペースで増加している。肥沃なパンジャブ平原の地下水位は、インド側と同様にパキスタン側でも低下しつつあるようだ。乾燥地帯のバルチスタン州では、州都クエッタ周辺の地下水位が毎年3.5m下がっている。世界自然保護基金(WWF)の水問題専門家リチャード・ガースタングは「現在のような水使用が続けばクエッタは15年以内に水が尽きる」と話す。
 イエメンでは毎年約2mずつ地下水位が低下している。イエメン政府は対策として首都のあるサヌア盆地に油田並みの深さ約2kmの試掘井戸を掘ったが、水は発見できなかった。イエメンの人口は1900万、年間増加率は世界最高水準の3.3%だ。人口増加と全国的な地下水位の低下で水環境は急速に破綻へ向かっている。世界銀行のクリストファー・ウォードは「農村経済の一部が一世代で消滅しかねないほどの勢いで地下水が汲み上げられている」とみる。
 メキシコは、1億の人口が2050年までに1億5000万人に達すると見込まれ、水の需要が供給を上回っている。農業地帯のグアナファト州などでは地下水位が毎年2m以上低下している。全国レベルでみると、地下から汲み上げられた水の52%は過剰揚水されている帯水層の水である。
 かつては地域的な問題だった水不足は、今や穀物の国際取引を通じて国境を越えている。1トンの穀物を生産するには1000トンの水が必要なため、穀物輸入はもっとも効率的な水の輸入手段となる。水の供給能力が限界に近づきつつある国は、都市部の生活用水と工業用水の需要増を農業部門の灌漑用水でまかなうのが一般的で、その結果生じた生産能力の損失分を穀物輸入で補っている。水不足が深刻化するにつれて、世界市場における穀物争奪戦はいっそう激しくなるだろう。穀物の先物取引はある意味で水の先物取引と同じである。
 中国では帯水層の枯渇に加え灌漑用水を転用して都市部の水需要を満たしている事情や、穀物支持価格の引き下げによって穀物生産が減少している。生産量のピークは1998年の3億9200万トンで、2002年は3億4600万トンまで落ち込んだ。中国が無理に増大させてきた、いわば「食料バブル」はいまにも弾けそうだ。3年間は備蓄を放出して不足分をカバーしてきたが、この不足を補うには遠からず世界の穀物市場に頼らざるをえないだろう。そうなった場合、世界市場が動揺するおそれがある。
 一部の国はすでに灌漑効率をめざましく向上させたり、都市排水を再利用したりしているが、多くの国はダムや井戸を増やすという方法で水不足に対応してきた。しかしながら、供給能力の拡大は次第に難しくなってきている。残された唯一の選択肢は人口を安定させ、水の生産性を高めて水需要を抑制することだ。2050年までに増加する見込みの30億人は、そのほぼ全員がすでに水不足の発展途上国におけるものと推測される。このような状況で水と人との許容できるバランスを達成できるかどうかは、他の何よりも人口の安定化にかかっているだろう。
 水環境を安定させる第2のステップは水の生産性を高めることである。これは私たちが土地の生産性を伸ばしてきた過程に似ていなくもない。第2次世界大戦後、2000年までに2倍になると予測された人口に対して耕地が拡大する見込みはほとんどなかったため、土地生産性の向上を目指して世界各国で大きな取り組みが始まった。その結果、土地生産性は1950〜2000年で約3倍になった。今こそ、このような行動を水についても起こすべき時だ。
 レスター・ブラウンはPlan B: Rescuing a Planet Under Stress and a Civilization in Trouble著者。今回のアップデートは本書をベースにした。

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