世界各地で水の価格が上昇または急騰している。過去5年での各自治体における、水道料金の値上げ率の平均を見ると、アメリカは27%、イギリスは32%、オーストラリアは45%、南アフリカ共和国は50%、カナダは58%だった。チュニジアでは過去10年間で灌漑用水の価格が4倍になった。
14か国に関する最近の調査によれば、各自治体の水道料金の平均は、1立方メートル当たり、アメリカの66セントから、デンマークとドイツの2ドル25セントという幅がある。それでもなお、消費者が水の本当のコストを負担することはほとんどない。それどころか、実質的に(ときには文字通りに)無料で水を供給している政府も多い。
平均的なアメリカの家庭での水の使用量は、年間約480立方メートルである。この使用量で、ワシントンの住宅所有者が支払う金額は約350ドル(1立方メートル当たり72セント)だが、グアテマラ・シティのスラムで同じ量の水を業者から購入すれば、1700ドル以上かかる。
人々が支払う水の価格は、主に3つの要因で決まる。供給源から消費者までの輸送コスト、水の総需要、補助金である。浄水・消毒費用もこのコストに加算されることがある。
水の輸送コストは、移動距離と運び上げる地点の標高の高さに大きく依存する。人口が増加している都市や町の場合、高まる需要を満たすために数百キロメートルも離れた場所から水を引かなくてはならないかもしれない。カリフォルニアの都市は、長い間、数百キロメートル離れた地点から水を運んできた。また、中国は、長江から、北京や北部の省で急速に人口が増加する地域へ水を輸送するために、3つの運河を建設している(全長はそれぞれ1156キロメートル、1267キロメートル、260キロメートル)。
地下水の汲み上げや、標高の高いところへ水を運ぶことは、エネルギー集約度が高い。480立方メートルの水を、標高が100メートル高いところまで汲み上げるためには、約200kWhの電力が必要である。1kWh当たり10セントでは、コストが約20ドルになるが、これには揚水機、井戸、配管の費用は含まれていない。100メートルの汲み上げは、地下水の供給量が減少している井戸では珍しくない。たとえば、北京などの華北地域では、1000メートル汲み上げなくてはならないこともある。
中編:【水資源】水の価格が世界各地で上昇《2》
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