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ビル・クリントン絶賛、レスター・ブラウン最新刊「PLAN B 3.0」人類文明を救うために発売開始
1984年創刊、世界で読まれている地球環境問題のロングセラー本『地球白書』、最新版発売!
Eco-Economy-Update 2008-3
プランB3.0−人類文明を救うために−
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「2007年の夏の終わりに、氷の融解が加速しているという報告が、次々と発表された。専門家たちは、イギリスのほぼ2倍の面積の北極の海氷が、わずか1週間で消滅したことに『唖然』とした」と、レスター・R・ブラウンは新著の『プランB3.0 人類文明を救うために』(日本語版:ワールドウォッチジャパン刊)でこう書いている。
ブラウンは、独立した環境研究組織であるアースポリシー研究所の創設者及び所長で、「近くのグリーンランドの氷床があまりの速さで溶けているために、数十億トンもある氷の塊が氷床から割れて、海へ滑り落ち、小さな地震を発生させている」と述べる。
これらの最近の出来事で、科学者たちは懸念を募らせている。もし、私たちがグリーンランドの氷床の融解を阻止できなければ、海面は最終的に7メートル上昇し、世界の多くの沿岸都市とアジアのコメを栽培する河川デルタが水に沈む。数億人が住む場所を失い、想像を絶する「海面上昇難民」が発生するだろう。
『プランB3.0』のなかで、ブラウンは、「氷の融解だけ見ても、人類文明が困難に直面していることがわかる。従来通りのやり方はもはや実行可能な選択肢ではない。プランBの出番である」と述べている。同書は主に、ファービュー、ラナン、サミット、ワラス・ジェネティックの各基金、国連人口基金、フレッド&アリス・スタンバックとアンドリュー・スティーブンソンの資金提供によって作成された[尚、三井物産環境基金の支援も受けている]。
ブラウンは、「『プランB3.0』は、私たちの未来を急速に蝕む傾向を逆転させるための総合計画である。最も重要な4つの目標は、気候の安定化、人口の安定化、貧困の撲滅、地球の破壊された生態系の修復である。これらの目標のうちの一つでも達成できなければ、他の目標も達成できなくなる可能性が高い」と述べる。
人口の急増が続いているために、多くの国々で政府が弱体化している。世界人口は毎年7000万人増えているが、この人口増加は、地下水位が低下し、井戸がかれ、森林が縮小し、土壌が浸食され、草地が砂漠化している国々に集中している。未解決の問題が蓄積されるにつれ、ストレスも増大し、弱い政府は崩壊し始めている。
破綻寸前の国家の決定的な特徴は、国民の安全を保障できないことである。ソマリア、スーダン、コンゴ民主共和国、ハイチ、パキスタンは、よく知られている例である。毎年、破綻寸前の国家の数は増えている。ブラウンは、「破綻しつつある国家は、破綻しつつある文明の初期の兆候である」と述べている。
「未解決の問題が蓄積されることにより、弱い国の政府が破綻するなか、新しいストレスも生まれている。たとえば、世界がピークオイルに近づくにつれて高騰する石油価格、ますます多くの米国の穀物収穫量が自動車燃料の生産にまわされることが原因の食料価格の上昇、気候変動がもたらす予期しない影響の拡大である。」
「先述の気候変動の安定化を目指すイニシアティヴの中心になるのは、今後の気温上昇を最小限に抑えるために、2020年までに炭素排出量を80%削減するという綿密な計画である。このイニシアティヴは、主に3つの要素で構成されている。エネルギー効率の改善、再生可能エネルギー源の開発、地球の森林面積の拡大である。これらの目標を達成すれば、世界のすべての石炭火力発電所の段階的廃止が可能になる」とブラウンは述べている。
プランBの炭素削減目標を設定する際、私たちは「政治家が実行可能だと思うもの」ではなく、「取り返しのつかない気候変動を防ぐために必要なもの」について考えた。これは従来通りのやり方のプランAではない。人類文明が直面している脅威の大きさに比例して、戦時下の素早さで、総動員で取り組むプランBである。
ブラウンは、「自然システムの『限界点』と政治のシステムの『転換点』とは、どちらが先に『現実』になるのだろうか?グリーンランドの氷床の融解が後戻りできない状態になる前に、石炭火力発電所の段階的廃止に踏み切るための政治的意思を結集できるだろうか?アマゾン流域の森林が弱体化し、火災が発生しやすくなり、破壊されてしまう前に、森林伐採を禁止できるだろうか?アジアの主要河川に水を注ぐヒマラヤの氷河が消滅してしまう前に、炭素排出量を素早く削減できるだろうか?」と述べる。
過去数十年で、エネルギーの使用効率を改善するための取組みはあったが、可能性の大部分はまだ未開拓である。たとえば、世界各地で炭素排出量を削減するための容易で利益の多い方法の一つは、白熱灯を電力消費量がわずか4分の1の電球型蛍光ランプに切り替えることである。より効率のよい照明にシフトすることで、世界の電力消費量は12%削減され、世界にある2370基の石炭火力発電所のうち705基を閉鎖することができる。
アメリカでは、ビルが炭素排出量全体の40%近くを占めている。既存のビルを改造することで、通常は20〜50%のエネルギー消費量が削減される。その次の段階として、ビルの冷暖房と照明で、カーボンニュートラルな電力にシフトすれば炭素排出量ゼロになる。
私たちは、食物連鎖の下方に位置する食物を食することでも炭素排出量を削減することができる。典型的なアメリカ人の食事を作るために要するエネルギーの量は、非公共交通による輸送に要するエネルギーとほぼ同じである。植物を中心とした食事は、赤身の肉を多く摂取する食事の約4分の1のエネルギーしか消費しない。赤身の肉を多く摂取する食事から、植物を中心とした食事へシフトすれば、シボレーのサバーバンSUV車からトヨタのハイブリッドカーのプリウスに買い換えることに匹敵するほどの炭素排出量が削減される。
プランBエネルギー経済では、風力がメインになる。豊富で、低コストで、広く分布している。規模の調整が容易で短期間に開発できる。2020年までに戦時下の素早さで、30億キロワットの風力発電容量を設置することが目標である。これだけあれば、世界の電力需要の40%を満たすことができる。そのためには、2000キロワットのタービンが150万基必要である。これらのタービンは、第二次世界大戦中に自動車工場で爆撃機が生産されたように、閉鎖されている自動車工場を再開させて大量生産することができる。
再生可能エネルギー源の開発について、ブラウンは、化石燃料離れが急務であるという認識が本格的に高まっていると述べている。これがどこよりも明らかに示されているのは、テキサス州である。同州では、州政府が2300万キロワットの風力発電容量を構築する取組みを統率している(石炭火力発電所23基に相当)。同設備は、テキサス州の人口の半分に相当する1100万人以上の家庭用電力需要を満たすことができる。油田は枯渇し、炭層はなくなるが、地球の風力資源が尽きることはない。
ソーラー技術も脱炭素の実現で胸が躍るような機会を提供している。ソーラーパネルの販売は2年毎に倍増している。屋上に設置する太陽熱温水器はヨーロッパと中国で急速に普及している。中国では、現在のところ、約4000万世帯が、屋上に設置された太陽熱温水器で温水をまかなっている。計画では、2020年までに現在のほぼ3倍に相当する1億1000万世帯に普及させることで、そうなれば3億8000万人の中国人が温水を利用できるようになる。
大規模な太陽熱発電所が、カリフォルニア州、フロリダ州、スペイン、アルジェリアで建設中または計画中である。世界の主な石油輸出国のアルジェリアは、600万キロワットの太陽熱発電設備の開発を計画しており、海底ケーブルでヨーロッパの送電網に電力を供給する予定である。この一つの計画による発電量で、スイスの大きさの国一つの家庭用電力需要をまかなうことができる。
ブラウンによると、暖房と発電に利用する地熱エネルギーへの投資も急増している。現在、アイスランドは、家庭用暖房の90%近くを地熱エネルギーでまかなっており、家庭用暖房では石炭がほとんど使用されていない。フィリピンは電力の25%を地熱発電でまかなっている。アメリカは地熱資源が豊富な西部各州において、61の地熱プロジェクトを進めている。
ガソリンと電気のハイブリッドカーと先端的な設計の風力タービンを合わせることで、まったく新しい自動車燃料経済が展開する土台が作られた。通常のハイブリッドカーの充電池の容量を2倍にして、プラグイン機能を加えると、夜間に充電することが可能になり、通勤や買い物などの短距離移動は、安価な風力発電による電力でほぼすべてまかなうことができる。
そうすれば、クルマをほとんど再生可能エネルギーだけで走らせることができ、コストはガソリン換算で、1ガロン当たり1ドル未満になる。いくつかの大手自動車会社がプラグイン・ハイブリッドカーの開発に取り組んでいる。
従来通りのやり方のプランAでは、私たちの未来を蝕む環境問題はこのまま続く。人類文明が崩壊し始めるまでに、多くの国家が破綻するだろう。「私たちの資源でもっとも限られているのは時間である。私たちは、自然の目に見えない『限界点』を超え、認識できていないデッドラインを過ぎようとしている。これらのデッドラインは、自然によって定められている。自然は正確に時を刻んでいるが、私たちにはその時計が見えない」とブラウンは語る。
世界のエネルギー経済を再構築するための鍵は、気候のかく乱や大気汚染など、化石燃料の燃焼に伴う間接的なコストを価格に含み、市場に環境の真実を語らせることである。そのためには、これらの間接的なコストを反映させた炭素税を導入し、所得税の引き下げで相殺することを私たちは提案している。2008年から2020年にかけて、世界共通の炭素税を段階的に毎年20ドル引き上げて、最終的には1トン当たり240ドルにする。このイニシアティヴは、所得税の段階的な引き下げで相殺され、同時に化石燃料の使用を抑制するだけでなく、再生可能エネルギー源への投資も促進するだろう。
ブラウンは、「人類文明を救うことはスポーツ観戦とは違う。私たちと地球の自然システムの関係は悪化していて、私たち全員が政治活動家にならなくていけない地点にまで到達している。一日一日が大切である。私たちはみな、人類文明の存続と関わりがあるのだ。」と述べる
「私たちは誰でもライフスタイルを変えることはできるだろう。だが、経済を再構築し、しかも、それを素早く行わない限り、失敗はほぼ避けられない。環境税による税制改革など、プランBで述べられたほかの変化を支持するように、選出された代表者と国の指導者たちを説得しなければならない。さらに、私たち一人一人が、石炭火力発電所の段階的廃止、より効率のよい電球へのシフト、地域の総括的なリサイクルプログラムの作成など、それぞれの地域レベルで重要な課題を一つ選び、取り組むことができる。」とブラウンは述べる。
私たちはみな環境問題について学ばなくてはならない。その点に関して、アースポリシー研究所は、『プランB 3.0』を同研究所のサイトで無料ダウンロード可能にしている。
「決断のときである」とブラウンは述べる。「環境問題に陥った古代文明のように、私たちは選択しなければならない。従来通りのやり方のままで変わらず、私たちの経済が衰退し、文明が崩壊するのを見ているか、プランBを導入して、人類文明を救うために結集する世代になるのか。選ぶのは、私たちの世代である。だが、その決定は、この地球に生きる、未来のすべての世代の命にかかわるだろう。」
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