アメリカ上院でのエネルギーに関する2回目の論争に注目が集まるなか、アースポリシー研究所は、石油掘削、ガソリン価格、そしてアメリカのエネルギーの未来について、事実を踏まえながら有益な概要を述べたい。
実際のところ、地質学的及び経済学的に見ると、石油を掘削してもアメリカはエネルギーを自給することはできないし、ガソリンの価格が下がるわけでもない。しかも、はるかによい選択肢があるのだから、掘削に気をとられることはコスト高で危険である。アースポリシー研究所の新しい分析によると、プラグイン・ハイブリッド車を風力や太陽光などのクリーンな再生可能エネルギーで動かすことで、価格を大きく揺るがすほどの影響が期待される。つまり、ガソリンスタンドで1ガロン当たり4ドルを払う代わりに、自宅で1ガロン当たり1ドル未満に相当する風力発電による電力で充電することができるのだ。アメリカのエネルギー省の報告では、ノース・ダコタ、カンザス、テキサスのわずか3州の風力資源で、国内の電力需要をすべてまかなうことができるという。
石油掘削が答えではない
ジョナサン・G・ドーン
背景
・アメリカの石油消費量は1日当たり2100万バレル近く(年間75億バレル)で、世界全体の4分の1を占める。
・アメリカで消費される原油の66%は輸入されている。
・2008年にアメリカが石油の輸入に支払う金額は5000億ドルを超える見込みである。
・アメリカの現在の石油生産は、アメリカ本土48州の陸地(日産290万バレル)、沖合い(主にメキシコ湾で日産140万バレル)、アラスカ(日産70万バレル)で行われている。
掘削量を増やしてもアメリカはエネルギーを自給できない
・アメリカの地質調査所の推定では、北極圏野生生物保護区(ANWR)では104億バレルの石油が技術的に回収可能だが、これは1年半分の消費量に満たない。
・アメリカのエネルギー省(DOE)の推定では、本土48州の連邦大陸棚(OCS)では590億バレルの石油が技術的に回収可能だが、連邦政府が掘削を禁止しているのはわずか180億バレルである。
・DOEの予測では、連邦大陸棚の掘削禁止を解除しても、2017年までに生産が増加することはなく、2030年の生産は現日産20万バレル程度(在の消費量の1%未満)になるという。
・アメリカで確認されている石油埋蔵量は、210億バレルと推定されており、現在の消費量では3年分に満たない。
・アメリカの原油生産は1970年にピークに達した後、47%減少している。世界の生産はいまちょうどピークを迎えているのかもしれない。
掘削量を増やしても石油やガソリンの価格は下がらない
・DOEの予測では、北極圏野生生物保護区で石油掘削を行っても、ガソリンスタンドで支払う料金は1ガロン当たりたった2セント下がるだけである。
・北極圏野生生物保護区と連邦大陸棚での掘削停止を解除しても、1ガロン当たりのガソリン価格はせいぜい6セント下がるだけで、しかもそうなるまでに10年以上かかる。
・石油は世界の消耗品の一つとして取引されていて、世界市場で価格が設定される。石油輸出国機構(OPEC)は、輸出量を減らすだけで、そうしたわずかな価格引下げでさえも打ち消しにできる。DOEもそれは認識している。
私たちは石油の先へ進むことができる
・2007年のエネルギー自給・安全保障法によって義務付けられた、1ガロン当たり35マイルという、アメリカの燃料経済の基準引き上げにより、2020年までに1日当たり110万バレル以上の石油が節約できると予測されている。この節約分は、現在、アメリカがペルシャ湾から輸入している石油量の約半分である。既存技術でこの基準を、早急にさらに高めることも可能である。
・アメリカの交通システムを電化し、都市交通を再構築することで、石油の消費量は50%以上削減することができる。これにより輸入の必要性はほぼなくなる。
・風力発電による電力で、GMの試作車「シボレー・ボルト」などのプラグイン・ハイブリッド車を充電すれば、燃料費はガソリン換算で1ガロン当たり1ドル未満になる。
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