世界で最も急速に成長している飲料であるミネラル・ウォーターは、業界にとっては「恵み」だが、地球環境にとって、また世界で10億人以上の、安全な飲み水が利用できない人々にとっては「恵み」でない。ワールドウォッチ研究所のレポート。
ミネラルウォーターのために、天然の鉱水・湧水が過剰に取水され、地域の河川や地下水が脅かされている。また、製品の生産と輸送に多大なエネルギーが消費されている。水の容器には、ポリエチレン・テレフタレート(PET)を中心とする何百万トンもの石油由来のプラスチックが使用されているが、そのほとんどはリサイクルされていない。アメリカでは、毎年約200万トンのペットボトルがゴミとして捨てられている。同国の2005年のPETリサイクル率はわずか23.1%と、10年前の39.7%から大きく低下した。
この記事を執筆したワールドウォッチ研究所中国プログラム特別研究員Ling Li は「ミネラルウォーターは業界のトップ商品かもしれないが、地球環境的には有害商品だ」と言う。「ミネラルウォーターに対する消費者の嗜好で飲料業界は得をしている。だが、世界の多くの貧しい人々にとっては、メリットはまったくない。彼らは安全な飲み水を、良くてもぜいたく品、最悪の場合は手の届かない品と見なしている」。
同研究所の「地球白書2007-08」によれば、アフリカおよびアジアの都市住民の35〜50%が安全な飲料水を十分に利用できていないと推測される。
先進国では、消費者が味と便利さからミネラルウォーターを選択する。一方、途上国では、供給不安定な安全でない公共の水に代わる選択肢として市販水の消費増加を牽引している。だが、多くの貧しい人々は、ミネラルウォーターが買えない。ミネラルウォーターの値段は水道水の240〜1万倍になる場合がある。ミネラルウォーターによって2005年はアメリカでの売上だけで100億ドルあまりの収益がもたらされた。
ミネラルウォーターの世界消費量は1997〜2005年で2倍以上に増え、最も急速に成長する飲料としての地位を確立した。アメリカは2000〜05年を通じてミネラルウォーターの最大消費国だ。しかし、上位10か国では、いわゆるBRICsのインドがほぼ3倍、中国が2倍超に消費を伸ばしている。
安全で安定的な水の供給がされている先進国では、水道水が市販の水と同じくらい安全かそれ以上であることが証明されている。
アメリカでは、ミネラルウォーターに関する規制は一般に水道水と同じだが、一部の微生物汚染物質については緩い。ミネラルウォーターを連邦レベルで規制するアメリカの食品医薬品局は、製品が一定水準の糞便を含むことを容認している。他方、環境保護局は市の水道水に少しでも人間の排泄物が含まれることを許可していない。ミネラルウォーターで違反があった場合、必ずしも一般に公表されるとは限らず、たいていは問題のある水が生産、流通、販売されてから最高15か月までの間に製品が回収される。
※容器入りの水(ボトルドウォーター)とミネラルウォーターは厳格には若干異なります。日本ではボトルドウォーターよりミネラルウォーターが一般的な呼称のため、改めました。
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