【前編】バイオ燃料の生産拡大が中国の生態系を脅かす《1》
中国が2003年に自家用車保有台数1000万台を達成するまでには、20年近くの歳月を必要としたが、さらなる1000万台には、わずか3年しかかからなかった。中国の現在の自動車保有状況は、60人に1台の割合だ。しかし、11.5人に1台という世界平均を考えると、中国市場が大躍進するのは間違いないだろう。
このバイオ燃料の新規開発は、ペトロチャイナが出資し、国や地方自治体などさまざまなレベルの森林当局によって実施される。いずれの当事者も、公式には、これらの取り組みは国家の持続可能性のために行われるとあるが、それらの「主役たち」がより重視しているのは、手っ取り早く儲けるという点ではないか、という懸念がある。
生態学的に複雑で繊細な中国西南部での総力をあげた開発事業は、ほぼ確実に環境破壊を引き起こすだろう。
この地域には、中国に残された最も大きな原生林が存在し、それらの森林は、周辺の局地気候と地域気候のバランス維持にきわめて重要な意味を持つ。
近年の乱伐採のため、これらの森林地帯はすでに急速に縮小し始めているが、新たなバイオ燃料ブームが、この地域の生態系破壊に最後の引き金を引きそうだ。
地元のある役人の話では、バイオ燃料プランテーションは、雲南省だけでも400万以上ある荒廃林地や荒廃農地などの限界耕作地に造成されるとのことだ。しかし、地方政府が、緑の生い茂る丘を「消耗林地」として伐採企業に売却することは、中国では稀な話ではない。バイオ燃料が生み出した新たな誘因により、このような「裏取引」は今後も続きそうだ。おそらくは悪化の一途をたどるだろう。
同様に厄介な問題は、バイオ燃料作物をプランテーションで単一栽培する大規模なモノカルチャーにより、この地域の生物多様性が損なわれる可能性が高まっていることである。地理的に有利な立地と独特な景観に恵まれた西南部の天然林には、6000種以上の植物と1000種以上の動物が生息している。ヤトロファやその他のバイオ燃料プランテーションにじわじわと侵食され、それらの種の未来は、とてつもなく荒涼としているように思われる。
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