中国環境行政の最高機関である国家環境保護総局(SEPA)は2007年7月初め、13都市の新規産業プロジェクトと、深刻な水質汚染が発生している4大河川――海河(ハイホォ)、淮河(ホワイホォ)、揚子江、黄河――沿岸の工業団地建設計画について、認可を全面的に保留するとの決定を発表した。同局の潘岳副局長は、権限の制約上、この措置が、一部の地域産業による環境法規違反の横行を阻止するための最終手段だと述べた。主要流域の環境汚染防止・抑制に向け、複数の分野および部門にまたがった体制づくりが急務とされる。
東部の太湖で藻が大量発生するなど、地域の飲み水の安全を脅かす重大な汚染事故が相次ぎ、SEPAは河川環境の回復・保護を図る総合的な対策に乗り出した。5月には、国内でもっとも汚れた川のひとつで、2005年11月に化学薬品の大量流出が起きた東北部の松花江流域の環境回復を目指す10年間の試験計画に乗り出した。新華社通信によると、具体的には、汚染物質の排出規制、高汚染産業に対する環境面のハードル引き上げ、高エネルギー消費・高汚染産業施設の閉鎖促進、飲料水源地の保全、下水処理場建設などの施策が含まれるという。
中国は、1950年代にはすでに主要7水系の水源管理機構を設立していたが、1つの流域における水および水関連資源の保護・管理・開発を複数の分野にまたがって統合する「統合的流域管理」を導入したのはつい最近のことだ。この手法を成功させるには、一般に、(1)全ての主要利害関係者による長期的合意と参加、(2)分野横断的な政策統合、(3)各レベルでの意思決定、(4)透明な計画枠組みが必要とされる。しかしながら、中国では「国民参加」「透明性」「関係各省庁の連携」の3つの欠如が大きな障害となっている。
2006年の中国環境報告書によれば、7大水系の河川水の26%までが灌漑にも適さない「X類」以下の水質と判定されている。中国の水危機は、社会全体にとってはもとより政府にとっても深刻な問題になったと話す潘副局長は、行政とマーケットと国民を連携させる統合的な流域管理体制の確立が目下の水質汚染問題に取り組むカギだと考えている。
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