中国では、地下水位の低下により、深刻な水不足が起こり、水不足が食糧不足を引き起こしつつあるという。レスター・ブラウンのレポート。(「プランB2.0」より一部抜粋)
2001年8月に北京で発表された地下水の調査結果によると、中国の小麦の半分以上、トウモロコシの三分の一を生産する華北平原では、報告されていたよりも速いペースで地下水位が低下している。過大な揚水で浅い地下水層がほぼ枯渇したため、深い地下水層まで井戸を掘り下げざるをえなくなるが、先に述べたようにこうした深い化石帯水層は一般的には地質構造からして降水などで補充されない。
中国では、地下水位の低下および耕地の非農業目的への転換と、工業化が急速に進む地域での農業労働者の減少によって、穀物生産が縮小している。小麦はおもに中国北部の乾燥地帯で栽培され、水不足にはとくに弱い。小麦の生産量は1997年の1億2300万トンをピークに、その後8年間のうちの5年が減産となっている。2005年は23%落ち込んで、9500万トンであった。
北京のアメリカ大使館はまた、水不足を一因とする近年のコメの減産を伝えている。コメの生産量は1997年の1億4000万トンをピークにその後8年間のうち4年で減少しており、2005年は1億2700万トンまで低下すると見込まれる。現時点まででは、中国第三の主要穀物であるトウモロコシだけが減産を免れている。これは価格の好調さに加え、トウモロコシが小麦やコメほど灌漑に依存していないためである。
中国の穀物生産は史上最高となった1998年の3億9200万トンから、2005年の推計3億5800万トンまで落ち込んでいる。減少分の3400万トンは、カナダの年間小麦生産量を上回る。政府は2004年まで、大量にあった在庫を放出して減産の大部分をカバーしていたが、その時点で、穀物を700万トン輸入した。
世界銀行の調査によると、中国では北部の三つの河川流域北京と天津を流れる海河、黄河、黄河の南を流れる淮河から過大に揚水されている。一般的には1000トンの水で1トンの穀物が生産できるから、地下水がかれて、海河流域で揚水されている年間400億トン近くの水が不足すると、穀物生産量も4000万トン減少することになる。これは1億2000万人を養える量である。
中国の黄河は全長約5500Kmで5つの省を流れて黄海に注いでいるが、この数十年来、問題が山積している。海まで届かぬうちに流れが消えてしまうという「断流」が1972年に初めて発生し、1985年以降は頻繁に見られる。
湖の消滅でも、もっとも顕著なのは中国だろう。黄河主流が流れる中国西部の青海省にはかつて4077の湖があったが、過去20年で2000以上が消滅した。北京を囲む河北省の状況はさらに悪く、全域にわたって地下水位が急速に低下しており、1052あった湖のうち969が消滅している。(レスター・ブラウン、『プランB2.0』より一部抜粋)
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前編了-
後編:【中国】中国、水不足で食料生産に打撃《2》
関連:【水資源】水の価格が世界各地で上昇《1》
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